はてなブックマーク経由で,学問はなんの役に立つのか,ということについて議論が盛り上がっていたのを知った.こういう話題は多くの人の興味をかき立てるようで,多数のブックマークがつけられている.こういった,学問は何の役に立つか,なぜ勉強しなければならないか,ということについては,太宰治の「正義と微笑」という小説を思い出す.やや散漫な内容になってしまうが,今回思ったことを書いてみたい. 正義と微笑は,16歳の少年が日記を付けているというような体裁をとった小説である.この小説の中で,何のために学問・勉強しなければならないかという問いについて,以下のような一節がある.主人公の「僕」たちのクラスに英語を教えている黒田先生が,退職に当たって,生徒らに以下のように話すのである. もう君たちとは逢えねえかも知れないけど,お互いに,これからうんと勉強しよう.勉強というものは,いいものだ.代数や幾何の勉強が,学校
以前,人から薦められて面白かった本について書いた(美しい星 (三島由紀夫)).今回のエントリでは,「古代国語の音韻に就いて」(橋本 進吉 (著),岩波文庫)を紹介したい. 「古代国語の音韻に就いて」は,大学に入学した年,文系の友人にすすめられて読んだ本である.大学で,本格的な学問や自由な雰囲気などを初めて経験し,全国から集る様々な個性を持った友人に刺激され,熱に浮かされたようになっていた時期だったように思う.このようなときに薦められた本であるから,印象に残っている.岩波文庫であることと,題名にある「古代国語」や「音韻」等の言葉から,大学生ともなると難しそうな本を読むものだと感心した記憶がある.一方で,薄い本であるし,大したことはないだろうという,若い頃にありがちな反発のような感情も覚えた.考えてみれば,この本を薦めてくれた友人も,私と同様,大学進学後の熱に浮かされたような状態でこの本を読み
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