Executive Summary 朝日新聞『プーチンの実像』(朝日新聞社、2015/2019) は、日本のぶら下がり取材的にプーチンが日本や自分たちと行った会見やその周辺人物のインタビューをあれこれ行っているが、明確な視点がないために、それが単なるゴシップのパパラッチに堕している。そのゴシップの価値にゲタをはかせようと、歪曲による祭りあげまで行ううえ、プーチンの軍事的な意図についてまったく触れず、このためプーチンは外国に対し、主権を持っているかとかいう抽象的な視点で判断を下しているという、ナンセンスな主張を行う。そしてそれは最終的に、日本はアメリカのイヌで主権がない、北方領土を返してほしければ日米安保を廃止して主権を回復せよ、という信じられない主張を暗に匂わせる、得たいの知れないプーチンの走狗本と化している。 ぼくも人並み以上にミーハーなので、ウクライナ侵攻が始まってから、いろいろプーチ

「ウイルス起源問題」でまた進展が新型コロナウイルスの起源に関する米議会下院・共和党の報告書を紹介した先週のコラムは幸い、多くの読者を得た。情けないのは、日本のマスコミだ。私が見た限り、この話は朝日新聞と産経新聞が小さく報じただけだった。なぜ、こうなるのか。 8月1日に発表された報告書は、多くの状況証拠を基に「ウイルスは中国の武漢ウイルス研究所から誤って流出した」と結論付けた(https://gop-foreignaffairs.house.gov/wp-content/uploads/2021/08/ORIGINS-OF-COVID-19-REPORT.pdf)。研究所からの流出説は散発的に唱えられていたが、全体像を包括的にまとめたのは、これが初めてだ。 その後、CNNが8月6日、驚くべき特ダネを報じた。「米情報機関は武漢ウイルス研究所のデータベース情報を入手し、解析を始めた」というのだ(

市川海老蔵夫人・小林麻央さんの闘病が報じられている。ずいぶんと前になるが、ある狂言師一家に密着したり、七代目市川染五郎さんら歌舞伎役者に取材した際、彼らの幼少時の稽古の厳しささながら、“梨園の妻”の大変さを教えてもらったことがある。 歌舞伎役者に嫁ぐからには命をかける覚悟がなければ務まらないと言われたほどで、だから麻央さんの回復は私も願ってやまないが、他方、海老蔵氏が要請したという取材自粛のお願いにはちょっと首を傾げているのである。 〈人の命に関わることです。よろしくお願いします。マオ本人の負担になるような撮影はやめてください〉 今月十日夜のブログに、海老蔵氏はこう綴った。そして、九日に会見を開き、麻央さんの病状を打ち明けたのは、実家周辺への取材を自粛してほしかったからだと説明する。その後も海老蔵氏は取材陣に自粛を要請する旨を綴り、十七日のお願いで自粛要請は五回を数えるに及んだとのこ

東京都知事選挙で元航空幕僚長の田母神俊雄氏(65)が得た61万票が、なお話題になっている。「ネットの影響」「若者の右翼化」とかまびすしいが、何だかふに落ちない。本当はどうなのか、これからの政治に影響しうるのか。田母神氏に投票した人の声を追いながら「田母神票が意味するもの」を考えた。 【講演会の動画では田母神節がさく裂】 「未来が見えるかどうかがすごく気になりました。脱成長って言われても『あなたたちは確かにいい時代を見てきたから、それでいいかもしれませんけどね』としらけましたね」 学習塾を経営する慶応大2年の今井美槻(みつき)さん(21)はそう話す。都知事選前、若者8人で誰に投票するか討論したら、4人が「田母神」だった。「僕らは自衛隊にも共産党にもアレルギーはない。何かおもしろいことをしてくれそうな期待感、現状維持ではダメだという思いが一番大きかった。政党や組織、既存の制度を守るために動
前回(ウォーターゲート事件のディープスロートさえ「オフレコ」取材ではなかった)書いたように、日本では意味があいまいな「オフレコ」取材が日常的に行われている。結果として、新聞紙面は匿名や仮名であふれている。 なぜなのか。新聞社は都合のいいように発言をつまみ食いするだけでなく、発言内容にも勝手に手を加えるから、怖くて実名で語れない---こんなマスコミ不信があるのではないのか。 日米のジャーナリズムの現場を点検すると、オフレコ取材の定義と並んでコメントの引用手法に大きな違いがあることが分かる。アメリカと違い、日本では「コメントを正確に引用する」という報道慣行が根付いていないのだ。 それを裏付けるような"事件"が相次いでいる。1月5日には、インターネット動画サイトの「ニコニコ動画」に民主党幹事長の岡田克也が生出演し、元民主党代表の小沢一郎の「政治とカネ」問題などについて語った。昨年11月3日には小

安藤美姫がマスコミに追い掛け回されたり、変なアンケートを行われたりするのはなぜかというと、マスコミの人権意識が低いからとか、商売になるからということもあるんだけど、最大の理由はあんな形で独占スクープをしてしまったからなんだよね。「特ダネ」を安易に一社に提供してしまったこと、その報復という文脈で、かなり意図的に嫌がらせを受けてる。 「特ダネを他社にすっぱ抜かれる」というのは、メディアの世界ではこれあってはならないことなんですよ。新聞、TV、週刊誌辺りのメディアの現場で働いたことがない人には理解しづらい感覚だと思うけれど、特ダネを他社に持っていかれるのって、失態と呼んでもいいくらい不名誉なことなんです(ちなみに一社だけスクープを報じられなかったことを「特オチ」といい、これはやったら即編集長以下クビを覚悟せねばならないほどの大失態です)。 あの報ステのVTRを見ながら、各社の番記者は完全に血の気

マスメディアの凋落について毎日原稿を書いているせいで、ものの見方が偏ってきているのかも知れないが、今朝の毎日新聞の一面のコラム「余録」にも、思わず反応してしまった。 コラムは「決断」をめぐるもので、鳩山首相の決断力のなさと、最近の「発奮」ぶりをいささか嘲弄的に紹介している。 「普天間基地問題でも『体当たりで行動していく』『必ず成果を上げる』と歯切れがいい。先週の内閣メールマガジンでは『未来に向けて時計の針をもっと勢いよく回せるような政府をつくりあげていきたい』とアピールした。だが、沖縄県民、米国、連立与党のいずれをも満足させる道がこれから急に開けるようにも思えない。『針の穴にロープを通すくらい難しい』ともらしたことがある首相だ。何を選び何を捨てようとしているのか。『腹案はある』と自信ありげな腹の内を見てみたい。」(毎日新聞、4月5日) 「よくあるコラム」である。 こういう書き方を日本のジャ
読売1000万部、朝日800万部、毎日400万部……巨大部数を誇る全国紙。それだけ影響力が大きい「証」でもある。しかし、その部数に「暗部」を指摘する声もある。「押し紙」と呼ばれる配達されない新聞だ。全体の2割以上はある、というのが関係者の見方だ。ただ、新聞社側はその存在を認めていない。この問題に詳しいフリージャーナリストの黒薮哲哉さんに話を聞いた。 悲鳴を上げる販売店が増え始めたのはここ5~6年 ――押し紙問題(*メモ参照)は、最初はどういうきっかけでいつごろ始まったのでしょうか。 黒薮 はっきりしませんが、かなり昔から続いています。ただ、初期のころは新聞の部数が伸びていたときで、新聞社がノルマとして多めの新聞を搬入しても景品をつければ読者を増やすことは難しくなかった。だから販売店にとってそれほど大きな負担ではなかったようです。 ――それが販売店にとって迷惑なものへとその性格が変わったのは

米ニューヨーク(New York)の新聞スタンドで販売されるニューヨーク・タイムズ(New York Times、2008年7月23日撮影、資料写真)。(c)AFP/Getty Images/Mario Tama 【12月15日 AFP】印刷媒体への出稿量も発行部数も減り、無料のインターネット・ニュースに読者を奪われ、米国の新聞界は今、赤字の波にどっぷりと浸かっている。大新聞の中にさえ経営危機にひんするところが出始めている。 「かつて機能していた新聞のビジネスモデルはもはや成立しない」。米名門新聞社ワシントン・ポスト(Washington Post)のドナルド・グラハム(Donald Graham)会長は前週、ニューヨーク(New York)で金融大手UBS主催の会議に出席し、これまで各方面から指摘されてきた米メディア界の現状をあらためて嘆いてみせた。 ■広告激減、ITメディアとの競争に金

「マスコミたらい回し」とは?(その94)産経と読売は「少子化対策」の敵 社説のタイトルが「たらい回し」 子どもを持つ予定の家庭には両紙の不買を推奨 当夜、どの病院も命の戦い 目の前の患者を見殺しにして「緊急搬送」に応えろ? 問われているのは「医師不足」と「体制の不備」だ。 起きているのは「たらい回し」ではなく、「人員不足で救急要請に応じられない、限界ぎりぎりの現場」だ。 それを見抜くことが出来ず、「ベッドが空いている」という単純な発想で、現場の医師を叩くのは、既に「言論による産科医療に対するテロ行為」である。「ベッドが空いている」のは、次に予定されている難しいお産のためかもしれない。「患者を治療するのは空きベッド」だとでも思っているのか。医療スタッフが足りなければ、いくらでもベッドは空く。 奈良大阪妊婦搬送問題があった夜、奈良県や大阪府のどの病院も深夜大変な状況にあった。最初に連絡のあった

今回の 奈良高槻妊婦搬送問題 によって メディアスクラムの被害 を受けている最中の奈良県立医大産婦人科教室からweb上に 正式コメント が出た。 全文を引用する。赤字は原文のままである。 今般の妊婦救急搬送事案について 去る8月29日、救急搬送中の妊婦さんが不幸にも死産にいたりましたことについて、誠に遺憾に感じております。 今回の事案につきましては、マスコミを通じて、さまざまな報道がなされておりますが、当病院の産婦人科における8月28日から29日にかけての当直医師の勤務状況や当病院と救急隊とのやり取りについて調査しましたので、その結果を公表いたします。 平成19年8月28日の当直日誌記録より (産婦人科当直者 2名) 時間 対応内容 8月28日(火) 夕方から抜粋 19:06 妊娠36週 前回帝王切開の患者が出血のため来院、診察後に帰宅 19:45

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