369回 『陰謀論と排外主義』という今読むべき本 今まで選挙に興味を示したことすらなかった知人と久しぶりに会ったら、参政党に投票していたという体験をして頭を抱えたくなった人も多いかもしれない。 Xで相互フォロワーだった人がそれまで政治的な投稿をしていなかったのにいつのころからか、河合ゆうすけやへずまりゅうをRPしていることに気付いて驚いたことのある人もいるだろう。 直接の知り合いではないがSNS上でよく見かける同じ趣味を持っているアカウントが平野雨龍のことを「日本を救う逸材」であると褒めたたえていたり、さとうさおりを応援しているのに気付いてしまった人もいるかもしれない。 好きなアーティストのライブの後にアーティストの名前で検索してみたら、奈良公園の鹿や中国人留学生について何やら義憤にかられた発言をしている人が同じ会場にいたことを知るという経験をした人もいるだろう。 いや、これを読んで「それ

第2次トランプ政権立ち上がり後の民主党「無策の1年」、あるいは民主党「戦犯探しの1年」を彩るのは、3冊の暴露本である。NBC記者ジョナサン・アレンと議会専門紙「ヒル」の記者エイミー・パーネスによる2024年大統領選挙の記録Fight: Inside the Wildest Battle for the White House(2025年4月1、そしてCNNアンカーで政治記者のタッパーと「アクシオス」記者のトンプソンによるOriginal Sin: President Biden’s Decline,Its Cover-Up, and His Disastrous Choice to Run Again(2025年5月)2、さらにカマラ・ハリス自身による107 DAYS(2025年9月)3である。これらの3冊は、回顧録を鋭意作成中のバイデンのレガシーに水を差しただけでなく、民主党を嘆きと愚

戦後八十年を契機にして、「なぜ日本は戦争をしたのか」という問いが改めて話題になっている。各界の俊英を集めた対米戦争シミュレーションで「必敗」という結論まで得ながら、当時の政府と軍部は開戦を決断した。従来の仮説では、米国の経済制裁によって、日本は資源確保に行き詰まり、数年で苦境に陥ると考えられていた。そのため低い勝算であっても対米戦に活路を見出さざるを得なかった、というわけだ。 つまり日本の損失を回避するために、時の権力者たちはみんなで危ない橋を渡ることに賭けた、というのだ。この非合理ともいえる賭けに国民の多くが巻き込まれ、数多の人命が失われた。だが当時はマスコミの扇動もあり、国民の多くもその決断を支持したではないか、とされている。みんなで危ない橋を渡ったのだから、日本国民全体が責任を負うべきだ、という極論までこの通説は地続きである。 だが本書の見解は違う。なによりも経済的要因から戦争をみて

こちらは筆者が聞きながらツイッター(X)で書き起こしたもののまとめです。正確に一字一句書きとったというよりは、家族や友人に「こんなことを石破首相がしゃべっているよ」と話すなら、このように適宜いいかえる、という要約・補足になっている部分が多数あります。ご容赦ください。 *閣議決定を経ることができず、実際には戦後80年「所感」です。 公開された原文と実際のスピーチがかなり違い、アドリブがあったようなので、まとめておきます。また筆者のXの投稿からも少し改めています。参考図書や参考リンクも適宜お入れしました。 詳しく知りたい方はぜひ首相の原文をご参照ください。 丸山眞男とシビリアンコントロール石破首相は冒頭から、文民統制の話をしている。歴史の授業のような印象がある。 大正デモクラシーから開戦までを丹念にふりかえっていく。まず、大正時代には、元老(=武力行使ということをリアリティをもって知っている)

明日は参議院議員選挙か…… 毎回、選挙の前になると憂鬱だ。こうしてブログとかを書いて、他者に読まれる(とはいっても、そんなに大勢ではないけれど)ことを思えば、投票には行く。少なくとも「行った」と書く。 「選挙は民主主義を支える大事なシステム!」「あなたの一票が世の中を変える!」とか言っておくべきなのかもしれないが、実際に投票するとなると、「この党がいい!」というよりは「ああ、どの党もなんか僕が嫌いな候補者がいるなあ、この人また出てくるのかよ……この元気とやる気と権力欲ばっかりの人たちの誰かに『清き一票』を投じなければならないのか……」と憂鬱になる。 投票したら、この人、あるいはこの党を「支持した」ことになるんだよなあ、とかなんとか。 あとで、僕はこの人を「支持」してしまったのか、と思いたくない…… 名前を挙げるのはよろしくないのかもしれないが、自民党がYouTubeに「実はやってる、自民党

HOME ニュースリリース 2025年 米国政府による不適法なUSスチール買収禁止命令に反対する共同声明 ~日本製鉄とUSスチールは法的権利を守るためのあらゆる措置を検討中~ 2025/01/03 日本製鉄株式会社 日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)とUnited States Steel Corporation(以下、USスチール)は、日本製鉄によるUSスチールの買収(以下、本買収)について、本日2025年1月3日、バイデン大統領が禁止命令を下したことに対して、以下のステイトメントを公表いたします。 日本製鉄とUSスチールは、バイデン大統領が、本買収に対して禁止命令を決定したことに失望しています。この決定は、バイデン大統領の政治的な思惑のためになされたものであり、米国憲法上の適正手続き及び対米外国投資委員会(以下、CFIUS)を規律する法令に明らかに違反しています。大統領の声明と禁止命令

早川書房はトマ・ピケティ&マイケル・サンデル『平等について、いま話したいこと』(原題 Equality: WhatIt Means and WhyIt Matters)を2025年1月17日に緊急刊行します! 両氏の著作の入門にもなる一冊、絶賛予約受付中です(四六判上製、本体価格2,000円)。 『平等について、いま話したいこと』(早川書房) 内容紹介資本主義の果て、大いなる格差に覆われる現代。教育やヘルスケアを「脱商品化」するには? 左派はなぜ世界的に弱体化したのか? 大学入試や議会選挙にくじ引きを導入すべき? 当代きっての経済学者と政治哲学者が、「平等」という問いをめぐって徹底的に議論する。 ■ピケティとサンデルの対談がついに実現『21世紀の資本』をはじめとする数々の著作で、詳細な歴史分析により「富の集中」の問題を明らかにしてきたトマ・ピケティ。現代における正義を問い、近年は特に「

エリート過剰生産が国家を滅ぼす 作者:ピーター ターチン早川書房Amazonこの『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』は、もともとカブトムシやチョウといった生き物の個体群動態について研究して生計を立ててきた研究者が、複雑系科学のアプローチを人間社会の研究に応用していった結果をまとめた一冊になる。 この著者らが切り開いた分野は「クリオダイナミクス」(歴史動力学)と呼ばれ、人類史に繰り返し現れるパターンが存在することを発見し、どのような条件が揃うとあるパターン(たとえば、国家の崩壊など)が発生するのか──を歴史の定量分析を通して研究している。「エリート過剰生産が国家を滅ぼす」はたとえ話や主観的な主張ではなく、彼らの研究を通して見えてきた「国家が滅びに向かう」具体的な要因なのだ。 二〇一〇年、各分野の専門家が今後一〇年の展望を予想するという科学誌『ネイチャー』の特集で、私はつぎのように明言した。米国

「ダメだよ。保険証廃止は」デジタル庁幹部は断言していた マイナ一本化になぜ転換?協議の記録がない不可解

イスラエル 人類史上最もやっかいな問題 作者:ダニエル ソカッチNHK出版Amazon2023年の10月7日に勃発した、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃。本件については今なお目まぐるしく状況が動いていて日々ニュースが絶えないが、その背景には複雑な歴史や思想があって素人が理解するのは容易ではない。Web記事なども多数読んだが、まとまった情報がほしい時はやはり書籍に限る。 いくつか読んだが、中でもイスラエルの民主主義を達成させるためのNGO、「新イスラエル基金」のCEOの著者ダニエル・ソカッチによる『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』は今年(2023年)の2月に刊行されたばかりのノンフィクションで、現在の事態をフラットに、かといって事実を列挙するだけではない形でイスラエルーパレスチナ間の問題を説明していて、特におすすめの一冊だったので紹介したい。 著者は本書を、ある特定の

独裁者の料理人:厨房から覗いた政権の舞台裏と食卓 作者:ヴィトルト・シャブウォフスキ白水社Amazonこの『独裁者の料理人』は、その書名通りの一冊である。カンボジアのポル・ポト。イラクのサダム・フセイン。ウガンダの大統領イディ・アミン。アルバニアの首相エンヴェル・ホッジャ。キューバのフィデル・カストロ──。そうした独裁者と呼ばれることもある彼らにかつて仕えた料理人らにインタビューを行い、彼らが何を食べ、何を好み、どのようなコミュニケーションをとってきたのかをまとめている。 最初はそんなに期待しないで読み始めたのだけど、これが大変におもしろい! 独裁者は常に暗殺に怯えるものだが、この世でもっとも使い古されてきた暗殺手段の一つは「毒殺」だ。もちろんそんなことは独裁者側だってわかっているから、毒味役もいるし成分検査が行われることだってある。とはいえ、だから料理人が誰であってもいいという話にはなら

だれが「天皇」を作ったのか おれは前に、易姓革命の対象にならない、中国の皇帝とも違う、ほかの国の「王」とも違う、「神格化された天皇」についての本を三冊読み、その感想を書いた。 古代日本と天皇の起源に興味を持ったので、いろいろ調べてみた。 そこで松本健一がこんなことを述べていた。 日本の古代国家において、そういう虚構をつくりあげた人物(もしくは組織)があったことは、たしかである(現在の私は、その人物が天武であり、その協力者が藤原不比等だったのではないか、と考えている)。 『「孟子」の革命思想と日本』 そう、天皇の神話というものは自然発生的に生まれたものではないだろう。自然発生したところがあったとしても、それをまとめた『日本書紀』の編さんにおいては、その時の権力者による希望が反映されていないわけがない、そう思った。 で、だれなんだ? とか思いながら、古代日本あたりの本を読んでいて、こんなタイト

はじめに 総評とちょっとした心配電子書籍でも出ているのは大変ありがたい本書全体の特徴:平易な文章と具体性 スルーされるのではという心配 鈴木氏の姿勢と社会への投げかけ おわりに はじめに 鈴木エイト著『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』を読み終えたので簡単な感想を記しておきます。通勤時間に少しずつ読んだので思ったより読了まで時間がかかってしまいました。自民党の統一教会汚染 追跡3000日 作者:鈴木エイト小学館Amazon 私自身は宗教、政治や法といったトピック、分野についてはほとんど素人ですので、その辺りにもっと詳しい人々や専門家の評価、議論、批判等を(もっと)読んでみたいと考えており、この記事がそのきっかけの1つになったりしないかなという淡い期待があります。 なお、ここからごちゃごちゃ書いていきますが、興味のある方は(この先は読まずに)まず買って読み始めることをおすすめします

テレビ朝日で統一教会報道がタブーに!『モーニングショー』放送差し替え、ネット動画を削除! 圧力を囁かれる政治家の名前 安倍晋三・元首相の銃撃事件をきっかけに大きな問題となっている、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着。当初は教団名すら報じなかった新聞やテレビだが、TBSの『報道特集』『news23』や読売テレビの『情報ライブ ミヤネ屋』を筆頭に、この問題を追及する大きな流れが生まれている。 ところが、である。これだけ盛り上がりを見せているなかで、統一教会と政治家の癒着問題にほとんど触れようとしないテレビ局がある。NHKとフジテレビ、そしてテレビ朝日だ。 政権忖度が常態化しているNHKとフジにかんしてはさもありなんという感じだが、異常なのがテレビ朝日だ。 気がついたら、同局では、『報道ステーション』などのニュース番組からも、『羽鳥慎一モーニングショー』のようなワイドショーからも
「その悩み、○○学ではすでに解決しています」みたいなタイトルの本を見かけることがある。あなたが日々の仕事で直面する悩みや課題は、すでに最新の学説や理論で解決済みですよ、というわけだ。 だが本当にそうだろうか。最新の学説や理論を応用すれば、世の中の問題はたちどころに解決するものだろうか。 著者は政治学を専門とする大学教授である。「話すも涙、聞くも大笑いの人生の諸々の事情」があって、47歳にして人の親となった。小学校のママ友やパパ友のほとんどは干支一回り以上年下だ。そんなママ友からある日「相談があります」と呼び出され、いきなりこんなお願いをされた。 「来年、PTA会長になってくれませんか?」 まさに青天の霹靂だ。驚いた著者は必死に出来ない理由を並べ立てる。「フルタイム・ワーカー」だから無理!「理屈っぽくて、短気で、いたずらにデカいジジイ」だから無理!ところがママ友は決してあきらめず、最後は情に
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