きのうからはじまった某所での連載の次々回くらいの原稿の元ネタとして『モラル・トライブズ:共存の道徳哲学へ』を借りて読み直しているうちに、図書館からお怒りの電話が来てしまった。 しかし『モラル・トライブズ』は細部まで刺激と啓発に満ちたおもしろい本であるので、原稿に使わないであろう部分についても、こちらにてメモ的に記録・紹介しておこう。 …生物学的適応である以上、道徳は《私たち》を《私》より優先させる装置としてだけでなく、《私たち》を《彼ら》より優先させる装置として進化した。 …(中略)…奇妙に思える第二の点は、道徳が《彼ら》を打ち負かすための装置であることだ。まるで道徳が「無道徳」か「不道徳」でさえあるように思える。しかし、どうしてこんなことがありうるのか? (p.32-33) 『モラル・トライブズ』では、全編にわたっていわゆる「進化論的暴露論法」が行われている。一見すると正しく素晴らしいと
哲学入門書 『哲学のすすめ』岩崎武雄(講談社現代新書) 現代社会での日常や仕事の実生活の中で哲学を知ることの意味、プラクティカルな科学的知識との関係と対比における哲学の価値である原理的な価値判断、現代の無反省な生活の中で忘れられたただの快楽ではない主体的な幸福の必要性、といった哲学の根本的だが実践的で高度な問題を平易な文章で提示し哲学者たちの議論を用いて説明する。すべての人に勧めることができる哲学の入門書であり、1966年の出版から増版が続いている講談社現代新書の発行部数ランキング10位のベストセラーである。哲学の価値と意義を真摯に説く、最も優れた本物の良き啓蒙書・「啓発書」。 われわれの生活を規定する人生観において問題となる価値判断は、まさにこの原理的な価値判断です。それは。われわれがいかなる生き方をすべきか、ということを決定する根本的な価値判断だからです。したがってそれは科学から導くこ
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