▼神話的思考から見た河童の正体 河童の話であるような、またそうでもないような話をいくつかしたい。あらかじめお断りしておくが、河童はここでは主役ではない。小論は、河童が日本に生まれ出るまでの全人類的な記憶、あるいはニッポン人の深層を断片的に素描することにとどまる。ユング流に言えば「集合的無意識」、折口信夫流に言えば私たちの「古代」をめぐる話を、そしていくつかの脱線的なエピソードを予定している。 さて、柳田国男によれば、河童は水神の零落した姿だという。「河童駒引」というのは、河童が馬を水中に引き込む話だ。その馬を守るのが猿なのである。この「河童駒引」をユーラシア大陸に広く伝わる水神信仰の大海の中に位置づけたのが、石田英一郎著『河童駒引考』だ。それにしても、河童はなぜ馬を水中に引き込むのか。それは河童=水神の正体が馬であるからだ。また同時に、馬は水神への犠牲なのである。 ここには、西田幾多郎の絶
コンテンツ消費者って言いたくないから、コンテンツ受容者、パフォーミングアーツに限るなら観客と書くことが多い。自らが消費だけを行っていると思うのは、二次元コンテンツのファンでもリアルイベントに足を運び、鑑賞体験を得ることが増えた昨今では、いや、そもそもが成立しづらい見立てだからだ。現代における複雑な文脈を全部飲み込んでくれる便利な言葉はおそらく「オタク」なので、とりあえずそう置いて始めることにします。オタク、コンテンツを受容する側が表現活動を行う営みは、二次創作同人カルチャーという形でそれなりの歴史性をもって行われてきた。海賊版との見分けが法的につけづらく、悪質性がない場合が多いから基本的には見逃されてきているが、それでも判例がいくつか存在する程度には定期的に問題になる行為である。 また、SNS上で作品発表を行うことに対する批判や、公式に明らかにされていない部分を深読みした個人の作品読解を

このイラストがネットで有名化したきっかけ YouTubeにドラえもん関係楽曲を投稿していた「tkydoramusic」というユーザーが『スネ夫が自慢話をするときに流れている曲(フル)』というタイトルで大山のぶ代版ドラえもんのBGM(作曲:菊池俊輔)を2008年12月3日に投稿。同ユーザーの投稿動画では一貫してシンガポールのマーライオンを背景としたドラえもん一行のイラスト画像が用いられている。翌2009年8月28日に当該動画がニコニコ動画に転載され(恐らくマイリス工作により)ランキングで上位に躍り出たことを切っ掛けにネットミーム化、数多くの派生動画を生み出した。 なぜドラえもん一行とシンガポールの背景という組み合わせなのかという点に当時も多くのツッコミが入り、派生したネタにおいてはそこを取り上げたものも見られる。しかしこの画像の出処は依然として判っていない。

ナメクジがテレポートする!? 1冊の本からの思い出をたどる 作者さんは、幼いときに読んだ本がきっかけで「ナメクジはテレポートできる」と思い込んでしまいます。成人後につい本気でその話を披露して、その場の爆笑を誘うも、作者さん的には「えっ! 私、だまされていた!?」と衝撃に襲われます。そんなてん末をネットでつぶやいたところから調査はスタート。 「ナメクジはテレポートする」と書かれた本を探すことからはじまり、やがてそのエピソードは昭和10年(1935年)の雑誌や、昭和11年(1936年)の本に掲載された目撃談が発端なのではないかと源流を突き止めていきます。それは2013年から現在まで、なんと足かけ5年に渡ります! その長きにわたる疑問と調査の経緯を、こちらのご本ではマンガ形式で、丁寧にたどって描かれています。手足は棒線のカエルさんが、驚いたり、頑張って資料を探したり、時に諦めたり……、日々の中で

「クソゲー」という言葉はどこから来たのか? 一説にはみうらじゅん氏が起源とも高橋名人が起源とも言われているが、いまとなってはあまりにも普遍的な言葉になりすぎて、おそらくわずか30年程度の歴史ながら、その起源が遡られることはほとんどない。 この起源について、今回徹底的に調べたところ、意外な人物や雑誌が浮上したのだ。 調査員となったのは、電ファミではすでにお馴染みのタイニーPというお方。昭和のパソコンPC-6601に、ボーカロイドのように初音ミクやPerfumeの楽曲を唄わせたり、「やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史」と称し、その歴史を丁寧に考察したりなど、日本のホビーパソコンや黎明期のゲームの歴史について詳しく、ニコニコ界隈で活躍している人物だ。 今回の「クソゲー」を皮切りに、ゲームにまつわるさまざまな言葉の起源や使われかたの変遷を、豊潤な知識と膨大な資料を横断する徹底的な調査によってタイニー

京都の若い女性からの切実な願い 1995年5月初旬のことです。ユニークな内容が書かれた一通の手書きの依頼文が、『探偵!ナイトスクープ』に寄せられました。そのころはまだパソコンが普及していませんでしたから、依頼は必ず、はがきか手紙で寄せられました。 手紙をくれたのは、京都市内に住む24歳の女子学生でした。地元京都で学生になる前に、東京で働いていた時期があったようです。この依頼はまさにこの本のテーマ、なんと「女陰」の名称の全国方言分布図を作成してほしいと求める内容だったのです。こんなお願いが、若い女性から、しかも大真面目な文章で寄せられてくるとは、夢にも思っていませんでした。 私たちに依頼文が届いたのは、1991年5月24日に「全国アホ・バカ分布図の完成」編を放送してから、ちょうど4年が経ったころでした。この放送をきっかけに、私が「アホ・バカ方言」の研究を仕事の合間に始め、『全国アホ・バカ分布

「客引きは100%ぼったくりです」。そんな物々しい看板が立つ東京・新宿の歌舞伎町。ここで開催されているクラブイベント「Soi48」。DJブースに“彼ら”が立つと、フロアの空気が変わります。やがてスピーカーから、どこの国のものともわからない不思議な音楽が大音量で流れてきました。 実は日本の民謡なのですが、注意深く聞かないとそれが日本語であることすらわかりません。“彼ら”の名は「俚謡山脈(りようさんみゃく)」。民謡でフロアを湧かす「民謡DJ」のユニットです。 「俚謡山脈」は民謡を専門とするDJとして、おそらく日本で唯一の存在です。彼らの民謡に対する思い入れは深く、背景や歴史を探るうちに「ジジィババァの声は最高だな!」という境地に達したのだとか。そんな「俚謡山脈」の佐藤雄彦さん(42)と斉藤匠さん(38)に、なぜいま民謡なのか、どうして民謡をクラブでかけようと思ったのか、聞いてみました。 建築関

【2017/10/25追記】 久しぶりにバズッたので、ナイチンゲールの呪いにかかっている私としては戦々恐々としながらはてなの通知欄をみております。 はてぶで、今回指摘したSONYのハンディカムのCMに、高篠氏のエピソードが使われていることを教えてくれた方がいました。情報提供ありがとうございます。みんな知ってるものですね。新しい項に追記しています。 私の好きな『それ町』の石黒正数さんのtweetを最近フォローしているのですが、こんなジョブズの逸話を紹介していました。技術者「アイフォンの試作機です。この機能でこれ以上小さくするのは無理です!偉い人にはそれが分からんのです」 おもむろに試作機を水没させるジョブズ。 ジョブズ「あぶくが出たな。まだ隙間があるという事だ、工夫しろ」 この話が好きでなぁ。 ネームを描く時の指針になったものよ。 — 石黒正数 (@masakazuishi) 2017年1

コミケの受難とひとつの"うわさ" 世界最大規模の同人誌即売会、コミックマーケット(通称コミケ)が今夏も開催されました。92回目を迎えた今回は、3日の開催期間中にのべ3万2千のサークル(団体)が参加、50万人が来場し、会場の東京ビッグサイトは大盛況でした。 現在、第一線で活躍する漫画家・小説家の中にも、コミケで同人活動していた作家は多く、まさにクリエイターのゆりかごのような存在と言えるでしょう。 そんなコミケにも、受難の時代がありました。1988年から1989年にかけて日本を騒がせた幼女連続誘拐殺人事件で宮崎勤元死刑囚(2008年執行)が1989年に逮捕され、元死刑囚が収集していた本やビデオが山積みの部屋が報じられると、宮崎の"オタク"という属性に世間の注目が集まりました。そして、宮崎が過去にコミケにサークル参加していたため、報道直後に開かれたコミックマーケット36には、メディアが取材に殺到

「いっせーの、1」という掛け声とともに親指を出して数を当てる遊びはほとんどの人がやったことがあると思う。この遊びは有名だけれど僕の地元では名前がない遊びだった。 一体この指遊びの正式名称はなんなのだろうか?そもそも正式名称があるのだろうか? 今回はそういった名前がわからない指遊びを3つほど選んで、それぞれアンケートを取ってどのような呼び名があるのか調べてみることにした。 大学中退→ニート→ママチャリ日本一周→webプログラマという経歴で、趣味でブログをやっていたら「おもしろ記事大賞」で賞をいただき、デイリーポータルZで記事を書かせてもらえるようになりました。嫌いな食べ物はプラスチック。(動画インタビュー) 前の記事:大井競馬場のフリーマーケットは押し入れをひっくり返したような感じだった > 個人サイト ジャーニーとモアイとめがね

すごいローカルネタで申し訳ないんだけど。 自由研究で自分の住んでいる徳島県の珍地名リストを作っている。 全然公開するあてもなく作ってたんだけど、増田ぐらいがちょうどいいかなと思ったので大公開する。 全然研究じゃなくてただのリストなので、 誰か私より暇な人がいたらぜひ由来まで追加調査してほしい。健闘を祈る。 徳島 地名メモ 由来がありそう系 鬼太郎 〒774-0046 徳島県阿南市長生町鬼太郎 髭作り 〒774-0015 徳島県阿南市才見町髭作り うその口 〒774-0046 徳島県阿南市長生町うその口 天皇 〒779-4100 徳島県美馬郡つるぎ町半田天皇 「ネ」と読むのかな系 ソ子 〒771-6403 徳島県那賀郡那賀町木頭和無田ソ子 ナカウ子 〒771-6404 徳島県那賀郡那賀町木頭南宇ナカウ子 「志」だけ漢字系 かま志やう 〒779-1401 徳島県阿南市内原町かま志やう とふや

伝説 宮崎県串間市の石波海岸から200メートルほど離れたところに、「 幸島 ( こうじま ) 」と呼ばれる小さな島がある。 この島では1948年に京都大学の研究グループがニホンザルの観測を開始。52年にはサツマイモの餌付けに成功。翌53年には「イモ」と名付けられた当時1歳半のメス猿が、それまでどの猿も行わなかった、砂のついたサツマイモを川の水で洗う、という画期的な行動を発明した。 サツマイモを洗っているところ (【出典】KAWAI, M 『Newly acquired precultual behaviour of the natural troop ofJapanese monkeys on Koshima Islet』 Primates 6: 5-Photo 2, 1965) この行動はやがて少しずつ群れの中へ伝わっていく。するとある日、幸島でサツマイモを洗うニホンザルが臨界値(例と

ドゴン族の神話では、シリウスの周囲を「ポ・トロ」という星がまわっている。この星は白色で、すべての星の中で最も小さく、サガラという非常に重い金属で構成されていることから宇宙で一番重いという。 「ポ・トロ」の「ポ」(別名「フォニオ」)は、ドゴン族にとって最も小さな実をつける穀物の名前からきている。西欧の学名では「ディジタリア・エクシリス」。ここから「ディジタリア」とも呼ばれる。「トロ」はドゴン族の言葉では星の意味。 奇妙なのは、このポ・トロの特徴と一致する「シリウスB」という星が実在していることだ。この星は恒星の中では最も小さく、超高密度の物質で構成された非常に重い星であり、天文学では「白色矮星」(はくしょくわいせい)と呼ばれている。非常に暗い星であるため、肉眼ではまったく見ることができない。 ところが望遠鏡を持たない原始的なドゴン族は、なぜかこのシリウスBの存在を知っていた。 他にも奇妙なこ

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