訓読 >>> 2630 結(ゆ)へる紐(ひも)解かむ日遠み敷栲(しきたへ)の我(わ)が木枕(こまくら)は苔生(こけむ)しにけり 2631 ぬばたまの黒髪(くろかみ)敷きて長き夜を手枕(たまくら)の上(うへ)に妹(いも)待つらむか 2632 まそ鏡(かがみ)直(ただ)にし妹(いも)を相(あひ)見ずは我(あ)が恋やまじ年は経(へ)ぬとも 2633 まそ鏡手に取り持ちて朝(あさ)な朝(さ)な見む時さへや恋の繁(しげ)けむ 要旨 >>> 〈2630〉あなたが結んでくださった紐を解く日はまだ当分先なので、私たちの木枕には苔が生えてきました。 〈2631〉黒髪を枕の上に靡かせて、この長い夜を一人で自分の肘を枕にして、彼女は待っているだろうか。 〈2632〉まそ鏡を手に取って見るように、じかにあの子に逢わないままだと、私の恋はやむことがありません。たとえ年は改まっても。 〈2633〉まそ鏡を手にとって朝