(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング) 高市早苗首相が20余兆円規模の大型補正予算を発表してから、日本の長期金利の上昇に弾みがついている。それまで1.6%台だった10年国債流通利回りは2%をうかがう勢いだ。投資家の予想を超える規模の補正予算を発表したことで財政運営に対する不信感が高まり、国債の需給が緩んでしまったことがその主因である。 これは典型的な“悪い金利上昇”で、財政の悪化を懸念する金融市場からの警告だ。高市政権の一部の経済アドバイザーは「金利上昇で内外金利差が縮小し、行き過ぎた円安が是正される」と主張しているが、“悪い金利上昇”は通貨の信用力の源泉である国債の価値が低下したことを意味するため、円高要因にはならない。 自国の国債を裏打ちとして中央銀行が通貨を発行できる国が、米国やユーロ圏、日本などに限られることは意外に知られていない。世界の多くの中銀は、欧米の国債や金準

重層的な対立構造を抱えるEU いわゆる電気自動車(EV)を巡る方向性について、欧州連合(EU)が内部分裂に陥っている。正確に言えば、もともと懸念されると同時に、燻り続けていた内部分裂の構造が、ここに来て一気に噴き出しているのである。それも国ごとの対立であればまだいいわけだが、国の内部でも見解の相違が生じており、問題は非常に複雑化している。 そもそもの経緯を振り返ると、2021年7月、EUの執行部局である欧州委員会は、2035年までに新車から従来型の内燃機関車(ICE車)を排除し、それを走行時に温室効果ガスを排出しないゼロエミッション車(ZEV)に限定するという方針を打ち出した。このZEVは、燃料電池車(FCV)なども含まれるが、基本的にEVのことである。 これは、2019年12月に就任したウルズラ・フォンデアライエン委員長による肝煎りのプランであった。一方で、同委員長の出身母体であるドイツ

自動車産業との戦略対話を開始する欧州委員会 欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は12月19日、年明けからヨーロッパの自動車産業の将来に関する戦略対話を開始すると発表した。これは、先の11月27日にウルズラ・フォンデアライエン委員長が欧州議会で行ったスピーチに従い、各メーカーや業界団体、労働組合などと意見交換を行い、業界の将来を議論する枠組みだ。 フォンデアライエン委員長ら欧州委員会の執行部が描いた電気自動車(EV)シフトの結果、EUの自動車産業は大きな痛手を被っている。自動車産業にディーゼル車に代表される従来型の内燃機関車(ICE車)からEVへの強制的な生産の転換を強いる一方、中国からは安価なEVが大量に流入する事態を招いたのは、欧州委員会にほかならない。 これまでも、ヨーロッパの自動車産業団体である欧州自動車工業会(ACEA)は、欧州委員会に対して、EVシフトの在り方を見直すよう

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