漂流老人ホームレス社会 [著]森川すいめい 新宿西口にずらりと並ぶ段ボールハウスが話題になった時期があった。都内の大きな公園に、ブルーシートをテントのように使って暮らす人々がいた。公園から排除された後は、河川敷などで暮らしている人を見かける。なかには互いに助け合い、電化製品も使いこなして自由な生活をしている人もいるらしい。しかし、本書でとりあげられているのは、孤立し、もっとも弱い立場にいる人々だ。認知症、アルコール依存症、知的障がい、統合失調症……。自分の状態が把握できなくなっている人々に声をかけ、医療や福祉の現場に結びつけ、どこでどんなふうに暮らしたいかという、人間として当たり前の希望を口にできるように辛抱強く促していく。本書は、池袋でそのような活動をしているNPOの代表者が、活動の実態と、あるべき支援の形を伝えるために記したものだ。 統計上は、ホームレスの数は減っているのだという。しか

14日、81歳で亡くなったロナルド・ドウォーキンは現代の法哲学・政治哲学界に屹立(きつりつ)する巨人である。革新的かつ論争的なスタイルで英米圏のリベラルな思潮を主導し、合衆国最高裁の動向にも大きな影響を与えた。 アイザイア・バーリンやジョン・ロールズ等のリベラリズムの主流は、価値の多元性を強調し、多様な世界観の公平な共存を提唱する。これに対してドウォーキンは、価値の世界は全体として整合していると言う。自由と平等、社会生活の道徳と個人的倫理とは衝突しない。何が責任ある態度か、何が正しい政策か、すばらしい人生とは何かは、すべて矛盾なく支え合っている。人が自分の生を意味あるものとして生きるには、すべての価値は統一された姿で捉えられなければならない。 1977年に出版された最初の論文集『権利論』は、支配的思想であった法実証主義と功利主義を根底的レベルで批判した。法実証主義によれば、法は社会的事実で

昨年12月の衆院選岡山2区の選挙を無効とした26日の広島高裁岡山支部判決の要旨は次の通り。◆主文 12年12月16日に行われた衆院選岡山2区の選挙を無効とする。◆投票価値の平等 国政選挙における投票価値の平等は、国民主権・代表民主制の原理及び法の下の平等の原則から、憲法の要求するところである。 選挙制度をどのような仕組みにするかについて憲法は国会に裁量を認めているが、投票価値の平等は最も重要な基準とされるべきである。投票価値の平等に反する選挙に関する定めは、合理的理由がない限り、憲法に違反し無効というべきだ。◆区割り規定の合憲性 本件区割り規定に基づいて施行された09年選挙の無効請求訴訟において、11年最高裁大法廷判決は、1人別枠方式は遅くとも09年選挙時に合理性が失われ、投票価値の平等の要求に反する状態に至っており、本件選挙区割りについても投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判
昨年12月の衆院選広島1区と2区の選挙を無効とした25日の広島高裁判決の要旨は次の通り。 ◆主文 12年12月施行の衆院選広島1区・2区の選挙を無効とする。その効果は、13年11月26日の経過後に発生する。 ◆区割り規定の合憲性 11年3月の最高裁大法廷判決は、前回選挙(09年8月施行衆院選)の区割り基準中の1人別枠方式や1人別枠方式を前提とする区割りについて、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとの判断を示した。12年12月の本件選挙までの間に、1人別枠方式は廃止されたが、1人別枠方式を前提とする区割り規定は是正されなかった。 選挙制度の仕組みについては、国会に広範な裁量が認められており、是正は一般的に複雑かつ困難で、国会での十分な検討が必要で相応の期間を要する。11年3月11日以降、国会が国難というべき東日本大震災の対応に追われており、通常の場合と比較して、ある
結婚していない男女の間に生まれた非嫡出子(婚外子)について遺産の相続分を嫡出子の半分と定めた民法の規定が、法の下の平等を保障した憲法に違反するかが争われた2件の家事審判の特別抗告審で、最高裁第1小法廷(金築=かねつき=誠志裁判長)は27日、審理を大法廷(裁判長・竹崎博允=ひろのぶ=長官)に回付した。大法廷へは、違憲判断や判例変更を行う場合などに回付されるため、最高裁が平成7年に規定を「合憲」とした判断が見直される可能性がある。 民法900条4号は「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とする」と定めている。この規定について7年の大法廷決定は「民法は法律婚主義を採用しており、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とした規定が著しく不合理で、立法の裁量判断の限界を超えているとはいえない」とした。 審理が回付されたのは、13年7月に死亡した東京都内の男性の遺産分割をめぐる審判と、
終戦後、日本国憲法のうち男女平等をうたった条項などの起草に関わった、アメリカ人女性、ベアテ・シロタ・ゴードンさんが、30日、ニューヨークで亡くなりました。 89歳でした。 ベアテ・シロタ・ゴードンさんは、国際的なピアニストだった父親のレオ・シロタ氏が日本に招かれ、音楽を教えたのに伴って、1929年から10年間、日本で暮らしました。 その後、アメリカの大学に進み、終戦直後の1945年、GHQ=連合国軍総司令部で通訳や翻訳の仕事に携わりました。 そして、翌46年、まだ22歳の若さながら、日本国憲法のうち男女平等をうたう第24条など人権に関する条項の起草に関わりました。 ゴードンさんは、憲法が公布されたあとアメリカに戻り、ニューヨークの「ジャパン・ソサエティ-」に勤め、日米の文化交流に尽くしたほか、時折日本で講演を行うなどして、憲法の平和理念の重要性を訴えました。 ゴードンさんの親族がニューヨー
イギリスのウィリアム王子の妻キャサリン妃の第1子妊娠が明らかになり、イギリスでは祝賀ムードが広がっている。そんななか、英連邦はかねてから検討してきた王位継承を男女平等にするための法改正を進めることを発表した。 王位継承法が改正されれば、ウィリアム王子とキャサリン妃に生まれる子供は性別にかかわらず、チャールズ皇太子とウィリアム王子に次いで第3位の継承順位となる。 「時代遅れのしきたりを21世紀にふさわしいものにするべく、政府は王位継承法の法改正を近いうちに提案する」と、ニック・クレッグ副首相は発言した。「昨年合意した改正案を法制化するだろう。つまり、もしもウィリアム王子とキャサリン妃の第1子が女の子だった場合、その後に弟が誕生しようと、彼女が女王になれるということだ」 法改正では、カトリック教徒と婚姻している者は王位継承から除外される、との決まりも廃止される可能性もあるという。 すでに英連邦
女性だけ離婚後6カ月間の再婚を禁止する民法の規定は、法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、岡山県総社市の女性が国に165万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、岡山地裁は18日、請求を棄却した。原告側は控訴する方針。 世森亮次裁判官は、再婚禁止期間を定めた民法733条の規定について「父性推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争を未然に防ぐことにある」と指摘。「立法目的には合理性があり、憲法に違反するものではない」と述べた。 女性は2008年3月、前夫と離婚。現在の夫との再婚まで6カ月待つ必要があり、精神的苦痛を受けたと主張した。「男性には再婚禁止期間がなく差別だ」として国家賠償法上違法と訴えたが、同裁判官は「違法の評価を受けるものではない」と退けた。 女性は09年、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する同法772条の規定に基づき出生届を受理しなかったのは違憲として国賠提訴
再検討 教育機会の平等 [編]宮寺晃夫 自由化、多様化などの教育改革で、教育機会の不平等と学力格差の拡大が進んでいるといわれる。平等の回復を求める声は強いが、そもそもなぜ平等でなければならないのか、「不平等」と「多様化」「個性」はどう違うのかまでを考える論文集。 個性化教育を格差拡大と結びつける言説があるが、社会学者の森直人は、格差を解決するためにこそ個性化教育を実践する小学校を紹介する。障害児と健常児の「共生・共育」を求めてきた篠原睦治は「教育機会の平等」論が分離教育につながりかねない、と警戒する。広田照幸は「能力は正確に測れる」という前提自体に疑問を投げかける。政治学、経済学など様々な視点から焦点を当てる。 ◇ 岩波書店・3675円

ジョージ・オーウェル『一九八四年』を28年ぶりに再読 - kojitakenの日記 の続き。 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/07/18メディア: ペーパーバック購入: 38人 クリック: 329回この商品を含むブログ (350件) を見る ジョージ・オーウェルの『1984年』を初めて読んだ1984年当時は、冷戦時代の末期だった。この小説がアメリカで反共プロパガンダに利用されていることは知っていたので、そういう色眼鏡で読んだのは確かだ。 当時を覚えている私が隔世の感を抱くのは、今や『1984年』を右翼が「反共」の観点からこの小説を引用する機会がぐんと減ったことだ。代わって、「左」側からの全体主義批判に援用される機会が増えているように思われる。 一例として、今年3月16日の『しんぶん赤旗』のコ

先日、「ニート・不登校・ひきこもり NEXT VISION FORUM」というイベントに参加させていただきました。以下は、その際にお話しするために用意していた原稿に、後から手を加えたものです。当日は想定していたようには早口でしゃべることができなかったので、かなり割愛しなければなりませんでした。 さきほど「バランス」ということが話題になりましたが、僕は今日バランスを取るつもりはありません。せっかく呼んでいただいたのですから、可能な限りの極論を申し上げるつもりです。バランスを求める方は、各自で取ってください。ニート・ひきこもりが本当に存在するのか、いるとしてもそれは一般に抱かれているようなネガティブなイメージが当てはまるような人たちなのか、ということが争われています。しかし、これは果たして実りのある論争なのか、いささか疑問をもっています。 そもそも、ニートに限らず、あらゆる集合的カテゴリー、
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