失敗→反省→自己認識のおもしろさ 【楠木】『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』(中公新書ラクレ)を興味深く読ませていただきました。考えさせられるところが多々ありました。 【東】ありがとうございます。楠木さんのような経営学者に褒められるとちょっと恥ずかしいですね。2010年に39歳でちっちゃい会社をつくって、それから10年ほど悪戦苦闘したというだけの記録ですから。 【楠木】白状すると、東さんの著書は初めて読みました。書店で平積みされていたので、「これはおもしろそうだな……」ぐらいの興味で手にとったんです。読んでみて、期待をはるかに超える内容でした。この本で東さんの哲学・思想の一端を知ることができたので、これから『ゲンロン0 観光客の哲学』なども読んでみます。「観光」とか「誤配」といった概念は実にイイですね。 【東】『ゲンロン戦記』で初めて僕の本を読んでくれた方はけっこういるみたいです。Tw

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン代表。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数この記事の写真をすべて見る ※写真はイメージ(gettyimages) 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。 * * * 生権力(せいけんりょく)という言葉がある。フランスの哲学者フーコーの概念で、人間を家畜のように捉える権力を意味する。たとえば税制を変えれば出生率も変わるが、そのようにして集団を「管理」するのが生権力である。 生権力の働きは、非人称で政治的に中立なふりをしてくるので抵抗が難しい。


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