世界で一番有名な日本の伯爵令嬢は、フランス人も認める美貌の持ち主で、性格も良かった。ノンフィクション作家の平山亜佐子さんは「通称バロン薩摩と結婚した千代は、夫に同行し、20世紀前半のパリでまさにセレブというべき豪華な生活を送った」という――。 ※本稿は、平山亜佐子『戦前 エキセントリックウーマン列伝』(左右社)の一部を再編集したものです。 お妃候補にもなった伯爵令嬢 その美貌から「ドーリー」とよばれた千代は、本当に人形だったのだろうか。 薩摩千代は1907(明治40)年、伯爵の山田家に生まれた。 父の英夫は陸軍軍人および貴族院伯爵議員だが婿養子である。英夫の父、つまり千代の父方の祖父は元会津藩主松平容保かたもり、新撰組を起用したことでも有名な人物。千代の母方の祖父である山田顕義は元長州藩士、松下村塾に学び戊辰戦争、佐賀の乱、西南戦争などで功をあげて陸軍中将となった後に伯爵となり、司法大臣を