これは私小説である。《第11話》 ひと昔前、私は怠惰な大学生だった。それなりに仲のいい友だちもいたし授業は概ねまじめに受講したが、それ以外の時間、恐ろしく無気力だった。長期休みのたびに自室にこもって寝てばかりいた。そういうときは風呂に入るのも面倒で2日にいっぺんだった。今から考えると、ほとんどうつ状態だったと言える。 4年生になり、仕方なしに就職活動を始めた。50〜60社の説明会に足を運んだが、どうしてもここで働きたいとか、特定の企業に貢献したいという動機が私には湧いてこなかった。2か月ほど活動して、箸にも棒にも引っかからないので少し休むことにした。 そもそもアルバイトをした経験が3年間家庭教師だけ。狭い世界だけに閉じこもって社会を知らないのだ。 気分転換に何か別の仕事をしようと思い立ち、駅で配っている無料の情報誌を見て、デパートの中にあるティーサロンのアルバイトに申し込んだ。 時給900
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