岩波新書編集部のXアカウントにて、6月7日に「新書がもっと若者に流行ったらいいな、と常日頃から思っている。」というポストがされたところ、講談社ブルーバックスのアカウントが「じつは、ブルーバックスも新書です。日本で三番目に長い歴史を持つ新書レーベルです。」とリポスト。すると、二番目に長い歴史を持つ新書レーベルの中公新書のアカウントが「我ら三レーベル、生まれし日、時は違えども、新書の契りを結びしからは、心を同じくして助け合い、幅広い読者に本を届けん」と応答した。一連のポストは新書ファンの間で大いに話題となり、総リポスト数が5000、総インプレッション数が200万に届くほどの注目を集めた。 岩波新書は1938年、中公新書は1962年、ブルーバックスは1963年に創刊された新書レーベルで、それぞれの特色を活かしながら、現在もヒット作を生み出し続けている。今回のXのポストでは、お互いを意識しているこ

明日は参議院議員選挙か…… 毎回、選挙の前になると憂鬱だ。こうしてブログとかを書いて、他者に読まれる(とはいっても、そんなに大勢ではないけれど)ことを思えば、投票には行く。少なくとも「行った」と書く。 「選挙は民主主義を支える大事なシステム!」「あなたの一票が世の中を変える!」とか言っておくべきなのかもしれないが、実際に投票するとなると、「この党がいい!」というよりは「ああ、どの党もなんか僕が嫌いな候補者がいるなあ、この人また出てくるのかよ……この元気とやる気と権力欲ばっかりの人たちの誰かに『清き一票』を投じなければならないのか……」と憂鬱になる。 投票したら、この人、あるいはこの党を「支持した」ことになるんだよなあ、とかなんとか。 あとで、僕はこの人を「支持」してしまったのか、と思いたくない…… 名前を挙げるのはよろしくないのかもしれないが、自民党がYouTubeに「実はやってる、自民党

税の本質は略奪だ。 こん棒を手にしてた昔よりは洗練されてはいるものの、「ある人から奪い、ない人からも奪う」という本質は変わらない。こん棒が別の呼び名になり、略奪システムが巧妙になっているだけ。本書の前半を読むと、様々な試行錯誤と権力闘争の元に、人類の英知を結集し進化してきたものが、現代の税制だということが分かる(不完全じゃんというツッコミ上等。それは人類が不完全である証左なり)。 一方、脱税は多角的な側面を持つ。 上に政策あれば下に対策あり。税回避は、国家の略奪への対抗手段ともいえる。あるいは、政府よりも最適な資源配分をするための経済合理性を追求する行為だ。あるいは、法の抜け穴やグレーゾーンを見出し、そこで資源を最大化する戦略的なゲームだ。本書の後半を読むと、貧民から富豪まで、創意工夫を尽くして進化してきたものが、税回避のいたちごっこであることが分かる(これは人類の歴史が続く限り続く)。

NEXUS 情報の人類史 上 人間のネットワーク 作者:ユヴァル・ノア・ハラリ河出書房新社Amazonこの『NEXUS』は、ホモ・サピエンスが世界を支配しているのは、特別に賢いからではなく「虚構」を操作し大勢で柔軟に協力できる唯一の種であると示した人類史本『サピエンス全史』で一躍有名になったユヴァル・ノア・ハラリの六年ぶりの大作ノンフィクションだ。今回のテーマは、副題にも入っているように「情報」になる(メインのNEXUSはつながりとか絆を意味する単語だが、その意味はのちにわかる)。 われわれはDNAからブラックホールまで、あらゆるものについて膨大な情報を獲得し、積み上げてきたにもかかわらずどうして世はこんなにもままならないのか? いまだに戦争も貧困も根絶することはできない。長期的にみたら世界は平和になっていることも示されているが、少なくとも短期的には著しい落ち込みを示すこともある。 私たち

昔から「良いポピュラー経済学本のリストを教えてよ」と求められることがある。方程式でいっぱいの教科書じゃなくて、素人でも読める本を教えてほしいということだ。これはもっともな質問だが、私は長年答えるのをサボってきた。だが今回こそは答えよう。理由は2つある。 まず、数週間後に日本語での本『ウィーブが日本を救うーー日本大好きエコノミストの経済論』の出版が控えている 。これは日本経済をテーマにした本だ(日本語版に続いて英語版も出る予定)。 それと、現在私は英語での最初の単著に取り掛かっている。これはマクロ経済学がテーマになりそうだ。そういうわけで、既に出ているポピュラー経済学本を見てみて、どうすれば自分がそこに付加価値を加えられるか考えた方がいいと思ったのだ。 もう1つの理由は、サム・エンライト(Sam Enright)の面白い発言を見かけたからだ。 思うに、「アンチ・リーディング」リストの方が価値

課税と脱税の経済史――古今の(悪)知恵で学ぶ租税理論 みすず書房Amazon税金は基本的にあらゆる人々の生活に関わり、その行動に影響を与える。たとえば消費税がいついつから上がるとなればその前までに駆け込み需要が発生するものだし、タバコ税が上がればこれを機会にタバコをやめようという人も現れる。 17世紀のイングランドでは窓の数に応じて課税される「窓税」があったのだが(なぜなら窓がたくさんある家に住んでいる人は裕福だと思われていたので)、窓の個数に応じて課税額が変わったので、人々は自宅の窓を塞いでまわった。理不尽な税金が課せられた時、国家を転覆させるほどの暴動に発展することも珍しいことではない本書『課税と脱税の経済史』は、こうした課税者側と、税金をなんとか逃れようとしてきた人々の歴史を紐解き、「公平な」課税方法は存在するのか。未来の課税方法はどのようなものでありえるのか。「真の課税負担者」は

1. 『数字であそぼ。』絹田村子 著 2. 『数学ガール』結城浩 著 3. 『新体系・高校数学の教科書』芳沢光雄 著 4. 『美しい幾何学』、Eli Maor、Eugen Jost 著、高木隆司 監訳、稲葉芳成ほか 訳 5. 『数学で生命の謎を解く』 イアン・スチュアート 著、水谷淳 訳 1冊目は、『数字であそぼ。』のご紹介。数学の面白さと恐ろしさの両方を、爆笑しながらいっぺんに学べる。 ▲『数字であそぼ。』絹田村子 著、小学館 主人公は頭を抱えている横辺くん。天賦の才能を持っており、一度読んだだけで中身を完璧に覚えることができる。フォトグラフィックメモリーという能力で、写真記憶や映像記憶というやつだ。 教科書や参考書を完璧に覚えていられるから、テストはいつも100点満点で、天才とも神童とも呼ばれ、西の雄である吉田大学(絵面はどう見ても京都大学)に一発合格する。 そんな彼がなぜ頭を抱えてい

ひと口に本といっても小説やエッセイ、ノンフィクション、ビジネス書、実用書などなど、いろいろありますが、お気に入りの一冊に出会えたときの喜びや充実した読後感は、本ならではの醍醐味ではないでしょうか。 日頃、たくさんの本を読んでいる編集部が、自腹で買ってよかった!と実感するおすすめの本を3冊紹介します。気になるものがあったら、チェックしてみてくださいね。 👇気になる書名をタップでジャンプできます 『怪獣保護協会』ジョン スコルジー(訳:内田昌之) 『ほったらかし投資術』山崎元、水瀬ケンイチ 『面白すぎて時間を忘れる雑草のふしぎ』稲垣栄洋 『怪獣保護協会』ジョン スコルジー(訳:内田昌之) 私たちがいる世界とは異なる「並行宇宙の地球」に怪獣が住んでいて、主人公はそんな怪獣たちを保護、観察する組織に参加することになり……という、荒唐無稽 of 荒唐無稽な設定にワクワクが止まりません。こんな、とん

「法の人類史」 [著]フェルナンダ・ピリー 法は、社会秩序を守る上で欠かせないとされている。では、それはどこから生まれたのか。古代ローマから近代ヨーロッパに至る法の支配の歴史は有名だが、西洋以外でも様々な社会が法を作ってきた。本書は、従来の西洋中心的な見方を改め、法の世界史を展望する。本書によれば、今日の法にはメソポタミア、インド、中国という3つの源流があった。何かと特別視されがちなローマ法は、実はメソポタミアの伝統に属する多様な法の1つであり、ユダヤやイスラムの法と同系統に属する。また、法が支配者を縛るのもローマ法の専売特許ではない。インドではヒンドゥーの法を司(つかさど)るバラモンが王の権力に制限を加えた。中国のように、皇帝は法に縛られないとするモデルは、むしろ例外なのだ。 さらに本書は、法には実用的な目的だけでなく、社会のビジョンを提示する役割もあると指摘する。例えば、ハンムラピ法

フジテレビの日枝久という人がいて、どうやら資本関係的には全然オーナーでもないのにすごい権力を握っているらしい(ホリエモンの買収を阻止するべく暗躍したのもこの人らしい)…という話は聞いた事ある人も多いんですが、一体何者で、どういう理由でそんなすごい権力を持っているのか?とかは知らない人も多いと思うんですよね。 で、フジテレビのこの問題に対する 『決定版』 と言ってもいいぐらいすごい本があるんで、それを紹介したいんですよ。 メディアの支配者(講談社文庫) 中川一徳 この本、フジテレビの歴史についてものすごくものすごく詳細にわかると同時に、とにかく単純に「面白い」ので、本当にオススメです。 この問題の「当事者w」の一人といっても過言ではない堀江貴文さんが、Newspicksの動画で特番みたいなのを組んでましたが… この動画で堀江さんや後藤さんをはじめとする出演者の人たちですら「これってどうしてこ

酒を主食とする人々 作者:高野秀行本の雑誌社Amazonこの『酒を主食とする人々』は、数々の冒険・探検ノンフィクション(だけじゃないが)を世に送り出してきた高野秀行の最新刊だ。今回のテーマは、エチオピア南部に存在す、朝・昼・晩酒を飲んで──というか「食べて」暮らし、それ以外のものはほとんど食べないし飲まないという、酒を主食とする人々についての調査・探検である。 この酒を主食とする人々については、砂野唯による『酒を食べる』という先行書がある。砂野氏は10年以上この土地に通って調査を行っており、京都大学大学院で学び、博士号を取得した本職の生態人類学者である。その本によれば、エチオピア南部のデラシャという民族は栄養の大部分をパルショータと呼ばれる酒から得ていて、アルコール度数にして3〜4%くらいのこの酒を一日5リットルも飲むのだという。 それを読んだ高野さんは、実際に自分もデラシャの酒飲み生活を

10/30 皆さまアザーーーーーーーーーーッス!!!! お陰でほしいものリストが50冊以上増えました 感涙です😭😭😭泣 ______________________ 当方30才社会人である。今年に入って、 「完全なる経営」エ-ブラハム・ハロルド・マズロ- (著), 単行本 – 2001/11/30 という書籍を読んだ。昔気質の経営哲学の内容だと思っていたが、神レベルの良書だった。 「マネジメント」「経営者の条件」などドラッカーの名著にも匹敵する。 若い頃から本好きだったけど、こんなレベルの本を読み逃してたと思うと慚愧に耐えない気分である。 よろしければ、皆さんにとってもバイブル本があれば是非教えていただきたい。 密林で検索して、よさそうであれば購入しようと思ってる。

エリート過剰生産が国家を滅ぼす 作者:ピーター ターチン早川書房Amazonこの『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』は、もともとカブトムシやチョウといった生き物の個体群動態について研究して生計を立ててきた研究者が、複雑系科学のアプローチを人間社会の研究に応用していった結果をまとめた一冊になる。 この著者らが切り開いた分野は「クリオダイナミクス」(歴史動力学)と呼ばれ、人類史に繰り返し現れるパターンが存在することを発見し、どのような条件が揃うとあるパターン(たとえば、国家の崩壊など)が発生するのか──を歴史の定量分析を通して研究している。「エリート過剰生産が国家を滅ぼす」はたとえ話や主観的な主張ではなく、彼らの研究を通して見えてきた「国家が滅びに向かう」具体的な要因なのだ。 二〇一〇年、各分野の専門家が今後一〇年の展望を予想するという科学誌『ネイチャー』の特集で、私はつぎのように明言した。米国

中国共産党の秘密主義は国家機密の定義が非常に曖昧かつ広範なのが特徴だ[2024年3月5日、北京で開幕した全人代で政府報告を聞く習近平総書記=中国・北京](C)XC2000/shutterstock.com 「あいつはバカだからさ」 こうしたストレートな習近平総書記批判を耳にする機会が増えた。コロナ対策では爆発的な感染拡大が起きた後、もう止められないと“誰もが”わかっていたはずなのに、何カ月もゼロコロナ対策に固執した。あるいは足元の不動産危機と経済低迷では大規模な景気対策が必要だと“誰もが”わかっていたはずなのに小出しの対策で時間を浪費してしまった……となると、悪態の一つもつきたくなるのだろう。 しかし、熾烈な権力闘争を勝ち抜いて中国のトップの座を勝ち取った人物が本当に「バカ」なのだろうか。 もう少し、もっともらしい説明を持ち出すならば、「独裁者のジレンマ」という話になろうか。強力な権力を持

山本健人(Takehito Yamamoto, 外科医けいゆう) @keiyou30 消化器外科専門医|MD, PhD|京都大学消化管外科 Kyoto University| #colorectalsurgery in Japan, @surgery81261 @JSS1896 SoMe-WG|大腸がん|『すばらしい人体』19万部超など著書多数|けいゆうは娘と息子の名前から|講演・取材ご依頼はこちら↓ keiyouwhite.com/linktree 山本健人(Takehito Yamamoto, 外科医けいゆう) @keiyou30 日本語には、例えば「コーコー」と読む熟語が40以上あり、これを会話中に識別する神業を日本人は瞬時にやってのける。 同音異義語がやけに多いのは「日本語の音節が約100しかない(英語は3000以上)=日本人が口から出せる音の種類が少ない」ため仕方ないのだが、この

8月10日土曜日、とうとう危惧していたことが、現実になってしまった。 一人のお客様が、レジのところに来られ、 「先月7月29日に、お願いしていた本、入ってますか?」と言って尋ねて来られたのだ。 注文帳をめくると、7月29日の欄に「正体」染井為人著・光文社発刊 1冊と、スタッフTの字で書かれていた。光文社さんから取次への搬入日は、「7/31」と書かれている。 7/31から、今日8/10となると、取次で10日も止まっていることになる。 8/6 か、7日の時点で、本屋として、取次へ、未入荷の連絡するなりのチェックを、していれば、何とか間に合わすことができたのかも知れない。 その後のお客様とのやりとりは、こうだ。 お客様 「こちらのスタッフさんが、一週間ぐらいで入ると言ったから注文したのに...、入らないのなら最初からそう言って下されば......。」 店主 「いえいえ、7/31取次搬入なら、遅

2011年7月15日にオープンしたノンフィクション書評サイトHONZ。本日2024年7月15日をもちまして13年間のサイト運営に終止符を打つこととなりました。 2011年の東日本大震災から、記憶に新しいコロナ禍まで。はたまたFacebookの時代からChatGPTの到来まで。その間に紹介してきた記事の総数は6105本。 発売3ヶ月以内の新刊ノンフィクションという条件のもと、数々のおすすめ本を紹介する中で、様々な出会いに恵まれました。信じられないような登場人物たち、それを軽やかなエンターテイメントのように伝える著者の方たち、その裏側で悪戦苦闘を繰り広げていたであろう版元や翻訳者の皆さま。さらに読者へ届ける取次会社や書店員の皆さま、そしてHONZを愛してくださったすべての皆さま、本当にありがとうございました。 サイトを閉じることになった理由に、明快なものは特にありません。こんなサイトがあったら
TweetPocket あなたは今、ITエンジニアとして入社して3ヶ月が経過し、これから本格的にプログラミングを学ぼうとしている段階ではないでしょうか。 実はプログラミングを習得するためには、プログラミング自体の知識だけでは十分ではありません。抽象化のスキル、プロジェクトマネジメントのスキル、コミュニケーションスキルなど、多様なスキルが必要です。 私たちはこれまで約24年間にわたり開発を携わってきました。約500名のエンジニアと共にしてきました。そのなかでも新卒研修を共にしてきたエンジニアは100名にのぼります。 私たちよりももっと大きな経験豊富で素晴らしい研修を提供されている会社はあるかもしれません。でも、私たちは私たちなりに新卒エンジニアにとって素晴らしい研修を追求し続けてきた自負があります。 そこで今回は、そんな私たちの経験を踏まえて、入社3ヶ月の新卒エンジニアを対象に、プログラミ
もうすぐ絶滅するというリアルの書店に寄せて(下) この記事は、海外文学の世界を渉猟するためのガイドマップとなることを目指している。 後編である本稿では、各出版社/各種レーベルの解説記事を載せている。なお、いずれも書き手の強い独断と偏見で書いているため、異なる意見もあるかもしれない。また、取捨選択をして書いているため、網羅性はない。そのあたりはぜひご容赦いただきたい。 前編には海外文学にまつわる基本情報を書いているので、そちらも併せてお読みいただきたい。 岩波書店 重版出来 言わずと知れた老舗出版社。我が国の「文庫」の創始者である。海外文学に関しては、「文庫書下ろし」*1が多いが、現代文学作品がまれに単行本で刊行されることもある。 出版社URL:https://www.iwanami.co.jp/ 直販サイト:なし(出版社サイトから注文は可) 岩波文庫 帯*2の色でジャンル分けをしており、白

清原達郎氏が「唯一、お金を払う価値がある」と断言するのは『会社四季報』(撮影/野口博)投資熱が高まるなか、企業の経営状況や株価など投資情報へのニーズも増している。昨今は個人投資家向けの有料情報サイトが乱立しているが、個人資産800億円という伝説の投資家・清原達郎氏は「本当に必要な有料情報源は『会社四季報』のみ。あとは企業ホームページのIR(Investor Relations)情報だけで十分」と指摘する。では清原氏は会社四季報とIRをどう読み解いているのか。独自メソッドを初公開する。 「株価情報の収集にお金をかける必要はない」──そう断ずる清原氏。かつてヘッジファンド・タワー投資顧問の運用部長として旗艦ファンドを立ち上げ、2005年に発表された最後の高額納税者番付でサラリーマンとして初の1位(納税額37億円)に輝いた伝説の投資家である。 清原氏は、2018年に咽頭がんの手術で声帯を失い、

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