「飢えて倒れるほどではないけれど、貧困状態」という子どもの暮らしって、想像できますか? 子どもの貧困問題は、極端に貧困な子どもに注目が集まりがちですが、生活保護を受けてはいないけれど、生活が苦しいという家庭も少なくありません。そういう家庭の家計簿をつけてみることで、どんな暮らしなのかを理解するワークショップを考えた人がいます。聞いてみました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美) 【画像】「スマホも持っている」「見た目はむしろ気をつかう」これがリアル貧困家庭で育った若者たち こどもソーシャルワークセンター(大津市)の代表で社会福祉士の幸重忠孝さんです。 家計簿体験は、37歳の両親、中学1年の子どもの3人家族、収入は月17万円という設定で行います。もちろん家庭によっていろんな違いがありますが、「極端ではない貧困」のひとつの事例です。 参加者は、17万円から住居費や食費、教育費などを割り振ってい

厚生労働省は7日、平成27年度の生活保護受給調査を公表した。受給世帯数(1カ月平均)は、前年度から1万7403世帯増(1・1%増)の162万9743世帯で過去最多だった一方、受給者数は2210人減(0・1%減)の216万3685人だった。減少は平成7年度以来、20年ぶり。厚労省保護課は「65歳以上の高齢者世帯の受給が増加しているが、それ以外の世帯は、雇用環境の改善などで回復している」と分析している。 世帯別(一時的な保護停止を除く)では、高齢者世帯が4万1632世帯増(5・5%増)の80万2811世帯。全体の51%を占め、初めて半数を超えた。母子世帯や傷病者・障害者世帯はそれぞれ3990世帯(3・7%減)、1万1590世帯(2・6%減)減少した。 受給開始の主な理由では、「貯金等の減少・喪失」が34・1%と最も多く、「傷病」(25・2%)「働きによる収入の減少・喪失」(21・5%)が続

女性コミック誌『フォアミセス』2017年2月号に掲載された、さいきまこ『家族の約束~あなたを支えたい』連載第1回。老夫妻と巣立った子どもたちの愛情溢れる姿が、扉に描かれている (c)さいきまこ 女性コミック誌『フォアミセス』を中心に活動する漫画家・さいきまこ氏は、2013年に『陽のあたる家~生活保護に支えられて~』、2015年に『神様の背中~貧困の中の子どもたち~』を、同誌連載から単行本化した(以上、すべて秋田書店刊)。いずれの作品にも、20~40代の親たちの生活が至極ありふれたトラブルや問題から破綻していく様子と、親の貧困に翻弄される小学生から高校生までの子どもたちの姿が、背景とともに描き出されている。 さいき氏は、最新連載『家族の約束~あなたを支えたい~』を、『フォアミセス』(2017年2月号)で連載開始したばかり。主人公は70代の女性・漆原春だ。 郊外の分譲団地で、春と同年代の夫が2

年収80万円・36歳男性の極貧生活に未来はあるのか? 食費は一食120円、家賃2万8000円の事故物件… 空前の株高に見舞われた’16年末の日本経済。しかし、最新データによれば所得格差は過去最高水準に達し、子供の貧困率は16.3%と高い数値を示す。安倍首相は「相対的貧困率は大きく改善した」と語ってはいるが、確実に増え続ける生活困窮者。彼らが跋扈する日本の未来にはいったい何が待っているのか? ここでは、等身大の貧困ケースを紹介しよう。 ⇒【写真】在宅ワークをこなす一室 ◆食費は1食120円。40歳を目前に極貧ライフに不安が募る貧困に苦しむ人たちはどのような未来を描いているのか――。話を聞いたのは、神奈川県在住の古川政嗣さん(仮名・36歳)。在宅ワーカーとして働く彼の年収は80万円しかない。 「他人と働く職場では、仕事が長続きしないんですよ。コンビニ、工場のライン工、警備員といろいろやり

学校卒業時にバブル崩壊後の就職氷河期に直面し、非正規雇用で働き続けたり、転職を繰り返したりした人たちがそろそろ40代になります。結婚せず、実家で暮らしている人も多いでしょう。元気な親はいずれ老い、自分も年を取ります。10年後、彼らが50代になった時にいったい何が起きるのか。そのことを想像させるケースを紹介します。【NPO法人ほっとプラス代表理事・藤田孝典】 ◇母親の年金なしでは暮らせない50代男性から電話 ある日の午後、1本の電話がかかってきました。「今朝がた、母が亡くなったんですが、どうすればいいか分からなくて……」という内容でした。 電話してきたのは埼玉県内の53歳の男性。朝起きたら、同居の母親(87)が亡くなっていたというのです。 「今ご遺体はどこにあるんですか?」「隣に……」「お金あります?」「はい、母の貯金が少しぐらいは……」「じゃあ、まずは警察を呼んで、そのあと葬祭業者

生活保護受給者とギャンブル3月18日の読売新聞によれば、大分県は別府市・中津市がパチンコなどのギャンブル行為をおこなう生活保護受給世帯への生活保護の停止・減額措置に対して、是正要請をおこなった。生活保護受給世帯がギャンブルをおこなうことを理由に、生活保護の停止・減額をしてはならないと要請したのである。 これらの是正要請を受けて、両市は新年度から処分を行わない方針を決めた。 両市の福祉事務所のケースワーカーが管内のパチンコ店などを見回り、生活保護受給者が店内にいた場合は、指導や生活保護上の処分をおこなってきたが、これらは今後おこなわれなくなる。 一連のギャンブル行為をおこなう生活保護受給世帯への福祉事務所の関わりが物議を呼んでいる。 今回の騒動を整理したい。 まず生活保護受給者はギャンブル行為をおこなってはいけないのか。生活保護法には第60条に「被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、

実は生活保護を受けながら大学や専門学校には通えない。そんな時代遅れの原則を政府が持っていることが、今秋の参院内閣委員会で明らかになった。 親の貧しさが子の貧しさを招いてしまう「貧困の世代間連鎖」を断ち切るどころの話ではない。貧困から脱出する道に政府が立ちはだかってどうするのか。 政府は速やかに運用を改善すべきだ。進学容認にとどまらず、奨学金を全面支給するなど、むしろ進学を奨励する方向へ抜本的に改めるべきだ。 かつては大学どころか高校への進学すら認めない時期もあったが、1970年度からは認めるようになった。背景には進学率の変化がある。53年度まで5割を割り込んでいた高校進学率は高度成長期に急上昇し、70年度には8割、74年度には9割を超えた。運用改善はその傾向を反映した。 今、大学・短大の進学率は54・6%、専門学校は16・6%(15年度学校基本調査速報値)、計71%余に達する。「高卒で就職

2015年12月24日、クリスマスイブの日、ひとり親世帯にとっての「命綱」、児童扶養手当の増額が決定された。2人目以後の子に対しては、実に36年ぶりだ。しかし同時に「不正受給対策」も盛り込まれている。生活保護では、不正受給対策を理由とした利用抑制が1954年から開始されて現在に至っている。 政府から子どもたちへの「クリスマスプレゼント」を、我々はどう受け止めればよいのだろうか? 増額しても生活保護以下の児童扶養手当 この政府予算案には、2016年度からの児童扶養手当増額も盛り込まれた。ひとり親家庭(父子家庭は2010年より)を対象とした児童扶養手当の給付額改定、それも2人目以後の子に対するものは、実に36年ぶりである。 今回の増額では、2人目の子に対して現在の5000円から同1万円に、3人目以後の子に対して現在の3000円から満額6000円への増額が行われる。1人目に対しては満額4万200

年の瀬、生活苦にあえぐ人たちもまた越年に向けて動き始めている。そんな生活苦に悩む人たちの最後のセーフティーネットが生活保護だ。厚生労働省の調べによると、生活保護受給者は1995年には88万2229人・58万5972世帯だった。そして約20年を経た2014年には216万6381万人・159万8818世帯とおよそ3倍弱に増加している。大阪市のケースワーカー(35歳・男性)は、生活保護受給者が増え続ける背景を次のように語った。 「かつては生活保護を受給することは社会的にマイナスなイメージで捉えられていたものだ。つまり“スティグマ(否定的な表象、烙印)”だ。しかし、近年ではそうした意識が希薄。生活保護受給は失業保険を受け取るのと同じ感覚で捉えている人が少なくない」 今、生活保護受給への心理的ハードルはかつてほど高くはないという。前出のケースワーカーが続ける。 「日本国憲法25条の条文。こ

Aさん(58)は、東京都内B市の福祉事務所で働くベテランケースワーカーだ。福祉職として就職したわけではないAさんは、福祉畑以外の職場も経験しているが、福祉事務所の勤務経験は通算20年以上になる。 B市は2014年4月から、生活困窮者向け就労支援事業をC社に委託し、モデル事業を開始した。2015年4月からはモデル事業ではなく、B市の正式な生活困窮者自立支援事業となっている。C社の業務内容は、人材派遣・業務委託・人材教育・再就職支援など、企業の人事に関するありとあらゆる場面にわたる。反貧困運動界隈からは、「生活困窮者支援の名のもと、悪評もある人材派遣企業を儲けさせるとは」という批判も多いが、B市では生活保護利用者の就労支援もC社に委託している。現場のAさんから見て、C社はどのような存在だろうか? 「良い面も悪い面もあります。良い面は、職業開拓がやりやすくなったことです。つい先日も、軽い知的障害

フリーライター近江直樹公式ブログ (行政書士・社労士・宅建・FPなど多くの資格・検定に合格した資格取得の達人のブログ)フリーライターの近江直樹のブログです。 資格試験の取得法・学習法や、法律、ライター、時事、社会問題、近況報告まで、幅広い分野の記事を書いています。 昨日の、{「国民年未納で、老後は生活保護でいい」は大間違い その1}の 続きです。 今回は、【国全体の視点】です。 未納者は年金がもらえないから、国も問題ないとの単純には考えられません。 年金未納者による生活保護が増えれば、生活保護費に負担が増えます。 その結果、他の事業が削られたり、税金が増えます。 国も地方も財政はきびしく、今後、少子高齢社会で、もっと厳しくなることが予想されていますから。 税金が増えれば、生活保護受給者に対する風当たりが強くなり、結果、年金未納者以外の生活保護者に関する風当たりも強くなります。 ただでさえ、

フリーライター近江直樹公式ブログ (行政書士・社労士・宅建・FPなど多くの資格・検定に合格した資格取得の達人のブログ)フリーライターの近江直樹のブログです。 資格試験の取得法・学習法や、法律、ライター、時事、社会問題、近況報告まで、幅広い分野の記事を書いています。 若い人の間では、国民年金なんか払っても、どうせ払った分ももらえないんじゃないかとか、老後は生活保護でいいと思っている方もいるようです。 最近、 {非正規雇用の若者はもう国民年金保険料(15,590円)を支払うな!ー老後は生活保護を受けよう!ー} という記事もありました。 しかし、中身はともかく、このタイトルは、大きな間違いです! そもそも、減免を受けることを勧めずに支払うな!とは、乱暴すぎます! この国民年金と生活保護の関係についての間違えを、そもそも論、国全体としての視点&個人の損得のレベルの2回に分けて説明しようと思います。

首都圏でホームレスなど生活困窮者の相談を受け付けているNPO法人『ほっとプラス』代表の藤田孝典氏による、ある記事が注目されています。 『非正規雇用の若者はもう国民年金保険料は支払うな!ー老後は生活保護を受けよう!ー』 と、いかにも「さあ、食いつけ!お前ら!」なタイトルが付けられたこの記事。 要は、非正規雇用の若者は国民年金なんか真面目に払っていたら生活できないので、保険料なんか支払わず、生活保護を受けた方がよっぽどマシだよ!ということが書かれています。 しかし、衝撃的なタイトルとはうらはらに、記事自体は理路整然としており、制度をよく理解していない若者たちであれば、 「へー。そうなんだ、じゃ国民年金なんて払わない方が良いじゃん!」 と、すんなり信じてしまうかもしれません。 そこに、この藤田さんの巧さを感じます。 おそらく、藤田さんは、社会保障制度について十分な知識がありながらも、若者を自分の

非正規雇用に従事する若者が増え続けている。 もう全労働者の約4割は非正規雇用という時代を迎えている。 いわゆるパートやアルバイト、派遣社員などの働き方である。 このなかには家計を補う兼業主婦も大勢いるが、問題は家計の中心である人々にも、この非正規雇用が広がっているということ。 非正規雇用は、正社員と比較し、賃金が低く、賞与(ボーナス)が出ないことも珍しくない。 福利厚生や各種手当も支給されない場合がある。 だから、それらの労働者にとって、毎月の国民年金保険料は大きな負担としてのしかかる。 平成27年度の月額の国民年金保険料は、15,590円である。 厚生年金に加入していない労働者は、月額これだけの保険料を毎年40年間支払い続けなければならない。 わたしが所属するNPO法人ほっとプラスには、非正規雇用の若者から「年金はやはり支払わなければダメでしょうか。」、「年金の負担が重く、支払うと生活費

2014年9月、千葉県銚子市で県営住宅に住んでいた43歳(当時)のシングルマザーが、家賃未払いによって強制退去となる当日、中学2年生(当時)の娘を殺害した。この事件は、2015年6月12日の判決(母親に対して懲役7年)ともども、大きな反響を呼んでいる。漫画家・さいきまこ氏の思いを紹介した前回に引き続く今回は、法律家から見た問題点を、事件の詳細とともに紹介する。 【詳細画像または表】 ● 「粛々と」実行されるしかない 強制退去の手続き 2014年9月24日、千葉県銚子市で県営住宅に住んでいた43歳(当時)のシングルマザーが、中学2年生(当時)の娘を殺害した。母親は、2年にわたって家賃を滞納していたため、その日、強制退去となる予定であった。母親自身も自殺する心づもりであったが、自殺を決行する前に強制退去の執行官らが来訪し、呆然としている母親と息絶えた娘を発見した。逮捕された母親は殺人罪等で起

仁藤:困窮状態にある10代の女の子を中心に支援活動をしています。中身としては大きく分けて4つあって、1つ目が夜間巡回と相談事業。夜の街を歩いて、ひとりでいる女の子とか、帰れずにいる少女たちと出会うような活動と、全国から寄せられる相談に対応します。 手法は様々で、直接会うこともあれば、LINEや電話を通してということもあります。やっぱり本人たちになじみのあるツールからの連絡は多いですね。去年1年間で90数人から相談があって、そのうちの3割ぐらいが地方の子でした。北は北海道から南は九州まで。週末に講演で全国を回っていますが、その機会を使ってその土地で相談者に会うようにしています。 一緒に食事することが支援に 仁藤:活動の2つ目が、食料面での支援です。これにはとても力を入れていて、一緒にご飯を作って食べたりするような場所や時間を持つんです。本当に貧困状態の子は、今日食べる物がないとか、誰かと食卓

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