本エッセイは、アドヴェントカレンダー「言語学な人々」の記事として公開しているものである。 (2025/2/21 追記:Xの#国際母語デーで紹介するために、加筆しています) 私はフィールド言語学者である。消滅の危機に瀕した少数言語を対象に、現地調査を行いながらその言語の全体像を記述・分析・記録保存していくことを専門にしている。特に専門にしているのは琉球諸語、その中でも宮古語の、さらにその中でも伊良部島の言葉であり、2008年に博士論文として総合的記述文法を完成させ、2018年にその和訳・改訂版を出版した。 伊良部島方言は私の母語ではなく、父方の親族の言語である。私は伊良部島方言の話者である父、沖縄語(本島中南部の)の話者である母の間に生まれた。これらの言語はお互いの意思疎通ができないほど言語差があるため、家庭では地域共通語(後述するウチナーヤマトグチ)が使われていた。地域共通語が使われていた

地震予知は害悪ですらある「地震は予知できない」――著書を通じて、あるいは学会の場で情報発信を続ける人がいる。 ロバート・ゲラー東京大学理学系教授。専門は地球物理学で、地震は地球の内部構造を理解する一分野として研究してきたが、「予知できる」という前提のもと、国から年間平均で約100億円の予算を獲得してきた「地震村」のなかで、そう発言し続けるゲラー氏は、「異端の人」である。 だが、異端が正論であることが、今回も裏付けられた。熊本地震を予測、警告を発した学者は皆無。しかも政府の地震調査研究推進本部が公開した全国地震動予測地図(ハザードマップ)では、「30年以内に震度6弱以上の揺れ」が起きる確率は8%で、横浜市の78%、千葉市の73%、高知市の70%などと比べると、極端に低かった。 いうまでもないが、正論が判明したところで、喜べる話ではない。ゲラー氏が率直に話す。 「熊本地震が起きてしまい、多くの

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