2666 [著]ロベルト・ボラーニョ 〈寂寞(せきばく)〉ではなく、〈寂漠〉という文字が思い浮かんだ。寂しさの砂漠あるいは砂漠の孤独。チリに生まれ、青年期に母国の軍事クーデターに遭遇、メキシコ、フランス、スペインを渡り歩き、50歳で死んだボラーニョのこの遺作は、星の明滅のような含み笑いで我々をくすぐりつつも、最後には砂塵(さじん)と淡い悲しみでかすむ広大な暮景のなかに置き去りにする。 砂漠の中心には、アルチンボルディという長身のドイツ人作家がいる。よく似た名のイタリアの画家アルチンボルドが描いた、草花や果実からなるあの摩訶不思議(まかふしぎ)な人物画と同様、このドイツ人作家は、つまり5部構成のこの小説はまったく得体(えたい)が知れない。 第1部はこの作家に魅入られたヨーロッパ4カ国の批評家たちの物語である。国際会議で出会うなか、この4人(女1人男3人)は、三角関係プラス1と言うべき奇妙な恋

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