ドイツ経済の競争力喪失が顕著だ。それが経済から活力を奪ってもいる。ドイツ連邦銀行(中央銀行)のデータによると、化学品メーカーのBASFや自動車部品のZFフリードリヒスハーフェン、家電のミーレなどの企業が国外に資源を移し、2010年以降の純資本流出額は6500億ユーロ(約107兆円)を超える。しかも、この約4割は、ショルツ首相率いる連立政権が発足した21年以降に発生した。 米大統領選挙でトランプ前大統領が歴史的勝利を収めたことにより、ドイツ企業には関税回避の目的で米国への投資を増やすよう圧力がかかる。これが資本流出を加速させる恐れもあるだろう。選択肢に乏しく次期総選挙の予定まで1年を切っていた中、経済再生を巡る論争がもとでショルツ首相はリントナー財務相を更迭。ドイツは05年以来の早期総選挙に向かう見通しとなった。 関連記事:ショルツ独首相、来年3月の総選挙目指す-リントナー財務相解任 (1

「Nord Stream 2」とは何かこの4年間、ドイツとロシアが渾身の力を込めて進めてきた海底パイプライン・プロジェクト「Nord Stream 2」。この建設をめぐって、米独の対立がエスカレートしている。 同プロジェクトは、アメリカによる制裁ですでに去年から大幅に滞っていたが、今年6月の初め、米上院議会に、さらに厳しい制裁のための新法案が提出されたという。アメリカが大金を使ってNATOに参加しているのは、ヨーロッパをロシアの軍事的脅威から守るという意味合いが大きい。なのに、肝心のドイツが、ロシアとのプロジェクトを拡大しようとしているのだから、アメリカが頭に来るのも無理はない。 しかも、このパイプラインが軌道に乗れば、ヨーロッパのエネルギーのロシア依存が決定的になる。ちなみに、ドイツの天然ガス輸入のロシアシェアは、すでに50%を超えている。 ところがドイツ人は都合の悪いことはたいてい聞

11月9日にドナルド・トランプ氏が米大統領選挙で勝利した時、各国首脳は外交儀礼に基づいて同氏に祝いの言葉を贈った。ドイツのアンゲラ・メルケル首相、そして日本の安倍晋三首相が発表した祝辞は、トランプ氏に対する両国の態度の違いを浮き彫りにした。 安倍首相が当たり障りのない表面的な祝辞を送ったのに対し、メルケル首相は祝辞の中にトランプ氏に対する「毒矢」を埋め込んだ。トランプに示した協力の「条件」 メルケル首相は祝辞の中で、まるで学校の教師が生徒を教え諭すように、ドイツが重んじる価値を並べ上げた。「ドイツにとって、EU以外の国の中で、米国ほど共通の価値によって緊密に結ばれている国はありません。その共通の価値とは、民主主義、自由、権利の尊重、全ての個人の尊厳を重んじることです。人権と尊厳は、出身地、肌の色、宗教、性別、性的な嗜好、政治思想を問うことなく守られなくてはなりません」。 メルケル首相がこ

ドイツに殺到していのは難民だけじゃない…アメリカからの留学生が激増している理由ドイツと言えば難民が殺到したニュースが記憶に新しいですが、殺到しているのは難民だけではありません。 現在、ドイツで急激に増えているのがアメリカから来る留学生です。 いったい何が起きているかと言うと、アメリカのあまりに高額な学費に魅力を感じない学生が、ドイツに流れてきているのです。 Why American Students Are Flocking to Germany 現在、約1万人ものアメリカの学生がドイツの大学に通っています。昨年との比較で9%も増えており、2008〜2009年と比べると25%も増加しているのです。 ニューヨーク州ロチェスター出身のナスターシャさんは、交換留学生として3年前にドイツに渡航し、そのまま滞在することに決めました。理由はドイツで勉強するほうがはるかに安く済むからです。 彼女はその

1933年1月、ヒトラーがヒンデンブルク大統領の任命により首相になってから、翌1934年8月、ヒンデンブルクの死と同時にあらゆる権能を掌握し、絶対的な権力者・総統となるまでの2年弱。ヒトラーとナチスの「権力掌握の総仕上げ」が成され、日常生活に潜んでいた恐怖政治の実体が一気に表面化して世を覆い尽くすこの時代を、ヒトラー政権下で初めてベルリンに赴任したアメリカ大使とその一家が残した日記や手記、膨大な文書や歴史資料をもとに再現したのが本書である。 シカゴ大学の教授で著名な歴史学者でもあるウィリアム・D・ドッドは、就任したばかりの大統領・ローズベルトから「政府に奉仕する気があるか聞きたい。ドイツに大使としていってもらいたいのだ」という電話を受ける。「ドイツでリベラルなアメリカ人の手本を示してもらいたい」と。このときすでに4ヶ月も駐独大使の席は空席だった。が、ドッド自身にとっても、周囲の人々にとって

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