植民地支配と侵略戦争を起こし、数えきれない命を奪ったこの国で、加害の歴史を直視しようともしない政治家が「国の顔」となった。そして就任から1カ月も経たないうちに、「台湾有事」をめぐって戦争を誘発しかねない発言をした人物が、この国の舵を握っている。 この初夏、広島の平和記念公園を高校の修学旅行ぶりに訪れた。地元の若者や海外からの観光客たちのざわめきの中で、違う空気をまとった一つの碑が目に留まった。 「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」と刻まれたその石は、公園内の一角にひっそりと建っている。花は手向けられているものの、人々が行き交う中心部から少し離れているからか、足を止める人は多くない。 在日韓国・朝鮮人を祀るこの碑の裏には、「戦時中およそ20万人の朝鮮人が広島に定住し、うち約1割、約2万人が被爆した」と記されている。原爆の犠牲となった朝鮮半島の出身者たちは、日本の植民地支配のもとで強制的に動員され、工場