日本人の本の「読む量」は減っていない。「買う量」が減っている。『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』... 2024年4月に刊行された三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(『なぜはた』)は30万部以上のベストセラーになった。『なぜはた』では日本人は働きすぎで、新自由主義的な価値観(自己責任論など)を内面化しているせいで読書量が減っている、と分析して多くの人の共感を呼んだ。 しかし同書が破格の部数を叩き出し、「あそこに書かれている内容が正しい」と思われてしまうことは、出版業界の課題解決につながらない。筆者にはそうした危機感がある。 それが「本を売る」こととどうつながるかといえば、誤った現状認識の上に施策を組み立てても効果が薄いからである。 とはいえ、問題は『なぜはた』だけにあるのではない。『なぜはた』は出版業界をめぐる議論の「よくある」誤りを踏まえている部分が多いからだ。 ※なお

2024年の自民党総裁選で選択的夫婦別姓制度の導入が争点となったのは記憶に新しい。一方、25年の総裁選では各候補者とも導入には慎重な姿勢を示し、表立った議論はなかった。 選択的夫婦別姓を巡る議論では、推進派は「個人の尊厳や自由」を、反対(保守)派は「伝統的な家族観が壊れる」などとそれぞれ主張し、お互いの価値観がぶつかり合う。ただし、双方の主張は、時に「利便性」で語られたり、史実に基づかない「感情論的側面」が強く、本質的な議論がなされているとはいえない。『21世紀家族へ』(ゆうひかく選書)の著書があり、家族社会学、歴史社会学が専門の京都産業大学・落合恵美子教授は、こうした現状に警鐘を鳴らす。浮かんでは消える夫婦別姓を巡る議論を〝政争の具〟にしてはならない。日本人は、歴史から何を見つめ直すべきなのか、今一度考えるべきだ。(小誌編集部) 日本の選択的夫婦別姓の歴史的背景を振り返るのがこの論考の趣

最近、SNSで「令和人文主義」なるフレーズを目にすることが増えた。 聞き慣れない言葉であり、気になって検索したところ、まずたどり着いたのがこの記事だった。 この記事では、令和人文主義を、古い世代の教養主義や倫理主義と断絶した、若者たちによる、主に会社員をターゲットとした、知識を使った軽いエンターテイメントコンテンツと考えている。この世代は、学問的探究心や社会正義といったものに関心はなく、ただ娯楽としての知に価値を置いており、楽しければよいというのである。 この記事を読んで大変驚いた。というのも、私は記事中で令和人文主義の例として挙げられている「コテンラジオ」「ゆる◯◯ラジオ」はそれなりに聴いたことがあるし、「QuizKnock」のコンテンツそれなりに視聴したことがあるが、こうしたコンテンツは、上述した「令和人文主義」の定義に当てはまらないからだ(なお、よく名前が挙げられている三宅香帆氏の本

3 December 20251 December 2025 by Wadakuramon, 日本のウィキメディアン、司書。本名は門倉百合子。『70歳のウィキペディアン』の著者。Wikimedians of Japan User Group 今年の「ウィキメディア・ワールドin図書館総合展2025」では、対面でのフォーラムの他に、11月に6回のオンラインフォーラムを実施し、6人のウィキメディアンからウィキメディアに関する様々な話題を提供していただきました。 WikiConferenceSeoul 2025 登壇&参加報告 トップバッターは11月11日のNarumi.SBTさん(Wikimedians of Japan User Group)で、先日韓国で開催されたWikiConference Soul 2025にEugeneOrmandyさんと共に登壇された内容や、カンファレンスの様子

『果てしなきスカーレット』を観た。 細田守云々を抜きにしても激クソにつまらない映画であり、業界人がかろうじて擁護している映像美的な部分も近年の人気作品(指輪とゲースロとマッドマックスとアナ雪とエルデンリング)の寄せ集めでしかなく陳腐極まりなかったのだが、それは俺個人の感想で、別に他人が褒めようが貶そうがどうでもよい。はっきりいって細田守と見れば何でも叩こうとする今のネット環境のほうが異常だ。むしろ、今細田作品を擁護しようとするほうが勇気ある人間だと言っていいだろう。 そう思い、SNSでは感想を控えてきた。 が、そのSNSで見てしまったのである。 「『果てしなきスカーレット』がわからないやつはシェイクスピアという古典がわからないやつだ」とほざいているスカ褒めポストを。 はあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜????????????? おまえ、『ハムレット』観たことある? 誰の訳でもい


NEWSLETTERS ARTnews JAPAN is a trademark of Art Media, LLC. ©2022 Art Media, LLC. All rights reserved. Published under license from Art Media, LLC, a subsidiary of Penske Media Corporation. 1840年代からの第一波フェミニズムに始まり、1960年代と70年代の第二波フェミニズムやフェミニストアート運動、そしてインターセクショナリティ(*1)に目配りをした今日に至るまで、フェミニズム運動は連綿と続いてきた。そして、それと並行するように、アメリカの女性アーティストたちは後々まで影響を及ぼす印象深い作品を生み出している。以下、美術史に残る15点の作品を見ていこう。 *1 インターセクショナリティ(交差性)と
『ピル承認秘話 わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)』(薬事日報社)を出版した、産婦人科医の北村邦夫さん。承認にこぎつけるためにどんな戦略で動いたか、今だから言えることを明かします。

BBC Culture polled book critics outside the UK, to give an outsider’s perspective on the best in British literature. What does the rest of the world see as the greatest British novels? In search of a collective critical assessment, BBC Culture contributor Jane Ciabattari polled 82 book critics, from Australia to Zimbabwe – but none from the UK. This list includes no nonfiction, no plays, no narrat

大阪市淀川区の北のほとり、下町の歓楽地・十三(じゅうそう)にあるグランド・キャバレー「グランドサロン十三」。1969(昭和44)年創業当時の豪華絢爛な空間を維持したまま営業を続ける、貴重なキャバレーだ。 この店に勤める現役ホステスたちと、50年近く通い続ける常連客・藤井基義は、キャバレーの趨勢をどう見ているのか。そしてなぜ、今なおキャバレーという箱に身を置き続けているのだろうか。まずは藤井に、率直な疑問を投げかけた。

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