もう十年以上前の話になるが、大阪から東京に、「神座ラーメン」というラーメン屋が進出してきた。武士気取りの名前のラーメン屋でも怖気づいてしまうものだが、よりによって、神様のいる場所である。 そもそも、大阪で一番人気のラーメン屋という触れこみの「人気」は、精査が必要である。「○○で人気の店」が実際に○○ではさほど人気がないということは大阪に限らずよくあることだし、また、大阪出身のわたしが言うのでたしかだと思うのだが、大阪人は店を選ぶとき、おいしさを重視しない瞬間がある。それはdiversityにもつながるので、とてもいいことだと思うのだが、おいしさを求めているときに、おいしさ以外を重視している店に入るのはつらい。 むかしミニコミ紙のコラムで、大阪人に、「◯◯ラーメンって混んでるけど、なんかインスタントラーメンみたいじゃない?」と言ったら、「そこがええんやん」と返されて絶句した……という話を読

東京在住の人でも、「唐木田」という文字列を見たことがない人もいるだろう。小田急線を使っている人は、「唐木田行き」という文字列を見たことがあるかもしれないけれども、そういうのはいいから小田原行きを増やしてくれと思うだけかもしれず、ましてや降りたことのある人は少ないと思う。 わたしも、唐木田に行く前は、住む分には始発駅だから通勤には便利そうだが、観光地ではないと認識していた。しかし、実際に行ってみるとそうではなかった。いや、やはり一般的な意味での観光地にあたらないことはたしかなのだが、ちょっとした非日常的な空間が楽しくて、もう五回ほど散歩に行っている。たとえば幕張に住んでいる人が唐木田に遊びに行くのはあまりおすすめしないが、仙川や調布、成城学園前や新百合ヶ丘などにお住まいの方にとっては、気軽に味わえる異空間である。 もし行くなら、夕方4時ごろがおすすめで、駅を出てからゆっくり歩いても2時間もか

無料なら絶賛されるが、売るとこき下ろされる写真たち 少し前に、インターネットの安達祐実さんのギャラリーの写真がすばらしいと話題になった。アクセスが集中していたが、そういえば、安達祐実さん、同じようなタッチの写真集を出していたような気がする……と思って調べてみたら、その写真を撮った写真家と同じ写真家が撮っていた。しかし、その写真集は、その芸術性というより、もっぱら安達祐実さんのセミヌードが載っていたことで話題になっていたし、Amazonでも酷評する人が多く、ブログの写真への圧倒的賞賛がまるで嘘のようだ。 なぜ、同じ写真の評価にここまで差がついてしまったかというと、ブログの写真を見た人は、「(スマートフォンで無料で流し見するには)素敵な写真」と言い、写真集を買った人は、「(ヌードが見たくて金を出したのに被写体の露出度が足りなくて)よくない写真」と酷評したのだった。芸術性を認めた人がお金を払わず


記事のタイトルをご覧になったあなたは、「おいしい店の見分け方ならともかく、おいしくもまずくもない店を見分けてどうするんだ?ド変態とちゃうか」と思ったことだろう。ド変態とのご指摘については残念ながら反論できる材料を持っていないのだが、おいしくもまずくもない店という存在は実はかなり重要であり、あなたもあなたで、おそらく、おいしくもまずくもない店について、独自のノウハウを無意識に集積中のはずである。改めて、おいしくもまずくもない店を知ることのメリットと、その判別方法について考えてみよう。 「おいしくもまずくもない店」を知ることのメリット (1)おいしくもまずくもない店は、すぐに入れ、リスクもない優良店である 見知らぬ土地にいて、空腹だが店を選ぶのが面倒で、「何でもいいからとりあえず食べたい」と思ったとしよう。考えなしに入った店で、豚の臓物のシロップ漬けなどが供されたら、これは食べたいものとは違う

気づいたら生まれてずいぶん時が経っていた。物心ついたときから性格が暗かったが、きっと大人になると明るくなるだろうと楽観していた。しかし、「性格の明るい人物を装う術」や「暗いなりに人生を楽しく過ごす術」に長けただけで、もとからの性格の暗さは一切変わらなかった。仕方ないのでそのまま生きている。 きょうはそんな薄暗いオッサンからの四次元経由のアドバイスに耳を傾けてほしい。「除湿機はいいぞ」という話である。申し訳ない。先輩風を吹かせてしまった。「除湿機はいいですよ」という話である。加湿器は持っていても除湿機は持っていない、という人は多い。加湿器はもともと値段が安いし、ないと風邪をひきやすくなるが、除湿機は安いものでも1万円以上するし、夏は湿って当たり前だと思うなら、特段不自由はない。除湿機のよさは除湿機を手に入れてからではないとわからないのが、すすめる側としても歯がゆいところである。しかし、とく


ココロ社です。 今回は、元号が昭和から平成に変わったころの話。 あのとき、『一杯のかけそば』という童話が空前のブームになっていた。 話のあらすじはこうだ。 ある年の大晦日、子供二人連れの母親がそば屋を訪れ、お金がないがどうしても食べたいと、一杯だけかけそばを注文し、三人で分けあって食べた。 その年からしばらく、大晦日には三人で来て、一杯のかけそばを注文して食べていたが、ある年からぱったりと来なくなった。そば屋は、三人がまたいつか来てくれると思って何年も待っていた。 来なくなってから10年以上経ったある年の大晦日に、あのときの三人がやってきた。子どもたちは立派に成長していた。聞くと、それぞれ銀行員と医者になり、この蕎麦屋でかけそばを食べるためにわざわざ集まったという。三人は三杯のかけそばを頼んでおいしく食べたのだった。 若い人には信じられないかもしれないが、平成になりたてのころには、この作り


ココロ社です。久しぶりの更新で緊張しちゃう……。 7月の話。山口近辺に行くことがあって、話題の角島大橋に行ってみるのはどうだろうと思って調べてみると、おなじ山口の人が「沖縄みたい!」という感想を書いているのを見かけた。そんな近いところに喩えてうれしいのだろうか、どうしても喩えたいというなら、外国に喩えればもっと楽しかろうと思ったのだが、では具体的にどこに喩えたらよいのか、わたしにもわからない。 調べてみたら、羽田空港から那覇空港に行くのと、山口宇部空港から那覇空港に行くのでは、30分程度しか変わらない。東京の人がもつ沖縄ファンタジーと山口の人がもつ沖縄ファンタジーは案外同質のものかもしれない。 道路や橋のように、単に必要に応じて作っただけの建造物でも、お、これはいわゆるひとつの文化系かも、これはエグザイルが好きな人が好きそうだな、など、文化圏の違いのようなものを感じることがある。角島大橋は

テクノロジーの進化が、かつて栄華を極めていた巨大企業のビジネスモデルを成り立たなくさせてしまうことがある。たとえば郵便。物流はなくてはならないが、信書について考えてみると、手紙を出すメリットはほとんどない。手書きだと温かみがあるような気がするが、別にLINEで暖かいメッセージをクリエイトすることは可能であるし、手書きの手紙をもらったら手書きで返さなくてはいけないような気がして、むしろありがた迷惑という気もしなくもない。手書きで手紙を書くのなら、往復ハガキで、返事も書いておいてほしいし、それが本当の礼儀というものではないだろうか……などと妄言を吐きたくなってしまうほどに信書の電子化は不可避であり、ドル箱であったところの年賀状もまた、衰退の一途を辿っている。 先月の話だが、電車を降りたら不意打ちに遭った。 つまりこれは、「年賀状を出して、ちゃんとした大人になりなさい」という意味である。しかも、

ぶらり姫路まで行ってきた。 姫路駅~手柄山中央公園については別途記事にするとして、今回は、姫路駅からちょっと歩いた博覧会跡―博覧会は50年ほど昔になるので「跡」という認識ももはやないと思うけれど―にある展望レストランの素晴らしさについてお話ししたいと思う。 この展望レストラン「手柄ポート」は、50年前に博覧会の姫路館として建設され、終了後は展望レストランとして姫路の街を見守っている。 見守られていると思っている人はあまりいないかもしれないけれど、見守るというのはそういうことなのかもしれない。 一度見たら忘れない、この宇宙的なデザインは、ロサンゼルス国際空港のレストランにそっくり、というか、そっくりを超えた意図が感じられ、かつてこの国もまたコピー天国であったことを思い起こさせてくれる。ただしロスアンゼルスと違ってこのレストランは回転するので、単なるコピーに終わらず創意工夫を凝らしているという

気温が上がってきているとはいえ、それに見合った愉快なできごとがないと、かえってふさぎこんでしまいがちなこの季節。 積極的に生きる喜びを獲得する施策を打っていかないと、たちまち召されてしまいかねないが、そもそも、その積極性が失われていることが事の発端……とするならば、偶然ここをクリックした方は、この記事を読まされ、ポテトチップス製造ライン導入を怪しいオッサンにより提案され、道具を買い揃えさせられ、ポテトチップスを作らされ、ツイートさせられ……など、受動態で小さな幸せを獲得させられていただければ幸いである。体重も増えるので幸せと思わないかもしれないけど……。 おいしいのはもちろん、意外に早くできる ポテトチップス製造ライン導入のメリットは以下の4点が考えられる。 (1)作りたての温かいポテトチップスを食べることができる カルビーの作りたてポテトチップスの店で並んだり、本郷のファイアーハウスなど

岩国について調べると、錦帯橋の名ばかりが出てくる。 いままでよく見てこなかったから気づかなかったのだけれど、もしかすると錦帯橋は巨大な橋で、その中に岩国市街があるのではないか。 橋の斜面上に店舗を構える駄菓子屋は、スーパーボールだけは金庫に入れて管理し、店の外に跳ねていかないよう気をつけなくてはならない。 空港の名前が「岩国錦帯橋空港」だから、やはり橋の上に空港があり、傾斜のかかった滑走路には、キャリアを積んだパイロットしか着陸できない。 ―などと、無知を装った嫌味を口にしてしまいたくなるほど、岩国については錦帯橋の話ばかりが書かれているのだが、読めば読むほど、橋のことは決して嫌いではないものの、夢に出てくるほどには橋が好きではない人は、きっと、「日本一おいしいはんぺん」を差し出されたときの気持ちと同じような気持ちになるに違いない。 しかし、日本一おいしいはんぺんを出す店が、同時に日本一お

「名水」というと、ハンバーグが好きそうなタレントが「この水、甘いですね!」と、わかったようなコメントをすることを強いてくる不思議な液体として知られていますが、その澄んだ液体の所在地として想起するのは四万十川なのかもしれません。しかし、東京にも「名水百選」に選定された地域があるのをご存知でしょうか。それが国分寺なのです。 まあ、水だけだったら富士山のおいしい水をマルエツで買ってくればええやん(関西在住の方は「六甲のおいしい水をサカエで買うてきたらええやん」と読み替えてください)という話になりかねませんが、水以外にも見る場所がいろいろあるので、近くに立ち寄った際はご検討くださいませ。 まず、強烈なコシの「武蔵野うどん」を民家で食べます 今回はおもに駅の南をめぐりますが、その前に北口から出て、せっかくの武蔵野ですから武蔵野うどんを食べます。 讃岐に行って讃岐うどんを食べずにおれますかという話です

こんにちは。4月23日に新しい本が出ます。 クビにならないビジネスメール 〈特選〉世渡り上手フレーズ100 作者: ココロ社出版社/メーカー: インプレスジャパン発売日: 2010/04/23メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 8人 クリック: 100回この商品を含むブログ (5件) を見るどういう本かというと「口下手でもメール技術を身につけて世渡り上手になればいいじゃない」という主旨の本で、今回はすぐ使える世渡り文例を100、そしていつもの調子での解説という組み合わせです。「ココロ社の味を保ちつつ、お役立ち情報に徹するとどうなるか?」というのを考えて作ってみました。あと、購入者には『気になる彼/彼女を気まずくならずにデートに誘うメール術』がもらえるヨ! ただ、言いたいことが多すぎて256ページだと足りなかった&せっかくこのブログを訪問していただいたのに宣伝だけやったら感じが悪いかも

こんにちは。 お忙しいところ大変申し訳ありませんが、まず、この蕎麦の写真を見てください。 素晴らしい蕎麦ですよね。余計なものがない状態の蕎麦ほど美しいものはこの世にないんじゃないでしょうか?「あー日本人に生まれてよかった!」と思う瞬間ですね。いや、思いません。たしかにわたしはみすぼらしいオッサンかもしれませんが、感激したときに国家などという間接的な概念を持ち出すほど落ちぶれてはおりませぬぞ! ―それはともかく、本題に入りたいと思います。この蕎麦、おいしかったのですが、とくに海苔がのってないところに好感を持ちました。けっこうな老舗に行っても、海苔をのっけている蕎麦が出てくることが多く、わたしは、ブラックジャックのように、海苔を丹念に蕎麦から剥がして飲みこむのです。のどにべったりと張り付いて、おいしさとまずさの中間的な味を発生させる紙状のサムシング……しかし、蕎麦といっしょに口にして、蕎麦の味

ごぶさたしております。 去年は本当に忙しかったので、読者のみなさまにおかれましては、ブログを更新したと思ったら著書の案内だったりして、さぞかしガッカリされたことと思います。ガッカリすることがあってこその人生という気もしますが、今回は殊勝にも罪滅ぼし…ということで、2009年に行っておいしかった店を、一部リンク付きで紹介させていただきますので、よかったら参考にしてみてください。東京と大阪が中心で申し訳ありません。 (1)新幹線からすぐのお好み焼き屋さん この「めっせ熊」という店、チェーン展開していて珍しい店ではないのですが、すごくオススメなのは何でかっていうと、新大阪駅にあるんですよ。つまり、出張で「ああーせっかく大阪に来たのに会議しただけで大阪っぽいこと何ひとつできなかった」という人は、とりあえず新幹線に乗る前にここで夕食とって帰ったらええんとちゃうか、という、役立たずでおなじみの当ブログ


こんにちは。ココロ社(37歳・大阪出身)と申します。 男というものは、オッサン化してくると、ホルモン焼などを食べに行きたくなる可愛らしい生き物なのですが、オッサンの入口あたりにいらっしゃる方は、「ホルモンって、全部カタカナで馴染みのない名前ばかりで、よくわからない~」と思われているかもしれませんが、ホルモンの部位および形状、味についてまとめさせていただきましたので、参考にしていただければ幸いです。 ハラミ(横隔膜) これはホルモンというより普通の肉に近いです。コシがあって、肉っぽい肉汁も満喫できます。普通の焼き肉屋でも食べられます。「ホルモン食べたい」と言って連れて行ってもらったものの、形状に違和感を感じて食の進まなかった人は、こちらが最適です。 忘年会の前にチェックすべき、ホルモン焼まとめは以下に続きます。大長編ですので、昼食を済ませてからどうぞ。 ミノ(1番目の胃) ご存じの通り、牛の

この前の三連休、奈良をうろうろしてきましたが、やはり、連休の最後の日、というのは重要な役割を果たしていると実感した次第です。たとえるなら、現実界と霊界を結ぶ間、みたいな感じです。霊界に行ったきりだと、翌日の仕事の辛さが身にしみるので、休日とはいえ、若干楽しくない要素を積極的に取り入れつつ、翌日の朝に発狂しないよう、心のバランスを徐々に整える。休みのようで休みでない、いや、どう考えても休みなのですが、そんな中間的な日にふさわしいのは、明日香でも斑鳩でもない、大阪の町めぐりなのではないか、と思いたち、京橋から京阪電車の準急だか急行だかに乗ってみました。 まず、大和田駅で降り、「一作ラーメン」を食べに行きました。この一作という店は、前にも取り上げましたが、天下一品に似ていながら、天下一品よりくどいとされている店です。ただ、もし一作ラーメンが天下一品よりも有名であったら、天下一品が、「一作ラーメン

男性諸氏におかれましては、どうやって女にモテるか?について思案を重ねて脳がバター状になっている頃合いかと思います…が、「モテたい」とか「恋がしたい」などとぼんやり考えていると、だいたい3つの観点で正論的なサムシングが飛んでくるので、世の中は生きづらい!たとえばこんな感じでしょうか。 【1】漠然と考えているだけで、行動に移さないのはおかしい!傷つくのが怖いの?要は…勇気がないんでしょ? 【2】恋愛とは個別具体的なものであるので、漠然と「彼女がほしい」とかそういうのはダメだねー 【3】いやいや、モテはテクニックではないので、モテるために策を立てるやつはモテないねー 積極性のない人でも、戦略次第でなんとかなる 【1】は、正論だと思います。たしかに、「YESと言ってくれる女の人が現れるまで、片っ端からアタックし続ける」というやり方をとれるのなら、すぐ彼女ができるでしょう。そして、積極性満載の人とい

おめでとうございます! 実感ゼロだと思いますが、これを読んでいるあなたはとてもラッキーです! なぜならこれから、他ではちょっと見ることのできない写真をお見せするからです! 最初は自分が見ているものが何かわからなかったのですが、状況を飲み込んでいくうちに、カメラを持つ手が震えてきましたよ…さあさあ、いっしょに喜びを分かち合いましょう!(嫌がる手を引っ張りながら…「虫は興味NAI」って言わないで!) 「ザトウムシ」というナイスな生き物 草むらとかをうろうろしていると、足が超長いクモみたいなのを見かけたりしますよね?最近までぼくもクモ系には興味がなかったのでスルーしていたのですが、よく見るとなかなか面白い。 これは「ザトウムシ」というクモ科の節足動物(なので「昆虫」ではないのですが)で、いろんな種類がいます。そう、人間にもいろいろいるように…あえて人に「怒ってるの?」って聞く人や(その一言で火に


リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く