この本を読みました。 江戸の読書会 (平凡社ライブラリー0871) 作者:前田 勉 平凡社Amazon こんど新しく仲間を集めて読書会をすることになり、その課題本となったので読みました。忘れるといけないので、記録を残します。 江戸時代の学校や塾で、学問(中国の思想書を読むこと)が行われていたとき、「会読」という形式の学び方がポピュラーだったという事実があります。この事実を出発点に、会読とは実際どのようなことをしていたのか、どうしてポピュラーだったのか、どのくらいポピュラーだったのか、この学び方の社会的意味や影響はどんなものだったのか、といったことを検討する本です。 好きか嫌いかでいうと学問の話が好きな僕にとっては、本の中に描かれている江戸時代の会読の様子には胸を熱くさせられました。一冊の本を肴に、ああでもないこうでもないと言い合うのは楽しいものです。 現代の日本では、高学歴が将来の地位や

地政学、流行ってますよね。 書店にはだいたいどこでも地政学の本が置いてありますし、Youtubeでも解説動画がたくさんUPされています。 地政学とは、「国の政策を、主として風土・環境などの地理的角度から研究する学問」(日本国語大辞典)とされます。地理学と政治学を組み合わせたもの、という説明がされることもありますね。「地理が分かれば国際情勢が分かる!」という点が地政学の魅力としてよく語られます。 しかし一方で、地政学に対する批判も、(世間的な影響はともかく学術方面では)根強くあります。 「まあそうだよね」と思う人は、この記事は特に読まなくても大丈夫です。それほど目新しいことは書いていません。 この記事は、「あれ、地政学って面白そうなのになんで批判されてるの?」と思った人を想定読者としています。 いったい、地政学のどういうところが批判されてきたのでしょうか。今回はそれを解説していきます。 注意

「学問の自由」と「社会正義」の衝突2020年8月、筆者は、世界的に有名な言語学者・認知科学者であるスティーブン・ピンカーに対して、彼をアメリカ言語学会の要職の立場から除名することを請願する公開書簡が発表された事件について紹介する記事、およびその背景にある「キャンセル・カルチャー」について解説する記事を本サイトに寄稿した(〈「世界的知性」スティーブン・ピンカーが、米国「リベラル」から嫌われる理由〉、〈一つの「失言」で発言の場を奪われる…「キャンセルカルチャー」の危うい実態〉)。 「キャンセル・カルチャー」とはさまざまな意味合いを含む曖昧な言葉であるが、上述の記事では「著名人の過去の言動やSNSの投稿を掘りかえして批判を行い、本人に謝罪を求めたり地位や権威を剥奪するように本人の所属機関に要求したりするような振る舞い」と定義している。当時、「キャンセル・カルチャー」という言葉は本邦ではまだ一般的

イギリスの名門大学・マンチェスター大学の研究者が、少年のキャラクターを描いた日本の漫画で自慰行為をした際の体験についてまとめた論文を査読付き学術誌に掲載して物議を醸し、論文が削除されました。 Removal notice: I am not alone – we are all alone: Using masturbation as an ethnographic method in research on shota subculture in Japan - Karl Andersson,2022 https://doi.org/10.1177/14687941221096600 University investigates PhD student’s paper on masturbating to comics of ‘young boys’ | UK news | The

21世紀の道徳 作者:ベンジャミン・クリッツァー晶文社Amazon著者のベンジャミン・クリッツァー氏(id:DavitRice)の論考については以前もこのブログで何度か取り上げたことがあります。 amamako.hateblo.jp amamako.hateblo.jp amamako.hateblo.jp 上記の記事を読めば分かるとおり、僕はクリッツァー氏の豊富な知識量についてはすごいと思っているんですが、そこから示される、社会問題や学問観・人生論にはどうしても同意できないところがあります。ただ、なんでそこで同意できないかはいまいちよく分からなかったんですね。 それは、この本を読んでも正直あまり変わらなかったんですが、ただこうやってまとまった形で論考を読むことによって、そもそもクリッツァー氏と僕には、根本的な考え方の違いがあるんだなと思うようになりました。 学問は「唯一無二の正解」を示す

いまわたしたちが直面している社会的諸問題の裏には、「心理学や進化生物学から見た、動物としての人間」と「哲学や社会や経済の担い手としての人間」のあいだにある「乖離」の存在がある。そこに横たわるギャップを埋めるにはどうしたらよいのか? ポリティカル・コレクトネス、優生思想、道徳、人種、ジェンダーなどにかかわる様々な難問に対する回答を、アカデミアや論壇で埋もれがちで、ときに不愉快で不都合でもある書物を紹介しながら探る論考、そのシーズン2の開始です。 「上」からではなく「下」からの制限アメリカやヨーロッパでは、ポリティカル・コレクトネスやキャンセル・カルチャーの勢力が増していると同時に、その風潮に対する懸念や反対を表明する議論もなされている。そのなかでも特に目立つのが、ポリティカル・コレクトネスの風潮が学問の自由を侵害していることを批判する議論だ。 日本では、学問の自由に対する制限は「上」からや

新しい価値観が絶対的に正しいわけでもないのに「最近の風潮に付いていけてない」と言うだけで批判した気になってるブコメが多くて怖いよ〜 近大美女図鑑の話ね。俺もアレは悪趣味だと思うけどさ、「最近の風潮ではそう言うのはダメになってきてるから」では何の理由にもなってないのよ。 「ルッキズムだからダメ」も一緒な。身体能力や知的能力は良くて、どうして外見的魅力だけ取り上げることは許されないのか合理的に説明できるならいいけど、単にそれっぽい言葉出してるだけじゃん。 学問に関係ないからダメ?じゃあサークル活動の紹介も何もダメになるだろ。パンフは紀要じゃねえんだぞ。 批判したいなら、世間の風潮を持ち出さずに自分の頭できちんと考えてせえよ。 (世間じゃなくて、貴方が許さないのでしょう?) 「社会の風潮が絶対正しいマン」が戦時中には非国民探しをしてたし、戦後は旧日本軍を批判してたし、最近では脳死ポリコレマシーン

――本書では哲学や倫理学の見地から、学問のあり方や功利主義、ジェンダー、幸福について検討されています。「21世紀の道徳」という大きなテーマに取り組んだ動機はなんでしょうか。 書籍にできたのは、端的に言えば、私のブログを読んでくれていた編集者が声をかけてくれたからです。この本は、私が大学院を修了後、フリーターをしていた約3年間に集中的に書いてきたブログ「道徳的動物日記」がベースになっています。当初は、修士時代に研究していた動物倫理学やジェンダー論について紹介し、考察するものでした。どちらも日本での研究は日が浅く、誤解されがちな学問でもあったので、正しく理解してもらうことを当初の目的にしていたと思います。 けれど、ブログを書いているうちに、功利主義について書こう、その前提となる学問のあり方についても検討しようと、領域が広がっていったのです。 書籍化にあたっては、これ一冊を読めば大まかに倫理学が
今日は8時に目が覚めました!いつもよりやや遅めの目覚めですが世の中との歩調が合っている気がして安心しますね。 お昼くらいから頑張ってメリトクラシーの記事を読みました。 メリトクラシーは現代社会の構造の最も強固な基盤で、資本主義よりもはるかに支配的なようです。とはいえやはり問題は山積みで、「行き過ぎたIQ至上主義」や「格差すら許容する冷淡さ」についてはため息が出ます。 同時に、イデオロギー論争にありがちな「インテリの世界観からの提言」がことメリトクラシー論においては少し厄介に感じます。 メリトクラシー修正論の具体的な政策は、奨学金制度を筆頭に「貧困層の隠れたアインシュタイン」しか相手にしていないものが多いように思います。 私の所属していたインターナショナルの高校はまさしくこうしたメリトクラシー修正論をベースに奨学金制度を充実させていたのですが、それに伴って今度は「隠れたアインシュタイン」にの

紹介(評者・田楽心 Den Gakushin) 原題 著者について はじめに 革命的なアイデア 第一部 優先順位、序列、地位 第二部 近代以前のメリトクラシー 第三部 メリトクラシーの勃興 第四部 メリトクラッツの行進 第五部 メリトクラシーの危機 おわりに メリトクラシーの再生 評価(評者・田楽心) 紹介(評者・田楽心 Den Gakushin) 近年、「メリトクラシー(能力主義)」への新たな批判が提起されている*1。メリトクラシー meritocracyとは、「教育制度として『英才教育制度、成績第一主義教育』、社会形態として『能力(実力)主義社会、効率主義社会、エリート社会』、政治形態として『エリート階級による支配、エリート政治』、主義・原理として『効率主義、能力主義、エリート支配原理』」*2などを意味する言葉だ。 昨年ヒットしたマイケル・サンデル著『実力も運のうち 能力主義は正義か』

北村紗衣『批評の教室』は、批評という営みの敷居を下げる本だ。「チョウのように読み、ハチのように書く」という副題の通り、本書は芸術作品(主には文学、映画、劇作品が参照される)について軽やかに読解し、クリティカルに論じる手引きとなっている。 実践編の第四章を除けば、本書は「精読する」「分析する」「書く」という三章立てになっており、それぞれにおいてさまざまなノウハウが紹介される。特に、第二章「分析する」では、物語のタイムラインや関連作品のチャートを作るといった具体的な作業が実例とともに紹介されるため、読者は実際の手の動かし方から作品分析を学べる。単純化を恐れることなく言ってしまえば、それらノウハウは〈じっくり鑑賞し、根気強く情報を集め、シャキッと書け〉とでもいうべき方針で一貫しており、読者はそこで規範とされる「じっくり」「根気強く」「シャキッと」とはどういうことなのかを教えられることとなる。 こ

批評家ベンジャミン・クリッツァーさんの初の著書『21世紀の道徳』の「まえがき」を、読者のみなさまに向けて公開いたします。この「まえがき」に興味を持っていただけるようでしたら、ぜひとも書店でお手にとってみていただけるとさいわいです。まえがき 『21世紀の道徳』という書名の通り、この本は道徳についての本であるし、倫理学や哲学に関する本でもある。 哲学というと、世間の常識や一般的な考え方とはかけ離れた、画期的な議論や突拍子のない主張をするものだと思っている人が多いだろう。 この本のなかでも、様々なかたちで「常識はずれ」な主張が展開されている。具体例を挙げてみよう。 ・わたしたちは、牛や鶏などの家畜に対して、人間に対するのと同じくらいの配慮をするべきである。 ・道徳や社会問題について深く考察するときには、「人権」という発想は障害になるから用いないほうがいい。 ・寄付をしたり援助をしたりするなら、自

人間は「進化の奴隷」ではない このたび、拙著『21世紀の道徳』を上梓した。本書では、倫理や幸福という問題について、哲学と心理学という2つの学問を両輪としながら考察している。この本には、古代ギリシアのプラトンから「最も影響力のある現代の哲学者」とも呼ばれるピーター・シンガーまで、さまざまな時代の哲学者たちが登場する。そして、科学的な心理学の知見によって、哲学者たちの主張が補完されているのだ。 とくに参考にしているのが、人間の心理メカニズムは先史時代の狩猟採集民たちが生きてきた環境に適応するために進化してきたものであると仮定する、「進化心理学」だ。本書では、「わたしたちにはなぜ道徳に関する感情や利他心が備わっているのか」「わたしたちはどのように生きれば幸福を得られるか」という問題について、進化の観点から検討している。 学問としての進化心理学は20世紀の後半に発展した。それから多くの学者や著作家

多数の個人が複雑な関係で結びつく現代社会において、公正に社会を運営するためにはどのような規範に従えばいいのか。そして、個々人はどうすれば幸福への道を歩めるのか。『21世紀の道徳──学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える』(晶文社)を発表した批評家のベンジャミン・クリッツァー氏が、様々な学問的知見をもとに考える。 「倫理学」を「心理学から考える」このたび発売されるわたしの著書『21世紀の道徳──学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える』では、道徳について扱う哲学である「倫理学」の考え方について、いくつもの切り口から紹介している。そこに、進化心理学をはじめとするさまざまな心理学の知見を取り入れていることが本書の特徴だ。 ひとくちに倫理学といっても、「このような問題についてはこのような方法で判断するべきだ」「このような事態ではこのように行動するべきだ」といった「規範」に関する議論もあれば、「幸

紹介 現代哲学を「政治的正しさ」の呪縛から解放する快著 ──帯文・東浩紀 ポリティカル・コレクトネス、差別、格差、ジェンダー、動物の権利……いま私たちが直面している様々な問題について考えるとき、カギを握るのは「道徳」。進化心理学をはじめとする最新の学問の知見と、古典的な思想家たちの議論をミックスした、未来志向とアナクロニズムが併存したあたらしい道徳論。「学問の意義」「功利主義」「ジェンダー論」「幸福論」の4つのカテゴリーで構成する、進化論を軸にしたこれからの倫理学。 哲学といえば、「答えの出ない問いに悩み続けることだ」と言われることもある。だが、わたしはそうは思わない。悩み続けることなんて学問ではないし、答えを出せない思考なんて意味がない。哲学的思考とは、わたしたちを悩ませる物事についてなんらかのかたちで正解を出すことのできる考え方なのだ。(…) この本のなかでは、常識はずれな主張も、常識

山田進太郎は、ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)を推進していくため2021年7月1日(木)に、山田進太郎D&I財団を設立しました。第一弾として、理系女性向けの奨学金プログラムを実施します。今後、総額30億円を財団に寄贈し、D&I推進のための取り組みを行っていきます。 株式会社メルカリ代表取締役CEOである山田進太郎は、これまで企業活動を通じてD&Iの推進に取り組んできました。一方で、中長期な取り組みで営利企業では難しいことも多くあると感じ、このたび一般財団法人を設立し、ジェンダー・人種・年齢・宗教などに関わらず誰もが自身の能力を最大限に発揮できる社会の実現を目指していきます。 ■背景と課題 最初の取り組みとして、理系職種が男性に偏り、国内の女性エンジニア比率は20%※1に留まるなどジェンダーバランスが崩れているという課題に注目しました。この背景には、日本の大学における理工学系

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