2024年、私たちは自然界の驚異的な一幕を目撃することになるでしょう。アメリカ合衆国では今年、13年と17年のサイクルを持つ2種類の周期ゼミ( 学名:Magicicada spp .)が同時に羽化すると考えられています。 素数周期で大量発生するセミは「素数セミ」と呼ばれしばしば話題になりますが、2024年に予想される素数セミの出現数は羽化周期が重なるせいで「1兆匹」以上に達する可能性があるとのこと。 同じ現象が最後に起こったのは今から200年以上前の1803年でした。 以前の大量発生時の記録によれば、セミの抜け殻や死骸が雪のように地面に降り積もり「除雪」ならぬ「除セミ」しなければ人や馬車が移動できなかったとされています。 次にこの現象が起こるのは2245年と予想されており、今現在生きているひとにとって、おそらくこれが唯一の機会となるでしょう。 今回はそんな素数ゼミたちの不思議に焦点をあて

食べられることで版図を拡大する昆虫が日本にいたようです。 神戸大学大学院 理学研究科チームはこのほど、枝そっくりの飛べない虫「ナナフシモドキ」(以下ナナフシ)が鳥に食べられることで、卵を日本全国に長距離拡散している証拠を発見しました。 もちろんナナフシ自身は死んでしまうものの、体内にあった卵が無傷のまま排泄され、新天地で孵化するという。 ナナフシにとって自らの死は始まりに過ぎないのです。 研究の詳細は、2023年10月11日付で科学雑誌『Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences』に掲載されています。 飛べない昆虫「ナナフシ」の長距離分散の痕跡を遺伝解析で発見 ~鳥の摂食による移動は頻繁に起こっていた!?~ https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2023_1

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 染色体分配研究チームの三品 達平 基礎科学特別研究員(研究当時、現 客員研究員)、京都大学 生態学研究センターの佐藤 拓哉 准教授、国立台湾大学の邱 名鍾 助教、大阪医科薬科大学 医学部の橋口 康之 講師(研究当時)、神戸大学 理学研究科の佐倉 緑 准教授、岡田 龍一 学術研究員、東京農業大学 農学部の佐々木 剛 教授、福井県立大学 海洋生物資源学部の武島 弘彦 客員研究員らの国際共同研究グループは、ハリガネムシのゲノムにカマキリ由来と考えられる大量の遺伝子を発見し、この大規模な遺伝子水平伝播[1]がハリガネムシによるカマキリの行動改変(宿主操作[2])の成立に関与している可能性を示しました。本研究成果は、寄生生物が系統的に大きく異なる宿主の行動をなぜ操作できるのかという謎を分子レベルで解明することに貢献すると期待されます。 自然界では、寄生

前例のない猛暑を受け、アリゾナ州各地でミツバチが死ぬケースが増加している/ Cricket Aldridg (CNN) 猛烈な暑さに見舞われている米アリゾナ州でミツバチが死ぬケースが増え、昆虫学者の間で懸念が強まっている。ミツバチは生態系に必要不可欠な種で、特に食料生産に果たす役割が大きい。 同州フェニックスでは6月30日から7月30日にかけて31日連続で気温が43.3度を突破。全米の都市で観測史上最も暑い1カ月となった。 前例のない猛暑を受け、アリゾナ州各地のミツバチ専門家から警鐘を鳴らす声が上がっている。 アリゾナ大学の昆虫学者シャク・ナイル氏はCNNの取材に、「ミツバチは約45度までなら採餌行動を行うことができる。7月は45度を超える日が多かったため、ミツバチには大きな打撃だ」と指摘する。 フェニックスを拠点にする養蜂家クリケット・アルドリッジ氏は「ミツバチの巣が溶けている」「餌不足

by DavidGood 夏の風物詩ともいえるセミの羽には、触れたバクテリアを殺してしまう強力な抗菌作用があります。アメリカのストーニーブルック大学とオークリッジ国立研究所の研究者らが、スーパーコンピューターを用いてセミの羽の微細構造の働きを明らかにし、細菌を破壊して自然に自己洗浄するメカニズムを突き止めたことを報告しました。 Structure-Based Design of Dual Bactericidal and Bacteria-Releasing Nanosurfaces | ACS Applied Materials & Interfaces https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.2c18121 Scientists use ORNL’s Summit supercomputer to learn how cicada wings

6月23日、国立感染症研究所は国内初、そして世界初となる「オズウイルス感染症」の症例を報告しました。 オズウイルス感染症とは、どのような感染症なのでしょうか? オズウイルスとは?オズウイルスはオルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に属するウイルスです。 このウイルスが見つかったのは比較的最近のことであり、2018年に愛媛県のタカサゴキララマダニというマダニからオズウイルスが見つかったことが報告されています。なお、このオズウイルスは現時点では日本以外の国では見つかっていません。 オズウイルスは、アメリカで報告されている重症のマダニ媒介感染症であるバーボンウイルスなどと近縁のウイルスであり、マウスに感染させると重症化することが分かっていました。 また、この後行われた疫学調査では、山口県、和歌山県、三重県、大分県、岐阜県、千葉県のイノシシ、サル、シカなどの動物がこのオズウイルスの抗体を持っている

虫が光に引き寄せられる理由がついに判明!虫が光に引き寄せられる理由がついに判明! /Credit:Canva . ナゾロジー編集部多くの人々にとって、街灯や勉強机の明かりに虫たちが集まっている風景は身近なものでしょう。 夏場のコンビニの軒先など設置されている害虫駆除装置も光に誘引される虫たちの性質を利用したものであり、近づいてくる虫たちに「バチッ」という音とともに電撃を与え感電死させるものとなっています。 ただなぜ虫たちが光に集まるのか、その根源的な理由については謎となっていました。 たとえば有名な4つの仮説(①~④)をみてみると ①「虫には光に向かって飛ぶ走性があるとする説」に対しては先に述べた通り、そもそも虫には近場の光源に直接向かうような行動がほとんどみられず多くは垂直に直交するような飛び方をします。 ②「月の光を頼りに航行してるところを人工光源によって混乱したとする説」は長らく最

この書籍で一通りデマに対する回答を書いたかなと一息ついていましたが、東大の伊東乾教授が酷い記事を書いていると話題になっていました。面倒ですが、一つ一つ見てきましょう。東大教授も専門外のことですと無茶苦茶な記事をよく書きます。肩書に騙されてはいけません。(優秀な教官はそもそも専門外の記事書かないと思いますが) 「先に結論を記してしまうと、本稿は『理系の観点から』『やや否定的』な見解を、根拠とともに示したいと思います。」と話が始まるのですが、残念ながら、理系のロジックも科学的根拠もなく、ただの話題のコオロギに便乗したお気持ち表明記事になっています。根拠も主張も雑なので、非常に読みにくいです。 (記事内容) まず、動物の分類上の話から、昆虫とエビ・カニなどの甲殻類が近縁であると述べています。そこから何故かゴキブリが料理に入った例えが出てきます。コオロギやゴキブリ、そしてエビ・カニなどがゲノムが似
さて、前のNOTEでも書きましたが、実のところ、私は昆虫食自体に対しては大変好意的です。イナゴを食べたこともあるし、スズメバチの巣を駆除がてら、幼虫を炒めて食べたこともあります。ナッツみたいに美味しくて、あ!これは食べたがる人いるはずだわ!って思いました。 が、近年の持ち上げ方やビジネスとしての昆虫食にはかなり首をかしげています。 特に、食糧危機と絡めたやつは、腑に落ちない。理由は簡単で、そもそも食糧増産に必要なのは、農地の拡大や、肥料による収穫量の増大であって、コオロギではないからです。 コオロギは動物です。だから、カロリーを作り出すことが出来ない。栄養素を変換することはできますが、結局は与える餌に依存します。効率の面では有利ですが、結局の所、畜産物が抱えている問題点を解決できるわけではありません。 だから、変な話だな……と思っていました。我々の場合だと、休耕田や休耕地を再開したほうがず

ヨーロッパに広く生息するセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)は驚くほど広範な認知能力を備えており、それには遊びを楽しむ能力も含まれている。(ALAMY) 「遊ぶ」動物は人間だけではない。ペットを飼っている人なら、ネコやイヌが遊んでいるのをよく知っているし、科学者は、魚やカエル、トカゲ、鳥にも遊びと言える行動を観察してきた。 では昆虫はどうなのだろう? 昆虫の心や生活は、遊びをする余地があるほど豊かなのだろうか? 動物行動学の専門誌「Animal Behaviour」に10月19日付けで発表された論文によると、マルハナバチは、訓練を受けなくても報酬を与えられなくても、木製のボールを転がして遊ぶという。理由はおそらく、それが単に楽しいからだ。 「この研究は、ハチが刺激に反応するだけの小さなロボットではなく、自分が楽しいと思う活動をしていることを明らかにするものです」と
郡司芽久(キリン研究者) @AnatomyGiraffe 「クモの巣は帯電していて、+に帯電した昆虫が近づくと巣の方から近寄ってくる(クモの巣は単に昆虫がくるのを待ち伏せるものではなく、変形して昆虫を捕えに行く網である)」という論文を教えてもらい、あまりの面白さに衝撃を受け、下敷きで蜘蛛の巣を変形させに行った時の動画が発掘された。 pic.twitter.com/3jpRmcpf4K2022-07-22 20:05:00 リンク Nature Spiderweb deformation induced by electrostatically charged insects - ScientificReports Capture success of spider webs has been associated with their microstructure, ornamenta

家庭菜園や花壇では益虫とされるミミズだが、北米の多くの森林など、本来ミミズが生息していなかった土地では、在来動物に意外な悪影響を及ぼしている。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN DALTON, MINDEN PICTURES) 2021年の暮れに亡くなった生物学者のエドワード・O・ウィルソン氏は、かつて昆虫のことを「世界を回している小さな者たち」と呼んだ。だが、この5年間、昆虫の激減を示す報告が集まっており、今後をめぐる議論が盛んに交わされている。激減の主な原因とされているのは、生息地の破壊、殺虫剤の過剰な使用、そして気候変動だ。(参考記事:「農業の毒性が48倍に、『沈黙の春』再び? 研究」) だが3月30日付けで学術誌「Biology Letters」に掲載された論文が、少なくとも北米の広範囲における、もうひとりの意外な容疑者を指摘した。それはミミズだ。 この研究では、カナダの
チョウの仲間の「ゴマダラチョウ」の幼虫は、角のような突起を使って、天敵のハチから身を守っていることが分かったと、近畿大学などのグループが公表し、生物の巧みな進化の結果が分かる事例だとしています。 チョウの幼虫は、種類によってさまざまな色や形態があり、日本に広く分布する「ゴマダラチョウ」の幼虫は頭に角のような硬い突起が2本ありますが、何のためにあるのかよく分かっていませんでした。 近畿大学の香取郁夫准教授などの研究グループは、屋外でゴマダラチョウの幼虫を観察したところ、主な天敵はハチの仲間の「アシナガバチ」で、捕食するために背後から覆いかぶさるようにして、首に相当する幼虫の頭の後ろ側の急所にかみつき、攻撃をしていたということです。 そこで、この幼虫と天敵のアシナガバチを同じ空間に入れて実験したところ、幼虫は角のような突起でハチの攻撃を防ぎ、80%がハチを追い払うことができたということです。

令和3年10月12日 国際農研 モーリタニア国立サバクトビバッタ防除センター フランス国際農業開発センター モロッコ国立サバクトビバッタ防除センター サバクトビバッタの特異な繁殖行動を解明 ― 農薬使用量の減少に繋がる効率的な防除が可能に ― 国際農研は、モーリタニア国立サバクトビバッタ防除センター、フランス国際農業開発センター、モロッコ国立サバクトビバッタ防除センターと共同で、野外においてこれまで不明だったサバクトビバッタ(以下、バッタ)成虫の交尾と産卵行動を明らかにしました。 サハラ砂漠で野外調査を行った結果、性成熟したバッタの成虫は、雌雄どちらかに性比が偏った集団を形成していました。メスに性比が偏った集団では、ほとんどのメスは卵巣発達中で、交尾していませんでした。一方、オスに性比が偏った集団では、メスは産卵直前の大きな卵を持っており、ほとんどが交尾していました。詳しく調査したところ、

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