RubyKaigi2023でRuby JIT HackingGuideというタイトルで発表してきた。speakerdeck.com JITコンパイラを書くチュートリアル 今回の発表ではJITコンパイラが書ける人間を増やすことをゴールにしていたが、 30分という短い発表枠内では雰囲気を知ってもらうことにフォーカスし、 実際に手を動かしたい人たちにはそれ用のチュートリアルを触ってもらう形を取った。github.com JITコンパイラは実は初心者向き 独学でコンパイラの作り方を学ぶ人は、Cコンパイラなどを実装することが多いように思う。 C言語は実装対象として一見シンプルそうに見えて実は結構機能が多いので、C11をゴールに始めてもC89の範囲すら実装しきらないままエターなる人も多いのではないか。 そんな僕みたいな堕落した人間にお勧めなのがJITコンパイラ。 インタプリタと併走する特性上、
僕はRustでRubyのJITを書く仕事をしているのだが、去年の12月くらいから、趣味ではRubyでRubyのJITを書いている。 それまではC言語でコード生成を行なうMJITを5年くらいメンテしていたのだが、先月、Rubyで機械語を直接アセンブルするRJITに差し替えた。github.com なので、今Rubyのmasterブランチには、会社で業務として開発しているRust製のYJITと、僕が趣味で開発しているRuby製のRJITの2つのJITコンパイラが存在している。余談だが、JITの開発をしすぎてRubyの作者であるまつもとさんのコミット数を最近抜いた。 なぜMJITをやめたのか MJITも結構がんばっていて、去年開発していたRuby 3.2ではMJITのコンパイラの実装をCからRubyにフルスクラッチした上、バックグラウンド処理をpthreadからfork + SIGCHLDで行

Kernel/VM探検隊は、カーネルやVM、およびその他なんでもIT技術の話題ジャンルについて誰でも何でも発表してワイワイ盛り上がろうという会です。monochrome氏は、Ruby処理系「monoruby」について発表しました。 高速な実行が可能なRuby処理系「monoruby」monochrome氏(以下、monochrome):monochromeといいます。今日は「機械語で書くRuby処理系のその後」ということで、前回の発表のその後を報告いたします。 自己紹介です。monochromeといいます。(スライドを示して)Twitterはこれです。最近、Twitterは治安が悪いので、Mastodonにアカウントを作りました。RustでRubyの処理系を作っています。プログラミング処理系、言語処理系が好きな人の集まりのSlackとか、最近はこの「Zulip」というアプリに移動して、こち

はじめに こんにちは。ニコニコ漫画の開発をしているyotaとtukiyoです。 この記事はペアブロギングによって執筆しています。本記事ではニコニコ漫画で利用しているRubyのバージョンを3.2.0へ更新したこととYJITの有効化によるパフォーマンスの変化について紹介します。 ニコニコ漫画のインフラ構成についてにある通り、ニコニコ漫画は4つのプロダクトによって運用されています。 このうち本記事の対象となるのは、Rubyを利用している「新バックエンド」と「課金サブシステム」になります。 今回、Rubyのバージョンが3.2.0になったことでYJITが実験段階ではなくなりました。*1 ニコニコ漫画のバックエンドシステム内では複雑な処理も多く、恩恵に与ることを期待して更新を行いました。 結果として大きなパフォーマンスの向上が見られました。 はじめに 更新に関する作業 更新前後のパフォーマンス比較

RubyのYJITコンパイラをShopifyが本番に投入、Railsアプリを高速化。Rubyも本格的にJITの時代へ ECサイト構築サービスを提供するShopifyは、Ruby 3.2に搭載されているYJITコンパイラを同社の本番環境に投入し、Railsベースで構築された同社サービスの性能改善を実現したと明らかにしました。 YJITコンパイラはShopifyが開発を進めてきたRubyのJITコンパイラで、大規模なRailsアプリケーションにおいてより高い性能向上を目指して開発されたものです。 一昨年末のRuby 3.1でメインラインにマージされ、昨年末に登場したRuby 3.2ではさらに改善が進められて本番環境にも耐えるようになったと説明されており、今回Shopify自身がそれを実証した形になりました。 If you’re a keenRubyist, you may have hear

国分崇志(@k0kubun)と申します。プログラミング言語Rubyのコミッターとして活動しています。2019年からシリコンバレーで働いており、2022年からShopifyという会社でRubyのJust-In-Time(以下、JIT)コンパイラをフルタイムで開発しています。 長い間趣味でやっていたコンパイラの開発を仕事にしたのは、現職が初めてでした。この記事では、趣味を仕事に変えた経緯や、どのようにして業務経験のない分野にキャリアチェンジしたのかを紹介します。仕事で分散システム、趣味でコンパイラを書くキャリア 楽しく稼げる仕事を求めてたどり着いたRubyエンジニア 研究で分散システムと言語処理系の両方に興味を持つ 分散ミドルウェアを仕事で、JITコンパイラを趣味のOSS活動で やっぱりコンパイラを仕事にした複合的なきっかけ 働きながら大学院に通い、コンパイラが一番好きなことに気付いた コン

2022-09-09改訂: gcc バージョンが古すぎたのと、C が内部計測でなかった点を改め計測しなおしました。結果、Rust は C より速くはなくなりました。紛らわしいことで、ごめんなさい。また、gcc のバージョンアップに伴い、Python およびRuby についてはビルドと計測をしなおしたので、これらも少し速い値に変わっています。この点もどうぞあしからず。2022-09-10追記:ご要望のあったPython numba.njit 使用時とGo の結果を追加しました。PHP は JIT 有効化が面倒だったので断念しました^^;2022-09-10追記2:C の計測で clock() を使うのはフェアではないという指摘がありましたので、念のため clock_gettime() を使用したコードに差し替えました。結果に大きな差はありません。2022-09-10追記3:PHP
はじめにRuby 3.0 Advent Calendar 2020 3日目の記事になります。 昨日は、【Ruby 3.0 Advent Calendar 2020】Ruby3.0に投げたPull Request【2日目】です。 gamelinks007.hatenablog.com 今日はRuby 2.7から対応されている一部メソッドがRubyで実装されていることに触れつつ、Ruby3.0でRubyで実装されたメソッドたちを一部紹介します。RubyでRubyを実装する まずRubyでRubyを実装するというのがいまいちピンとこない方もいると思いますので軽く説明します。RubyでRubyを実装するという提案はko1さんがRubyKaigi 2019で発表された内容を元に導入されました。rubykaigi.org youtu.be 発表されている内容をかいつまむと、組み込みメソッドでキ
For the past three years, I've been participating in addingjust-in-time compilation (JIT) to CRuby. Now, CRuby has the method-basedjust-in-time compiler (MJIT), which improves performance for non-input/output-bound programs. The most popular approach to implementing a JIT is to use LLVM or GCC JIT interfaces, like ORC or LibGCCJIT. GCC and LLVM developers spend huge effort to implement the optim

The English version of this article is available here: medium.com 2/4(日)に、去年のRubyKaigiが終わった直後の新幹線で開発を始め10月に公開したJITコンパイラをRubyのtrunk (2.6.0-dev) にマージし、昨日TDTech Talk 2018で以下のような内容の発表をしました。speakerdeck.com まだそれほど速くできていないということもあり、私はTwitterでのみ共有して満足していたのですが、海外の方がいくつか記事を書いてくださいました。 Playing withruby's new JIT: MJIT - John HawthornRuby’s New JIT – Square CornerBlog – Medium とても丁寧に書かれているので、私の記事がわかりにくければ

JITでどれだけ速くなるか この世には「嘘」、「ひどい嘘」、そして「ベンチマーク」があります(訳注: 元ネタ)。JITによる高速化を正確な値で表すなど無理な相談です。正確な値など存在しないからです。しかし、特定のプログラムについては、完全に合理的な負荷をかけた状態で50%、150%、あるいは250%までJITで高速化できるケースが多々あります。現実的な負荷の元で、500%以上もの高速化を達成するケースすらいくつかあります。ただし、JITよりインタプリタの方が速いケースも若干あることは言うまでもありません。なぜなら、現実世界には常に最適化されているものなど存在しないからです。 現時点での無難かつシンプルなCRuby向けJIT実装では、およそ30%〜50%のパフォーマンス向上が見られ、測定方法次第では最大150%に達することもあります。30%〜50%はJITにしてはかなり控えめな値ですが、これ

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