日本人の本の「読む量」は減っていない。「買う量」が減っている。『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』... 2024年4月に刊行された三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(『なぜはた』)は30万部以上のベストセラーになった。『なぜはた』では日本人は働きすぎで、新自由主義的な価値観(自己責任論など)を内面化しているせいで読書量が減っている、と分析して多くの人の共感を呼んだ。 しかし同書が破格の部数を叩き出し、「あそこに書かれている内容が正しい」と思われてしまうことは、出版業界の課題解決につながらない。筆者にはそうした危機感がある。 それが「本を売る」こととどうつながるかといえば、誤った現状認識の上に施策を組み立てても効果が薄いからである。 とはいえ、問題は『なぜはた』だけにあるのではない。『なぜはた』は出版業界をめぐる議論の「よくある」誤りを踏まえている部分が多いからだ。 ※なお

高級車のルーフ上に白木に細やかな彫金が施された社(やしろ)がのった宮型霊柩(れいきゅう)車=東京都新宿区の東礼自動車車庫、森下香枝撮影 寺社建築を模した「屋形」が施された宮型霊柩(れいきゅう)車が、令和の今は姿を消しつつある。 【写真】宮型霊柩車の内部。畳が敷かれ、棺の滑り止めもついている=東京都新宿区、森下香枝撮影 全国霊柩自動車協会(東京)によると、2003年には全国で2千台以上の宮型霊柩車が走っていた。その後、年々減少し、昨年は220台だった。 なぜ、消滅しつつあるのか。同協会事務局部長の勝基宏さん(64)によると、宮型霊柩車のルーツは「野辺の送り」にあるという。火葬場まで、親族や地域の人が葬列を組み、故人を弔う慣習のこと。かつては棺おけを担いだり、人力車にのせて移動させたりしていたが、大正時代から霊柩車が登場し、高度経済成長期に宮型が流行した。 衰退の原因の一つに「苦情」がある。目

1. リープフロッグ現象の概要 リープフロッグ現象「リープフロッグ(Leapfrog)」は、英語の leap(跳ぶ) と frog(カエル) を組み合わせた言葉で、カエルが大きく跳ねるように、いくつもの段階を飛び越えて一気に発展することを指す。 従来、経済や社会の発展は、第1次産業(農業・鉱業など)→第2次産業(工業)→第3次産業(サービス業・IT)→第4次産業(AI・IoT)という順序を踏むと考えられてきた。しかし近年は、この階段を経ずに最先端技術やサービスを導入する現象が見られるようになっており、これが「リープフロッグ現象」と呼ばれている。 2. 注目される背景リープフロッグが注目される理由は、社会インフラが脆弱な国々においてこそ最新技術の導入が合理的であるという点にある。インドやアフリカの多くの地域では道路事情も悪く、固定電話の通信網整備には莫大なコストと時間がかかる。一方で、携帯電

ことし1月、埼玉県八潮市で下水道管の破損によるものとみられる大規模な道路陥没が発生し、トラックを運転していた男性が巻き込まれて死亡しました。 詳しい原因は調査中ですが、下水道管が原因の道路陥没は全国で年間2600件あまり(※1)。そのほとんどが老朽化によるものです。 下水道管の老朽化はどこまで広がっているのか。今回、NHKでは全国の下水道データを分析するとともに、自治体にアンケートを実施。 すると、都市部に潜む危機が見えてきました。 あなたのまちの下水道は? (「全国下水道マップ」ではお住まいの地域のデータが確認できます。) 目次 【あなたの町の下水道は?マップで確認】 【マップで見える都市部のリスク】

(フランドランの『性の歴史』の表紙が「センシティブ」ということらしいので、宮本太郎先生編著(筒井分担執筆)の『子どもが消えゆく国の転換』の表紙にしました。) 参院選前ということもあるのだろうか。少子化問題について、いろんな人が自由に考えを出しあっている。だからこそ、研究者の間である程度知られている知識を共有しておくにこしたことはないだろう。今回はまず、人類社会における長期的な出生率低下について解説する。 ▼出生率の低下は世界的現象前近代では、地域によるが、女性は平均して一生で4〜7(人)くらいの子どもを産んでいたのではないか、といわれている。それでも長い間人口がそれほど増えず、定常状態に近かったのは、死亡率が高かったからだ。結局、ネットの再生産率(純再生産率)は1前後になって、女性は平均すれば1人くらいの女性を残す、という状態が長く続いた。 現在では、いわゆる経済先進国でなくとも出生率(期

日本の科学者の社会的信頼度は68カ国中59位——。技術先進国のイメージとは裏腹に、日本における学術界と一般社会の間には、決して小さくない隔たりがある。科学的知見が社会に適切に伝わらなければ、新たな事業や社会の発展も限られていく。この課題を前に、世界的な学術出版社である、シュプリンガーネイチャー・ジャパン株式会社は、科学と日本社会を繋ぐ取り組みを推進している。コマーシャルディレクターである、大場郁子氏に展望を伺った。 シュプリンガーネイチャー・ジャパン株式会社、大場 郁子 氏 © ガビン・バフェット 日本では、科学者への信頼度が低下 発信の必要性が「わからない」という現状アメリカや中国をはじめとした先進国の産業界では、事業推進を目的とした科学者や研究者の積極的な登用が既に一般的となっているが、日本において、学術界と一般社会の間には依然隔たりがある。2025年1月に、行動科学の学術誌 Nat

息子が仕事を辞め、突然自室にひきこもりました。 再就職先を見つけましたが数日後、辞めて帰ってきました。 私は息子を怒鳴り付けました。 「お前を家に置いてはおけない。出ていけ」 息子は黙って、泣いていました。 それから19年。息子はひきこもったまま50歳になり、私は80歳が目前に。 「私が死ぬ前に、どうにかしなければ…」 そして私たちはふたたび歩みを進めることができました。 私自身が変わることで、息子が“本当の気持ち”を話してくれたからでした。 突然の退職 理由はわからず 早朝6時。 山口県に住む長谷川慎一さん(54・仮名)は仕事に出かけていきます。 慎一さんは、去年までの20年あまりのあいだ、部屋からほとんど出ないひきこもり状態でした。 ひきこもったのは、31歳の時。 首都圏の大学を卒業後、Uターンして就職した地元企業を辞めたことがきっかけでした。 誰にも相談はしませんでした。

過去最悪の被害額に上る闇バイトなどの特殊詐欺。 警告や啓発が繰り返されているにもかかわらず、なぜ闇バイトに加担する若者が後を絶たないのか? 刑務所や少年院に収監されている闇バイトの実行犯などから話を聞くと、 これまで犯罪の背景として指摘されてきた「若者の貧困」だけでなく、ある共通した傾向が浮かび上がってきました。 『自分の感情をことばにできない』 自分の気持ちを話せないことが、どうして闇バイトなどの犯罪につながるのでしょうか?

今回の道路陥没を受けて復旧に向けた検討を進めるため、埼玉県は、大学教授などで作る「復旧工法検討委員会」を設置しています。 委員長を務める日本大学の森田弘昭教授が、NHKの取材に応じ、今後の見通しについて下水道管の損傷が大きければ、完全な復旧には2、3年かかる可能性もあると指摘しました。 現場付近は硫化水素が発生しやすかった可能性 埼玉県は、道路が陥没したのは、下水道管が破損してそこに土砂が入り込み土の中に空洞ができたことが原因とみています。 破損の理由として考えられているのが硫化水素です。下水道管を流れる汚水に含まれる生ゴミなどの有機物から硫化水素が発生し、空気に触れることで硫酸となり、コンクリート製の管の腐食を引き起こします。 腐食で穴が開くと、そこに土砂が流れ込むことで、下水道管の上に空洞ができていた可能性があるということです。加えて、この地域は地下水を含む砂地のため、空洞が大きくなり

ウシジマくんだって、最後は沖縄にたどり着くわけで、あの土地は本土からは想像もつかない特殊な地場で形成されている。功罪は大きく、僕はとてもじゃないが合わない方であった。もちろん恋しい部分だって多大にあるし、観光地として最適な場所であることも理解している。日常を忘れて数日羽根を伸ばすにはうってつけでしょう。 この「闇・沖縄」ジャンルでお勧めしたい一冊がこちらだ。 『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』、なんと直球な書名でしょう! そして、沖縄人(うちなーんちゅ)は、残念ながらこれくらいストレートでないと理解しない。本書は、内地から来た大学教師の著者が、沖縄県民はみな読書を恐れ、自分の能力や知識に自信が無さすぎることへの疑問から始まる。沖縄の人間は本を読むことすら「真面目(まーめー)」であり、なおかつ、あの土地では真面目野郎と認識されると非常に生きづらくなるのだ。 そういった沖縄人(うちなーん

敷衍真理 @kagakutetsugaku 名前は「ふえんまこと」と読みます。科学と哲学が好きな朴念仁。専攻は物理学、卒業研究は近代科学史。最近は教育・倫理・政治に興味があります。いつか院進したい。 敷衍真理(旧 科学哲学たん) @kagakutetsugaku 研究するつもりなくても博士号取るような人が増えたらいいのになって呟いたら、リプで「研究者になるつもりのないやつに博士号取らせる必要はない。アカデミアのレベルを下げるだけ。」と言われ、「そういうとこだぞ」としか感想が出てこなかった。そういうとこだぞ。 2024-06-04 23:54:40 敷衍真理(旧 科学哲学たん) @kagakutetsugaku 「博士号取ったら研究者以外ありえない」という人は、教育職や官僚や政治家が博士号を持っててもなんら価値がないと思っているんでしょうかね。 「研究者になれなかった博士はみんな落ちこぼれ」

会場は日本なのに…中国国内“ライブ禁止”のロック歌手の歌を聞くためだけに多数の中国人来日し涙 日本人が知らない“中国”の一面 4月下旬から約10日間かけて、あるロック歌手のツアーが日本全国5都市で行われた。全会場でチケットが完売し、1万人もの観客が涙を流し熱狂したが、コンサート会場にいた客の大半は中国人だった。しかもわざわざこのコンサートを見るためだけに来日した人も多い。彼らはなぜ、多くの金と時間をかけ、わざわざ日本に来たのか?その答えは、彼らの視線の先で歌う1人の中国人男性の歌に込められている。その歌手は、共産党の監視の目が光る中国国内では、公の場で歌う事ができない。この事実を知る日本人は、ほとんどいない。 以下の文章は、東京大学のある中国人訪問学者が執筆し、東京大学大学院の阿古智子教授が翻訳したものを編集した記事である。 満場の観客が流した涙 数千人規模の会場は満員。そのほとんどが中国

「日本の警察はめちゃくちゃ友好的です。中国だと勝手にドアを破って入ってきますからね」2023年春に北京から東京に拠点を移したばかりの郭氏(33歳、仮名)はそう呟く。若きドキュメンタリー映画の監督だ。かつて中国には、当局の審査を受けないインディペンデント映画としてドキュメンタリーを撮った監督が、欧米で賞を獲得しスターダムに登り詰めるというキャリアパスがあった。 だが、2012年に習近平政権がスタートして以降、記録映画業界は徐々に追い詰められて行き、北京、南京、雲南にあったインディペンデント映画祭は2020年までに全て終了となった。 「言論の自由」が移住の理由に 「日本に来たのは、作品の安全のためです。私の作品は未来の人に向けたものなのです」。彼が中国で撮った歴史をテーマとする作品は全て未公開のままで、採算は取れていない。日本に来た最大の理由は、自分が苦労して作った作品をせめて守り通すこと。

中国では2023年6月、若年(16~24歳)の失業率が21.3%と過去最高を記録した。これ以降、当局は数値の公表を取りやめている。 膨大なカネと時間を注いで勉強してきたのに、結局働き口がない──そんな事態に直面した若者たちは今、実家に帰って「専業子ども」になることを選んでいる。 「フルタイムでは働かないと決めた」 何気なくSNSを見ていたティアン・イーナン(23)は、昨年の秋、心惹かれる「新しいタイプの仕事」を紹介する動画日記を見つけた。 その動画では、若い女性がエレガントなピンク色のバスローブ姿で朝を迎え、テイクアウト用の容器に入った辛口の鍋料理をのんびり口に運んでいた。午後は読書にいそしみ、夕食はテレビを見ながら赤いドラゴンフルーツと殻むきヒマワリの種をつまむ。彼女は「専業娘」を自称していた。 ティアンはそんなシンプルな生活が羨ましかった。彼女は観光マネジメントを専攻する大学生で、中国

はじめに2017年にアメリカのいわゆる落ちこぼれ男子問題に焦点を当てた記事を書きましたが(アメリカの「落ちこぼれ男子問題」は日本でも火を噴くか?)、この落ちこぼれ男子問題を放置した結果、米国でいわゆる弱者男性が生み出され続けています。 そして、この弱者男性問題を取り扱った、Of Boys and Men: Why the Modern Male Is Struggling, WhyIt Matters, and What to Do aboutItという本が昨年出版されました。Brookings研究所という、国際教育協力でも影響力が大きい、世界最大手のシンクタンクに所属する研究者が執筆しただけあり、学術的なエビデンスやデータに基づいて、なぜアメリカで弱者男性が苦境に立たされ、このイシューを解決するためにどのような対策を講じられるのかを議論していて、非常に面白いものでした。切り口は弱者男

「中華」は漢族だけのものではない。夷狄(いてき)と呼ばれた周辺民族の文化が融合し、中華は再生を繰り返してきたのである――。中国の歴史への新たな視点を示した『中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史』(松下憲一著、講談社選書メチエ)が好評だ。舞台は、五胡十六国から隋唐時代にいたる中国の「大分裂時代」。鮮卑拓跋部という遊牧集団を主人公にした本書を、中国とその周辺に生きる人々を独自の視線で見つめるルポライター・安田峰俊氏はどう読んだのか。中国では「歴史」はただの教養ではない 近ごろ、驚くことがあった。というのも、話題の一冊『中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史』を読了した際に、中国側ではこの本の主題である鮮卑・拓跋系王朝の時代がどのように受け止められているのかが気になり、すこし調べてみたのだ。 結果として判明したのは、鮮卑・拓跋の歴史をどう解釈するかが、なんと現代中国では政治的な意味を持ち得るというこ

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