昨今の電力需給ひっ迫について、記者はこのコラムで2度ほど取り上げている。そこでお伝えしてきたのは、電力需給ひっ迫は「電力量(kWh)」の追加では解決せず、機動的な電力(kWもしくはGW)の増加が必要だという点である。 ところが、一般の報道や自治体の広報資料をみると、昨今の電力需給ひっ迫は、「電力不足」と翻訳されてしまっている。これはさらに「電力量不足」と混同され、電力量不足なら、電力量を増やす原子力発電(原発)を再稼働しないといけない、という“結論”にたどり着いてしまう。 これが、単純に対策として誤りであることは、記者の最近の記事や、専門家である京都大学特任教授の安田陽氏などが伝えているところだ。 ただ、その誤解がこれだけ広まってしまうと、誤解を一気に解くのは容易ではない。「風邪に抗生物質を処方する」という誤りと少し似ているかもしれない。専門家(医者)を含む非常に多くの人が一度そう思い込ん

The tower in Berlin. Image: Vattenfall. Swedish public utility Vattenfall is about to start filling a 45m-high, 200MW-rated thermal energy storage facility with water in Berlin, Germany. The heat storagetank can hold 56 million litres of water which will be heated at 98 degrees celsius and will be combined with the existing power-to-heat system of Vattenfall’s adjoining Reuter West power plant.

再生可能エネルギーや電気自動車(EV)についての批判が最近増えているように感じる。正当な批判も確かにある。例えば、太陽光発電であれば、自然林を周辺住民の同意なしに伐採、造成したり、固定価格買い取り制度(FIT)の穴をついて権利だけ取得し、システムの価格低下をぎりぎりまで待つケース、あるいはその権利の転売でもうけるケース、20~30年後の発電終了後の撤去計画や予算を明らかにしていないようなケースについての批判だ。筆者としてはそうした事業者の責任もさることながら、そうした業者のふるまいを許した制度設計に問題があったと考えている。 EVであれば、充電インフラの不備不足の指摘や、もっと根本的な、長距離を移動するモビリティーとして重い電池を載せて走るEV(BEV)は最適解か、といった問いも建設的な正しい批判だと思っている。そこに別の解がなければ単なる“ないものねだり”だが、例えば、燃料電池車(FCV

国民民主党の玉木雄一郎代表は2022年4月12日の定例会見で、原発再稼働に向けた原子力規制委員会の審査について「審査体制の強化、そして、審査プロセスの効率化・合理化ということが必要」だとして、再稼働を急ぐべきだとの考えを示した。 審査のための「標準処理時間」は2年と定められているが、それに実態がともなっておらず時間がかかっていることを受けた発言だ。ただ、過去の国会審議では、規制委は標準処理時間を守るよう求める声に反論している。 泊原発、2013年申請の審査がまだ終わらない 玉木氏は、原油価格の高騰対策をめぐる自民・公明・国民民主3党の実務者協議の内容について、 「補助と減税(国民民主が訴えているトリガー条項の凍結解除)の組み合わせ、ハイブリッドでやっていきたいということで引き続き粘り強く訴えていきたい」 と発言したのに続いて、次のように言及した。 「電力の安定供給という観点からも、安全基準

大詰めを迎えている容量市場のルール改定だが、新たなルールの中には首をかしげるものがある。その1つが、デマンドレスポンスの約定方法だ。資源エネルギー庁は、入札量が上限を超えた場合に落札者を「くじ引き」で決めるという新ルールを検討している。 脱炭素を進めていくうえで、再生可能エネルギーに並ぶ重要な電源が「デマンドレスポンス」(DR)だ。 電力需要が急増するタイミングで、火力発電などで発電量を増やすのではなく、工場の生産設備の稼働を落として需要を減らしたり、企業が所有する自家用発電機を稼働させることで電力需給を調整する。電気自動車(EV)や蓄電池に充電した電力を放電させる方法もある。 DRによる柔軟な需給調整は、脱炭素時代の電力システムには欠かせない。再生可能エネルギーを増やし、老朽化した火力発電を休廃止していく過程で、「たまにしか動かない老朽火力」の代替となるのがDRだ。 ただし、DRを増やし

2016年に電力の小売全面自由化がスタートして以降、多くの小売電気事業者が参入して電力分野のビジネスが活発化し、一般家庭でも電気の契約先や料金メニューを自由に選ぶことができるようになりました。その一方で、新たな課題も生まれています。そこで、将来にわたって電力を安定的に供給していくために、2020年から「容量市場」というしくみが取り入れられました。少々難解なこの制度について、あらためてわかりやすくご説明しましょう。 再エネ拡大と電力調達の多様化にともなう新たな課題 電気を各家庭に届けるための電力供給システムは、発電所で電気をつくる「発電部門」、発電所から消費者に電気を送る「送配電部門」、消費者への料金メニュー設定や契約の手続きなどのサービスをおこなう「小売部門」で成り立っています。電力の小売自由化によって、小売部門に、家庭などへ電気を販売する事業者(小売電気事業者)が新たに参入しました。 小

高効率化を目指した「石炭ガス化燃料電池複合発電実証プロジェクト」(広島県大崎上島町)(提供:大崎クールジェン株式会社) 「あらためて考える、世界と日本における『石炭』の役割」で見たように、石炭は安定供給や経済効率性の面で優れたエネルギー源です。その一方で、デメリットもあります。そのもっとも大きな問題は、CO2発生量が、他の化石燃料にくらべて多いことです。このため、できるだけCO2の排出量を減らし、「脱炭素社会」を目指そうとしている今、石炭を使った火力発電はできるだけ減らすべきだという声もあり、国によっては、石炭の利用を低下させつつあるところもあります。今回は、世界各国における石炭の利用や技術開発の現状を見てみましょう。 国・地域によって異なる「脱石炭」の背景 イギリスは2025年までに、フランスは2021年までに石炭火力発電を廃止すると表明しています。両国で現在稼働している石炭火力発電設備

「核融合発電の時代はくるの?」専門家に聞いてみた2022.05.18 22:0053,787 Daniel Kolitz - Gizmodo US [原文] ( satomi ) 今のエネルギーを取り巻く状況が持続可能だと言ってるのは、だまされやすい若者と化石燃料企業の重役ぐらい。 気象変動の危機が表面化するよりずっと前から科学の世界では核融合を代替電力に活かす技術の研究が進められてきました。つまり核が融合するときの放熱で電気を生み出す技術です。 実現はもうすぐそこまで来ていると言われ続けて半世紀。核融合は本当に来るのか? 来るとすればいつなのか? 専門家に聞いてみました! 研究費が増え続けていけば、答えはYESSteffi Diem(ウィスコンシン大学マディソン校工学物理学教授。ペガサスIII実験で革新的な核融合リアクタのスタートアップ技術の開発に専念) 研究費が増え続けていけば、答えは

12月17日、日本自動車工業会の豊田章男会長がオンライン懇談会で「電動化=EV(電気自動車)化」という誤った認識によって「日本の自動車産業がギリギリのところに立たされている」という懸念を示したことが大きく報じられています。発言内容のポイントを整理してみましょう。 ※冒頭写真はトヨタ自動車『第2四半期決算説明会』での豊田章男社長。(出典:トヨタ自動車) 電気自動車を増やすだけではカーボンニュートラルは実現不可能 日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長、つまり、トヨタ自動車の豊田章男社長が、2020年12月17日に開催されたオンライン懇談会で記者の質問に答えて「自動車の電動化」や「カーボンニュートラルの実現」について話した内容が、さまざまなメディアで大きく報じられました。 豊田会長のメッセージは、大きくふたつのポイントに整理できると思います。 「電動化=EV化」という誤った認識は正すべき 先

2022年3月29日にアメリカの風力発電が生み出した電力が、石炭火力発電と原子力発電を上回り、アメリカで第2のエネルギーとなったことが分かりました。これまでにも、風力発電が別々の日に石炭火力発電と原子力発電を上回ることはありましたが、同じ日に両方を上回ったのはこれが初めてとのことです。 Wind was second-largest source of U.S. electricity generation on March 29 - Today in Energy - U.S. Energy Information Administration (EIA) https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=52038 以下は、アメリカエネルギー情報局(EIA)が4月14日に発表した発電量の内訳のグラフで、ベージュが天然ガス火力、緑色が風力、赤

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.jiji.com/jc/article?k=2022040900341&g=eco 知識が古いのとFITのせいかなとは思うが最近の状況を説明してあげよう 今時いい事ないのか?FITの金額が下がったので儲からない=いい事ない かなと推測するが 今はパネルの価格が下がったので、自家消費するだけでもお得になる。 FITも0ではないので10年で間違いなく利益出る。 製品保証も10年程度はあるメーカーが多い。 10年目以降パワコン交換代が出せない→放置された家庭で停電が頻発するパワコンは30万くらいだが パネルの寿命は今や40年以上で、新築した時載せても死ぬまでパネルは生きてる。 パネルが生きていれば10年毎に壊れてもペイできる。 放置すると停電になるはちょっと意味わかんない。 廃棄問題70%ぐらいはガラスとアルミで出来ているので

(CNN) 米国の電力供給量に占める風力発電の割合が、米エネルギー情報局(EIA)で統計を取り始めて以来、初めて2位に浮上した。 EIAが確認したE&Eの報道によると、風力発電量は3月29日に2000ギガワット時を突破し、原子力や石炭による発電量を上回った。ただ、依然として天然ガスによる発電量は下回っている。 昨年の風力発電量は年間約380テラワット時で、天然ガス、石炭、原子力発電に次いで4位だった(テラワットはギガワットの1000倍)。 Last Tuesday, total U.S. wind generation exceeded 2,000 GWh, making wind the second largest producer of electricity in the United States after natural gas for that 24-hour period

2030年ごろに北海道と東北で再生可能エネルギーによる発電の最大4割超が無駄になる恐れがあることが21日、分かった。電力の供給量が需要を超えた際、太陽光や風力などの発電を止める「出力制御」が生じるためだ。温暖化ガスの排出量削減目標の達成が遠のきかねない。解決には消費量の多い都市部に電力を送る送電線増強が不可欠だが、増強計画の多くが策定段階にとどまる。大手電力10社の試算を経済産業省がまとめた。

連載:EVはカーボンニュートラルを目指す 前編では、LCA(ライフサイクルアセスメント)を通じても、EV(電気自動車)の方がガソリン車よりもCO2排出量が少ないことを示した。さらに、石炭火力が多い中国においても、EVの優位性があり、将来的にも脱炭素化が進んでいることを示した。産業技術総合研究所 櫻井啓一郎主任研究員は、むしろ問題は日本だという。 EVによる電力需要増よりも早い再エネの電力供給増今後、電力由来のCO2が多いと指摘されるようになるのは、中国ではなく日本になるかもしれない。前編において、そのように指摘させていただいた。 ところが電力の脱炭素化は一筋縄では行かず、下記のような手段を組み合わせながら、段階的に進める必要がある。 火力発電の代わりとなる柔軟性資源を増やす[8]再エネや原発による供給量を増やす省エネを進める(特に建造物の断熱強化)そしてこの全ての項目について、EVの普及が

連載:EVはカーボンニュートラルを目指す 火力発電が主体となっている現在の電力システムでは、EV(電気自動車)を導入しても、CO2排出削減にはならない、という主張が一部でなされている。しかし、本当にそうなのだろうか。あらためて、ガソリン車とEVのLCA(ライフサイクルアセスメント)を通じた排出量を産業技術総合研究所の櫻井啓一郎主任研究員が検証する。 欧州市場ではすでに新車の4分の1がEVとPHVになっている昨今、世界各国でEV(BEV:純粋な電気自動車)の導入が始まっている。販売数も増加し、2020年11月には世界の新車の4%超がEVとなっている[1]。つまり新車25台のうち、1台はEVだ。 中でもホットなのは、欧州市場である。昨年(2020年)は通年でEVが6.2%のシェアとなった[EV Sales]。絶対量としてはまだ少ないが、2019年(2.2%)に比べるとほぼ3倍増である。しかも直

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