安倍元総理大臣の死去を受けて、アメリカ議会上院に超党派の議員が提出していた、安倍氏の功績をたたえる決議案が20日、全会一致で採択されました。 この決議案は、アメリカの前の駐日大使を務めた共和党のハガティ上院議員が呼びかけ、議会上院の7割近くにおよぶ超党派の68人の議員が共同提案者となっていました。 議会上院は20日、この決議案を全会一致で採択しました。 決議は、安倍元総理大臣について「一流の政治家であり、世界における民主主義の不断の擁護者だった」とし、「日本の政治、経済、社会に加え世界の繁栄と安全のために消し去ることができない功績を残した」とたたえています。 そして、安倍氏は「自由で開かれたインド太平洋」という2つの大洋をつなぎ合わせるビジョンを打ち出すとともに、アメリカ、日本、オーストラリア、インドの4か国からなる協力の枠組み「クアッド」を推進したと指摘し、北朝鮮による拉致問題の解決のた

今日の横浜北部は曇っておりまして、かなり涼しくなってます。 さて、久々にコメントを。 つい先日の話ですが、夏休みがもう終わろうという8月29日の早朝に、北朝鮮が津軽海峡上空を越えて弾道ミサイルを発射しました。 これによって全国瞬時警報システム(Jアラート)というシステムが作動し、主に東北を中心に携帯電話などから警告が鳴り響いたり、鉄道各社が運行を見合わせるなど、一時的に日本各地で混乱が発生しました。 もちろんこのニュースを聞いて 「またミサイル発射実験か」 と感じたかたもいらっしゃるとは思いますが、今回が前回までと違ったのは、北朝鮮が予告なしに実験を行い、しかもJアラートが実際に鳴らされたという点です。 とりわけこのJアラートの作動は、それを聞いたほとんどの国民に対して「警戒すべきだ」という心理的なインパクトを与えたように思えます。 幸か不幸か、私の住んでいる地域ではJアラートは発動しなか

安全保障入門 (星海社新書) 作者: 石動竜仁 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/08/26 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る本書は安全保障に関するさまざまなトピック、概念をひとつひとつ丁寧に解説した入門書です。安全保障に関連する国際政治や防衛のトピックについて、専門書を買って勉強するほどではないけど、何となく興味はあるし、ちゃんと知りたい、という人に好適です。本書の良いところ…手に入りやすい入門書で、類書がない 「安全保障」と呼ばれる領域について入門書を書くというのは、すごいことです。「安全保障」領域は「戦略学」や「平和学」などに比べ、とても幅の広いものだからです。だからその類の入門書は、分厚くて値段が高くなりがちです。 例えば「安全保障ってなんだろう」「新訂第4版 安全保障学入門」「安全保障のポイントがよくわかる本―“安全”と“脅威”のメカニズム」等はどれ

憲法が注目を集めている。直接的には、現政権による憲法九条の解釈改憲とそれに対する国会前デモを含む広範な批判、そして来る参院選の結果如何では自民党が視野に入れる憲法改正の現実味がいや増すという状況がある。 さて、いわゆる安保法制への批判の文脈では主に「戦争反対」の立場から「立憲主義」の重要性が召還され、それを軽視するような政権への批判が繰り広げられる。彼らの言い分としては、ときの政権を縛る、より上位の命令としての憲法という存在を横目に、現政権は白昼堂々と違憲である安保法制を通してしまった。彼らがデモでコールする「憲法守れ」は、「戦争反対」のコールと実質的には同義だ。 ご存知の通り、そこでの争点は「集団的自衛権」の行使が合憲か否かだということになっている。しかし、本質的な論点は全くそこではないのではないか、そう東大法哲学の超大物教授が真っ正面から社会に問いかけたのがこの新刊『憲法の涙』である。

NATOの軍事演習にスパイ機を飛ばして牽制するロシア。プーチンは北欧やバルト海諸国への侵攻を狙っているのか NATO(北大西洋条約機構)は先月、2週間にわたりバルト海で合同軍事演習を行った。その3日目の午前10時、デンマーク海軍のラッセ・ジェンセン上級曹長は予期していたロシアのスパイ機の侵入を探知した。 デンマーク東部の島ボルンホルムにあるレーダー基地に所属しているジェンセンはすぐに、コンピュータースクリーン3台を見詰めながらスパイ機の動きを追った。「狭い海域に多くの戦艦が集まれば、ロシア軍が何らかの偵察に来ることが予想される。それがもう普通だ」と、彼は語った。 バルト海での軍事演習は毎年恒例だが、今年は特にNATO軍の強さを大々的に誇示する演習が展開された。バルト海に接するロシアの飛び地カリーニングラードからわずか100キロの地点に、17カ国から軍艦49隻と兵士5900人が集結して演習を
日本国憲法の矛盾を考える上での参考書というのものがあればいいなと、この間思うことが多く。そういえば、あれは参考になるかなと、ふと思いついたのが橋爪大三郎『政治の教室』(参照)だった。2001年10月に出た新書である。現在は文庫化されている。 率直に言うと良書とは言いがたい。「あ、これはないなあ」と思われる説明(例えば「法の支配」の説明など)も目に付く。それでも、この本はかなり言い切っているなあと思えたのと、日本国憲法については、護憲か改憲かみたいな紅白歌合戦みたいな暢気な構図が多いなか、そういう色分けから少し脱しているという点で、ちょっと触れてみたい。 表題の『政治の教室』だが、そのとおりに、政治とはなにかということを学ぶことに力点が置かれている。別の言い方をすれば、若い人が政治参加するときにどういうことを最初に学んでおくとよいかという前提的な議論がまとめられている。若い人の政治参加が求め

なぜこうなってしまったのか。実に奇妙な事態になってしまった。これほどまで熱く平和が語られ、これほどまで厳しく政府への批判がなされる中で、日本が選択すべき安全保障政策についての具体的な提案や主張がほとんど見られないのだ。 安全保障政策の選択を間違えれば、その国の安全は崩れてしまい、国民の生命を守ることはできない。国際政治の歴史をこれまで研究し、また大学で教える立場にある者として、歴史上多くの国が安全保障政策の選択を間違えたことで、国民の生命を犠牲にして、不毛な戦争を招いてきたことを学んできた。経済政策を一つ間違えても国が滅びることはあまりない。しかしながら、安全保障政策の一つの誤りが、国家の存亡に直結した例は溢れている。74年前に日本は、安全保障政策の選択を間違えて、平和を破壊し、膨大な数の国民の生命を奪い、またアジア太平洋地域に破滅的な惨状をもたらした。これほどまで重要な安全保障政策につい
安保関連法案は憲法違反か 一般論として、憲法の範囲内において、政府が従来の憲法解釈を変更すること自体に憲法上の問題はありません。したがって、従来解釈との論理的整合性や一貫性が欠如していることは、それだけでは憲法違反の理由にはならないと思います。もちろん、新解釈への変更の理由や妥当性について、政府は政治責任を負うことになります。 国際法上認められた「権利」を行使するのに、特段の憲法上の根拠が必要であるとは考えられていません。個別的自衛権と集団的自衛権についても、その行使を基礎づける憲法条文が必要なわけではなく、国家は憲法が禁止していない限り行使できる、とするのが一般的な理解だと思います。他の主要国を見渡しても、個別的・集団的自衛権の行使を許容する旨の明文規定を置いている憲法は見当たりません(少なくとも一般的ではありません)。そうでないと、個別的自衛権についても、憲法の明文規定がなければ行使で

政権支持率を下げた「安保法案」の大混乱 安倍政権の支持率が下落しています。読売新聞が7月3日から5日にかけて行った世論調査では、支持率は前回より4%低い49%となり、50%を半年ぶりに下回りました。NHKの調査でも支持率は前月より3%低い48%となっており、その他の調査でも軒並み低下しています。6月は日経平均株価が2万700円を15年2カ月ぶりに超えるなど、経済分野では「アベノミクス」が結実しつつあるようにも見えていたため、政府関係者は驚いたようです。 この支持率下落は、間違いなく、一連の安全保障関連法案の議論によって、国民の不安や不信がかきたてられたことが原因でしょう。今回の安全保障関連法案の改正議論は、当初から難航が囁かれていました。 安全保障が、国民の理解を得るのが難しい分野であることは世界共通で、日本も例外ではありません。中国の海洋進出が続き、緊張が激化している南シナ海への日本のコ

アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で、多国籍部隊の司令官に初めて就任した幹部自衛官が、現地での取材に初めて応じ、日本の存在感を示す重要なポストであり、日本の法律が許す範囲のなかでできるかぎりのことをしたいと述べました。 ソマリア沖の海賊対策で、自衛隊は6年前から護衛艦と哨戒機を現地に派遣していますが、司令官への就任は初めてで、自衛官が訓練ではなく実際の任務で多国籍部隊のトップを務めるのも、自衛隊創設以来初めてです。 伊藤さんの下では、海上自衛官のほか、イギリスやオーストラリアなど7か国の海軍から派遣された20人のスタッフが働いています。また、海賊対策部隊のトップとして、中東やアフリカ沖の海域でテロ対策に当たっているほかの多国籍部隊の担当者らと、互いの部隊の情報などを共有する重要な会議にも出席しています。 伊藤司令官は、「日本の存在感を示す重要なポストだと感じている。日本の法律が許す範囲のなかで
衆議院本会議で行われた安全保障関連法案の採決で、起立する議員ら(2015年7月16日撮影)。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI〔AFPBB News〕 7月15日、衆院平和安全法制特別委員会で採決が行われ、16日に衆院本会議で与党の賛成多数で可決された。これで仮に参院で野党の引き伸ばし戦略にあって60日以内に採決されなかった場合でも、再び衆院で3分の2以上の賛成をもって可決すれば法案の成立が可能となるため、事実上平和安全保障法案の成立は確定することになる。 批判の内容は大きく3つ この法案を巡っては様々な批判がなされたが、その内容は大きくは3つに分類される。 1点目は「違憲立法の可能性」を巡る議論である。衆議院での公聴会に招かれた3人の憲法学者がいずれも同法案に関して「違憲である」との見解を示したことに代表されるように、我が国の法律の専門家の間ではこの法案は「従来の憲法解釈を大きく逸

いわゆる「集団的自衛権の行使は合憲」という解釈の上での、一連の「安保法制」を成立させようという日本の動きは、アメリカでは大きく報じられてはいません。何よりも14日にウィーンで発表された、「イランとの核協議合意」のニュースが大きな話題になっているからです。 非常に簡単に言えば、今後15年間にわたって、イランは核兵器の製造につながる濃縮ウランの製造を制限されます。また、この点に疑念が生じた場合にはIAEA(国際原子力機関)による査察をイランは受け入れることになりました。その見返りとして、国際社会はイランに対する経済制裁を解除するというのが要点です。 今回の合意は「EU+E3(英独仏)+3(アメリカ、中国、ロシア)」とイランによるもので、オバマ大統領はウィーンでの発表の直後の臨時会見を行い、「これはあくまでイランを信頼するということではなく、イランを監視する仕組みを作ったものである」として、早速
「次は徴兵?」平和安全保障法案(いわゆる安保法案)を巡って、国論が大きく揺れている。 同法案の反対派は、集団的自衛権の行使が認められることで日本の安全保障とは直接関係のない紛争にまで巻き込まれる可能性を指摘する。これについては筆者も一定程度、そのようなリスクは認めざるを得ないと考える。 ただし、この法案を「戦争法案」と呼び、可決されるやただちに戦争が始まるとか(どことだろうか?)、徴兵制が敷かれるといったややヒステリックな反対論者の姿を見ることも少なくない。 特に徴兵制に関しては安保法案とほぼ無関係であることは明らかであるが、「次は徴兵制だ」という議論は根強い。たとえば今年6月、民主党の枝野幹事長は仙台市内の演説会で次のように述べている。 憲法解釈を都合よく変えてよいとなったら、次は「徴兵制」ですよ、みなさん。徴兵制だって、集団的自衛権と一緒で、憲法に明確に(禁止と)は書いていない。集団的
日本に十分な集団的自衛権があったら、アフガニスタン戦争でどのくらいの戦死者が出ていただろうか? この問いは自分の思いのなかでだけだが、ずっと考え続けてきた。理由は、日本が戦争に巻き込まれる危険性といったものより、この戦争に参加して戦死した各国の兵士を自分がどう追悼したらよいだろうかということからだった。 最初に断っておくべきことと最後に強調したいことがあるが、当然最初のほうを述べておくと、合理的な推定はできない、というが当然の前提になるということ。その意味で、残念ながら与太話である。最後に強調したいことは最後に述べたいと思うが、書きながら忘れてしまったら、そこはブログなんで、ごめんなさいな。 最初に基本的な話から。アフガニスタン戦争とは何か。歴史を知っている人なら、「え? どのアフガニスタン戦争?」と問うだろう。ここでは2001年から始まったアフガニスタン戦争を指す。ちなみに、この戦争に対
安保法制については、国民が民主主義の手順に沿って合意していけばよいことなので、特に言及すべきことはないが、この間、ちょっと気になったことなどもあったので、備忘をかねて書いておきたい。 個別名を出すのもなんなのでぼかすが、この議論に比較的熱心に言及している論者が、この法案(法改正)の原文を読んでいないようだったのだったの知って意外だった。すでに書いたように、私はこうした事態ではとりあえず一次資料に当たることにしている。今回の法案についてもそうである(参照)。そして思ったことはとても難しいということであった。自分の理解を超えていると言っていい。このことはすでに書いたので繰り返さないが、それでも原文を読めば簡単にわかることがあった。私のごく基本的な誤読でなければ、「集団的自衛権」という言葉はこの法案には含まれていないということだ。 ではこの法案は「集団的自衛権」について扱っていないのかというとそ
首相が維新・民主に歩み寄る?安全保障関連法案をめぐる国会審議が大詰めを迎えている。政府与党は7月16日にも衆院通過を目指す構えだ。維新の党は民主党と共同して領域警備法案を国会提出する一方、別に独自法案も提出した。与党と維新、民主党の議論はまとまるのだろうか。 まず領域警備法案だ。これは武装漁民が離島上陸した場合などグレーゾーン事態に備えて自衛隊と海上保安庁、警察などの連携を強化する狙いである。新法によって事前に国会承認を受け、領海や領空での警戒監視活動を円滑に進められるようになるという。 こうした法律の必要性については、かねて政府与党内でも議論があった。今回の安保法制見直しでは、公明党から「自衛隊の活動範囲が拡大する」との懸念が出て、法整備が見送られた経緯がある。政府与党は当面、現行法の運用改善で対処する方針だ。 ただ、1年前の国会では安倍晋三首相も「法整備が必要という認識に至れば、与党に

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