読む前は勘違いしていたけれど、「児童文学」ではなく「少女少年小説」なのですね。 「大洋」バリー・ユアグロー/柴田元幸訳(Ocean,Barry Yourgrau,2009)★★★★★ ――私の弟が大洋を発見する。夕食の席で、弟はそのことを報告する。「素敵じゃないの」と母は言う。「さ、それ食べてしまいなさい」「お腹空いてない」「そんなことは訊いておらん。出されたものはたいらげてもらおうじゃないか」と父が言う。 ぽっかり空いた胸の内のように寂しく大洋が広がっていました。弟の部屋からしか見えない海を目にしていながら、軽蔑と嫌悪しか感じなかった語り手と父親。対照的に「わかっていたのよ」と言う母親の言葉には嘘偽りのないものがありました。 「ホルボーン亭」アルトゥーロ・ヴィヴァンテ/西田英恵訳(The Holborn,Arturo Vivante)★★★★☆ ――あんなレストランは後にも先にも見たこと