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ひとりの小学５年生の女の子が、悲しい思いをした。いまから半世紀前、１９７８年のことだ。子ども相撲大会の予選を勝ち抜き、次は国技館での決勝だと喜んだのに、出場できないと言われたからだ。土俵は「女人禁制…
黒澤明監督「椿三十郎」のラストの対決シーンのために、仲代達矢さんは居合の稽古を重ねた。狭い空間をつくり、壁に当てずに素早く刀を抜いて、振り下ろす。相手の三船敏郎さんがどう出るか、何も知らされていなか…
暗号に挑んだ二人組でワトソンの相棒と言えば――。ここでホームズでなく「クリック」と答えるのは、生物学の好きな人だろう。ワトソンとクリック。遺伝暗号の記されたＤＮＡが二重らせん構造になっている、と発見…
英国のサッチャー首相が絶頂期にあった１９８０年代半ば、英議会へ傍聴に通ったことがある。当時大学生で、首相討論がテーマの小論文を書くためだった。最初はヤジに驚いたが、慣れると楽しみになった。「その通り…
母に連れられて商店街へ行くと、魚屋さんが威勢のいい声で「今日は何にする？」と聞いてきたものだ。店先にぶらさげた古新聞紙をぴっと取って、注文した魚を包んでくれた▼昭和では当たり前の光景だったが、いまも…
欧州演劇の原点とされるコメディア・デラルテは、１６世紀にイタリアで生まれた即興喜劇の様式だ。シェークスピアら各地の劇作家に影響を与えた。代表的な作品の「２人の主人を一度に持つと」をミラノの劇場で見た…
〈たったの二文からなる、しゃれた短い怪談を紹介しよう。こんな話だ〉。知る人ぞ知る、ＳＦ短編の名手フレドリック・ブラウンの代表作「ノックの音が」の書き出しである。〈地球最後の男が、ひとり部屋に座ってい…
読者の方から、お手紙をもらった。仙台市に住む竹石祥子さん（７５）。七夕のときの当欄を読み、ご自身の体験が重なったと書かれていた。ささくれだった言葉が闊歩（かっぽ）する時世に、何とも言えぬ温かな文章だ…
食糧難だった終戦直後の逸話だ。数百万の餓死者が出るという推計をもとに、吉田茂外相はＧＨＱに救援を求めた。後に、あの数字はでたらめだったとマッカーサー総司令官に叱られると、吉田氏は答えた。「当たり前だ…
私は、私である。唯一無二の私である。でも、それを証明するのは何だろう。小さい頃、犬に咬（か）まれた腕の傷か。父親譲りの首の曲がり具合か。少なくとも警察にとっては、正確さからも信頼性からも、それはＤＮ…
朝日新聞のひとりの記者として、きょうという日を考える。歴史を振り返れば、９月１８日は二重の意味で、私たちの新聞に多くを教え続ける節目である。これまでも何度か紙面で伝えてきたことだが、いま一度、記して…
孤独を感じるとき、夜の空を見上げ、思うことがある。いまごろ、あの旅人はどうしているだろう。１９７７年というから４８年前、旅立ちは９月だった。それからずっと独りぼっちで、長く、遠い旅は続いている▼ＮＡ…
春先ならばタラの芽。盛夏ならば生ビール。苦さをうまいと思えるのは、大人の幸せだ。ではいまごろは。そう、サンマの季節がやってきた。切り身でなく、あくまでも尾頭付きでいただきたい▼熱々に焼けた身をほぐし…
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