第十三話 川島先生への訪問──覚えられていなかった絶望 四月二十四日、木曜日。 職員室の窓の外では、五時間目の体育の授業なのだろう、グラウンドから時々歓声が上がっていた。 私は自分の席に座り、パソコンの画面に向かって初任者研修のレポートの提出形式が描かれたPDFを開いたまま、ほとんど画面の内容を見ていなかった。 カーソルの点滅だけが、一定のリズムで視界の端を行き来している。 頭の中では、まったく別の場所と時間の映像が再生されていた。 ◇ 一年目の講師として働いていた時のことだ。 まだ「先生」と呼ばれることにも、教員用駐車場に車を停めることにも慣れていなかった頃。 ある日の職員室の雑談で、ふと耳にひっかかる名前が出た。 「この校区の●●小学校に、川島先生っていうベテランの先生がいるんですよ。もうすぐ定年らしいんですけど、すごくいい先生で」 若い社会科の先生が、コピー機の前で楽しそうに話してい