ヘンリー・ジェンキンズ著、渡部宏樹、北村紗衣、阿部康人訳『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』のあとがき「YouTube時代の政治を振り返る」で言及されている動画へのリンクをまとめました。基本的にページ順に従ってYouTubeへのリンクを貼ってありますが、前半よりも後半のほうがAppleのCM、『ハリー・ポッター』などのポップカルチャー、オバマをはじめとする現代の政治家への言及もあり面白いです。 *ヘッダー画像はWalmart Watchのビデオ「Harry Potter and the Dark Lord Waldemart」より引用。 ちなみにヘンリー・ジェンキンズはここに挙げているYouTube上でのパロディという政治的実践を、それが参加型であるからといって即座に肯定しているわけではありません。この章の末尾をまず最初に引用しておきます。 「良くも悪く

フランス語・イタリア語と日本語の翻訳家・通訳者である平野暁人さんの連載「舞台芸術翻訳・通訳の世界」。ご専門の舞台芸術通訳の仕事や趣味とする短歌など、多角的な視点から翻訳・通訳、言葉、社会についての考察をお届けします。第3回は、翻訳と演劇で各人が果たす役割の比較がテーマです。 「訳者は役者」は本当か?こんにちは。翻訳家で通訳者の平野暁人と申します。 前回 は、私が舞台芸術の通訳者として第一歩を踏み出したときのことをお話ししました。 そこで今回は、「舞台芸術と翻訳」をテーマにあれこれ書いてみようと思います。 誰が言ったか、翻訳の世界には「訳者は役者」という言葉があります。 と、ここまで書いてから不安になって調べてみたら、『アンネの日記』やアガサ・クリスティーのシリーズの翻訳で有名な深町眞理子さんがご自身の座右の銘として1970年代から提唱していらっしゃるそうです *1 。 危ない危ない。危うく

フランス語・イタリア語と日本語の翻訳家・通訳者である平野暁人さんの連載「舞台芸術翻訳・通訳の世界」。ご専門の舞台芸術通訳の仕事や趣味とする短歌など、多角的な視点から翻訳・通訳、言葉、社会についての考察をお届けします。第1回は、コロナ禍により意外な 展開 を見せた「語学」の行方がテーマです。 危機的状況下で息を吹き返したものとはENGLISH JOURNAL ONLINEをお読みの皆さん、初めまして。翻訳家の平野暁人と申します。 対応言語はフランス語とイタリア語で、舞台芸術専門の通訳者としても活動しています。 突然ですが皆さん、絶滅しかかった経験はありますか? 実は私(わたくし)、このたび絶滅の瞬間に立ち会いました。正確には、絶滅を免れるまさにその瞬間に、と言った方がいいでしょう。 しかも、ずいぶん前から駄目だろうと思っていて、いよいよ時間の問題だと感じ始めたところに決定的な事件が起こって、

私的ゴールデンウィーク恒例企画である「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」だが、2011年に始まったこの企画も遂に10回目を迎えてしまった(過去回は「洋書紹介特集」というタグから辿れます)。 昨年、「おそらくは来年10回目はなく、今回で最後になるのではないか」と書いたが、結局それからの一年も本ブログにおいて結構な数の洋書を紹介したので、またできてしまうこととなった。 しかし、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のプロモーションも実質終わっているので、つまりは本ブログの更新もめったにはなくなり、よってこの企画も今回で終わりである。ちょうど10回、キリが良い。 今回は34冊というかなりのボリュームになった。洋書を紹介しても誰も買わないので、アフィリエイト収入にはまったくつながらないのだが、誰かの何かしらの参考になればと思う。 実は既に邦訳が出てい

最後まで読んだので前回に引き続いて『自閉症の世界』の翻訳についてです。 結論から言えば、原文はズタズタ、翻訳はボロボロで、即刻回収して全訳版をだしてほしいほどひどいです。 自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実 (ブルーバックス) 作者: スティーブ・シルバーマン,正高信男,入口真夕子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/17 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 全体としては、こんな感じです。 章 カット 誤訳 序章 原型をとどめないほど 多い 1章~5章 そこそこ 多い 6章 とても多い 商品として成立しないほど 7章~9章 少ない 少ない 10章~11章 とても多い そこそこ 12章 少ない 少ない カットは、数段落をまとめて削除しているところもあれば、一段落削除してあるところもあります。段落の最後の一文だけとか、()の中を削除してある(だいたい

スティーブ・シルバーマン『自閉症の世界』(正高信男・入口真夕子訳 講談社ブルーバックス)が刊行されました。この本の原書"NeuroTribes"は、欧米では数々の賞を受賞した話題作なのですが、翻訳は全訳ではありません。これは訳者あとがきにも書いてあるとおりです。 カット部分が最も大きいのは序章で、おそらく1/10くらいに縮められています。内容も大きく変わっているため、章題も変わっています。訳書では「自閉症は増えているか」ですが、原書では"Beyond the Geek Syndrome"、「ギーク症候群を超えて」というタイトルで、シリコンバレーの話や、著者が本書を書くに至ったきっかけなどが書かれています(Perl開発者であるラリー・ウォールの話もカットされた部分に出てくるんですが、エピグラムはそのままなので意味がわからなくなってます)。 巻末の謝辞や参考文献一覧も割愛されてます。謝辞はとも


アメリカ映画の登場人物はスターバックスを嫌い、コール・オブ・デューティで遊び、日本車の悪口を言う。それらが吹替版に反映されることは少ない。この画像のセリフも吹替版だと「チェーン店」になっている。これはイギリス映画だけど。 ワシが吹き替えたろか? 「字幕と吹替、どっちがいいかは?」はよくある話だけど、俺は圧倒的に字幕派だ。最近『ミニオンズ』の吹替版をしょうがなく観に行った。宣伝でネタバレしているとはいえボカして書くけど、劇中出てくる少年の声優がこの人だった。シリーズ映画だから再登板しただけなんだけど、この人は60年代の英米を舞台にした映画の雰囲気にビタイチたりとも合ってなかった。芸能人吹替のせいで映画が完全にブチ壊しになっていた。 字幕で消耗してます 今回のエントリは最近話題になった「まだ字幕で消耗しているの? 吹き替えは楽だぞぉ。」の反論エントリだ。potatostudio.hatenab

塩尻公明さんの悲劇 岩波文庫版ジョン・スチュアート・ミル著『自由論』(原題:"On Liberty")のあとがきに、岩波書店の吉野源三郎がこんなことを書いている。 一九三八年ごろ、三木清、栗田賢三両氏と私とで相談して、岩波文庫に収録すべき哲学関係の文献のリストを作ったことがある。ミルの『自由論』もその中に入っていた。そして、その訳者としては河合栄治郎氏が最も適任だということは、私たち三人だけでなく、当時何人も認めるところであった。 吉野源三郎「あとがき」*1 J.S.ミル『自由論 (岩波文庫)』(塩尻公明、木村健康共訳)*2 吉野は河合栄治郎に学んだことがあり、河合もこの依頼を受諾。しかし自由主義者であった河合が軍部と対立して、いろいろあった結果休職処分となり(平賀粛学)、さらに出版法違反で起訴され法廷闘争を繰り広げることとなるにより『自由論』の翻訳どころではなくなってしまう。けっきょく河

ブログ用にデータ抽出。 ※ http://b.hatena.ne.jp/entry/textt.net/islecape/20100811141543/4 岩波白帯を約100冊調べて、10冊ほどに「遅れた」おわびがあった。あと気になった文章いくつか。あとがきもいろいろ読み比べたりすると面白い。多くの人が本をあとがきから読むし。 ロック「市民政府論」白7ー7 訳者:鵜飼信成 1968年11月16日 第1刷発行 1983年4月10日 第17刷発行 >> 訳者が、本書の翻訳を志したのは昭和一三年(一九三八年)、京城帝国大学在職中で、当時京城におられた清宮四郎、尾崎朝雄などの諸教授に指導を受け、訳稿は一おうできていたが、その後、種々の事情から刊行の運びにいたらなかった。昭和一八年(一九四三年)、二年の軍務を終えて研究室に帰ってきた後、大多数はすでに出征して残り少なくなった学生諸君と、演習でこの本を
Harry Potter in ancientGreek There's a translation of this page into Polish available here. Harry Potter and the Philosopher's Stone "It's an ideal job for an oldbloke in retirement." Peter Needham, translator of HP into Latin. EssentialsGreek - English Vocabulary forGreek Harry Potter.It's not complete, but should help you get started with theGreektext. Many thanks to Mark Wutka for sugges

このコーナーでは,さまざまな分野で活躍されている方をゲストに迎え,3回にわたってお話をうかがいます。 今回は,アメリカ文学研究者・翻訳家の柴田元幸さんにご登場いただきました。柴田さんには,小社発行の雑誌『飛ぶ教室 第8号』(2007年冬号)特集のゲストエディターをしていただいたこともあります。翻訳するとはどういうことか,教育者として何を大切にしているかといったことについてお聞きしました。 僕は,大学の英文科に行き,大学院へ進みました。そうすると,その後,選びうる進路は,大学で英語や英文学を教えることに絞られてくるわけで,それで大学の教師になりました。そのうち,英文学の専門家であるということから,翻訳がらみの仕事の依頼が来るようになり,それを器用にこなしているうちにこうなったという,まあ,成り行きみたいなものですね(笑)。 中学生の頃から,英語は好きで得意な教科でした。ただ,英文和訳の模範
考えてみればこの企画をやるのも4回目なんやね(2011年、2012年、2013年)。今年もやらせてもらう。 例年この更新を行うとともにゴールデンウィークに入り、しばらく更新を休んでいたが、今年の場合ワタシにはゴールデンウィークがなかったので、少し時期がずれてしまった。 それではおよそ20冊どうぞ。ワタシの調べが知らず、既に邦訳が出ていたら教えてください(邦訳が出るよ、という情報も歓迎)。 Joe Kutner『The Healthy Programmer: Get Fit, Feel Better, and Keep Coding』 健全なコードは健全な肉体に宿る?プログラマー向け健康本が出る - YAMDAS現更新履歴 これは絶対プログラマに受ける話題だと思うのだが、フィジカルに関わるものなので、本の内容がアメリカ人仕様に最適化されすぎていると、日本人には当てはまらない話になってしまう

──2016年9月時点でのメッセージ── このブログは、スペイン映画『アラトリステ』の誤訳を指摘するために、2009年に公開されました。誤訳を隠そうとする悪質な人物がいたのです。 2015年9月に主演のヴィゴ・モーテンセンの協力によって一応の決着がつきました。ヴィゴは、私たちのメッセージに応え、「誤訳があった」と雑誌で発言して下さったのです。 しかし、妨害は未だに収まりません。その為に、一連の経緯を説明する目的で当時のまま残されています。 ──概要── 2006年制作のスペイン映画『アラトリステ』(主演ヴィゴ・モーテンセン)は、日本では2008年に公開されました。剣の達人でありながら、一介の貧しい傭兵として生きたアラトリステの冒険と悲哀に満ちた後半生を、17世紀の史実を交えて描いた歴史大作です。アラトリステと恋人の女優マリアに、時のスペイン国王フェリペ4世が絡む恋物語も、作品全体を通して描

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