補足私は今回記事に出られたAさんとお会いし、お話を伺ったことがあります。そして、裁判を陰ながら支援してきました。記事にありますように、和解に至ったのは、ベストではないがベターな選択ということで、苦渋の決断でした。 Aさんは60代ということもあり、その年齢でどうして裁判などするのかなどと言われない批判を浴びてきました。また、研究者のなかにも、理研は研究者を循環させる研究所だから、雇い止めは仕方ない、という意見の人も少なからずいます。しかし、記事にあるように、Aさんが立ち上がったのは、決して自分の地位だけのためではなく、研究者を機械的に雇い止めする理研、ひいては多くの研究者を不安定な地位に置き続ける日本の研究体制に異議を申し立てるためでした。 日本の研究環境をよりよくするためのAさんの闘いは終わっていません。私もこれからもAさんの活動を支援していきたいと思っています。

宇宙の物理学とブラックホールの物理学には類似点がある。このことから、一部の宇宙論研究者は、私たちの宇宙はブラックホールの中で生まれたのではないかと考えている。(PHOTOGRAPH BYNASAGODDARD) 星空を見上げると、宇宙が無限に広がっているように思えるものだ。しかし、宇宙論研究者は、宇宙は有限だと知っている。第一に、宇宙論の最良のモデルは、空間と時間に始まりがあったことを示している。「特異点」と呼ばれる原子以下の点だ。この高温高密度の点は、ビッグバンが起きたとき、急速に外側へと膨張した。 第二に、観測可能な宇宙は「事象の地平面」と呼ばれる境界に囲まれている。宇宙は超光速で膨張しているため、その先は観測不能な断崖絶壁だ。最良の望遠鏡でさえ到達できないほど遠すぎる領域がある。(参考記事:「最新望遠鏡で原始の宇宙へ」) 特異点と事象の地平面という2つの要素は、ブラックホールの重
アイスランドの首都レイキャビクの市庁舎裏の湖は、冬になるとスケートリンクのように凍る=2024年11月30日、レイキャビク、藤原学思撮影 北欧の島国アイスランドで今月、3匹の蚊が発見された。国営放送RUVが20日に報じた。蚊の生息に適さないとされてきたアイスランドでは初めてのことで、発見者は「最後のとりでが陥落した」と驚いている。 【写真】蚊の動きCO2で鋭く→臭う靴下へまっしぐら 花王と理研が研究成果 RUVによると、昆虫愛好家の男性が16~18日、首都レイキャビクから北東に約20キロの地域で、3日連続で計3匹を捕獲した。自然史研究所に送ったところ、昆虫学者が蚊だと確認したという。 アイスランド大の教授はRUVに対し、アイスランドに今後、蚊がすみつく可能性があると指摘。「3日で3匹見つかったということは、近くにそれなりの数が生息しているかもしれない」と述べた。 蚊は世界中に生息し、卵から

不可逆的な気候の転換点が近づく中、地球は「新たな現実」に直面しつつあるという/PlanetObserver/Universal Images Group/Getty Images (CNN) 地球が「新たな現実」と戦っている。一連の壊滅的かつ不可逆的なものになり得る気候の転換点のうちでも最初の段階、すなわちサンゴ礁の広範な死滅が近づきつつあることが原因だ。世界中の160人の科学者が作成した画期的な報告書で明らかになった。 人類が化石燃料を燃焼し気温を上昇させるにつれ、すでに深刻な熱波、洪水、干ばつ、山火事が頻発している。しかし、さらに大きな影響が目前に迫っている。気候変動は、アマゾン熱帯雨林から極地の氷床に至るまで、地球の重要なシステムのバランスを崩壊に追い込む可能性がある。そうなれば、壊滅的な影響が地球全体に広がるだろう。 「私たちは複数の地球システムの転換点に急速に近づいており、それ

2025年ノーベル賞自然科学3賞がでそろった。生理学・医学賞と化学賞で日本人が選ばれる快挙となった。2賞同時受賞は大村智北里大学特別栄誉教授と梶田隆章東京大学卓越教授らが選ばれた15年以来となる。25年に受賞するテーマはいずれも教科書に載るような各分野の基礎を作った研究だ。受賞候補者として長年、名が挙げられており、待望の受賞となる。(梶原洵子、小寺貴之) 生理学・医学賞/制御性T細胞発見 免疫学の常識覆す 25年のノーベル生理学・医学賞は、免疫を抑える免疫細胞の「制御性T細胞(Treg)」を発見し役割を解明した大阪大学の坂口志文特任教授、米民間企業研究者のメアリー・E・ブランク氏、フレッド・ラムズデル氏に贈られる。 私たちの体は侵入したウイルスなどを排除する免疫システムを持つ。T細胞による侵入者への攻撃は特に重要な機能だが、この攻撃を止めるTregも同様に欠かせない。Tregに異常が起きる


ダイアナ・ブルさん(右)と娘のジョージア・ウェバーさん(中央)、友人のエラ・オドスキさん(左)。マイラ・ウェバーさん(ジョージアさんの姉妹)がエラさんの後ろにいる。2025年9月26日、米国コロラド州のコマンチ国有草原で、ブルさんの腕に乗せたタランチュラを観察している。(PHOTOGRAPH BY KEITH LADZINSKI) 9月26日と27日、米国コロラド州ラ・フンタで、毎年恒例の「タランチュラ祭り」が開催された。これはクモ類をたたえる2日間の祭典で、一般向けの科学講演、多数のタランチュラが生息する草原のツアー、1990年の映画『アラクノフォビア』(「クモ恐怖症」という意味)の上映会、さらにはクモの仮装をするパレードなどが行われた。 ラ・フンタ市の観光責任者パメラ・デナヒー氏によれば、この祭りは2018年、タランチュラの存在をうまく活かし、どう観光に結びつけるかというアイデアから始
「基礎科学への支援が不足している」。ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文・大阪大特任教授(74)は6日夜、阿部俊子文部科学相からの電話に対し、こう訴えた。治療に応用するための研究開発も、世…

著名な霊長類学者であるジェーン・グドール氏は、野生のチンパンジーの生活を数十年にわたって研究し、人間に最も近い知的な類人猿に対する私たちの理解を根本から変えた。(PHOTOGRAPH BY VICTORIA WILL, INVISION/AP) 2025年10月1日、ジェーン・グドール研究所は、その創設者で国連平和大使でもあるジェーン・グドール博士が91歳で死去したと発表した。グドール氏は霊長類学者で、動物行動学者で、自然保護活動家で、動物福祉の擁護者で、教育者でもあった。 「ジェーン・グドール博士はこの世界に多くの光をもたらし、ひとりの人間にどれだけすばらしいことができるのかを美しく示してくれました」とナショナル ジオグラフィック協会のジル・ティーフェンターラーCEOは語る。「ジェーンは非凡な科学者、自然保護活動家、人道主義者、教育者、指導者であり、そして何より希望の擁護者でした」 「6
イベリア収穫アリの女王アリが、2種類のアリを出産することがわかった。イベリア収穫アリのオス(左)とメッサーストラクターのオス/Jonathan Romiguier (CNN) 南欧に生息する「イベリア収穫アリ(Messor ibericus)」をめぐり、生物学の基本原理を覆す異例の生存戦略が新たな研究で明らかになった。女王アリは、2種類のアリに成長する卵を産めるのだ。 この奇妙な生殖特性は、研究チームが不在の種の謎を解明しようとする過程で発見された。暫定データでは、イベリア収穫アリが、地中海地域に生息する別種の収穫アリ「メッサーストラクター(Messor structor)」と交配することで、雑種の働きアリが産まれると見られていた。 だが、これには問題があった。イベリア収穫アリのコロニーが発見されたイタリアのシチリア島は、最も近いメッサーストラクターの個体群から約1000キロメートル離れて

ランドルフ・ネシーの講演が行われるというので,進化精神医学セミナーに参加してきた.場所は京王線上北沢の閑静な住宅街の一角にある東京都医学総合研究所.ネシー教授の進化精神医学の講演を中心に,東京ティーンコホート研究で明らかになった思春期メンタルヘルスのトピックもあわせて議論するという趣旨だった. 冒頭でセミナーの趣旨の説明があったのちに最初に登壇したのは長谷川眞理子 特別講演1 Evolution Is Not Progress: The Ghost of Social Evolutionism 長谷川眞理子 今日はそもそもトークをする予定ではなかったのだが,しかし(本日のようなテーマの講演を聴く)日本の(進化生物学に必ずしもなじみのない)聴衆には,ダーウィンとスペンサーの違いを説明しておかなければならないと思って登壇することにした.多くの日本人はここを誤解している.今日ここに集まったに皆さ



ノーベル賞のパロディーとしてユニークな研究に贈られることしの「イグ・ノーベル賞」の受賞者が発表され、日本からは農研機構=農業・食品産業技術総合研究機構の研究員らのグループが受賞しました。その研究テーマは、「シマウマ」ならぬ「シマウシ」です。 「イグ・ノーベル賞」は、1991年にノーベル賞のパロディーとしてアメリカの科学雑誌が始めた賞で、人を笑わせつつ考えさせる研究に贈られます。 日本時間の19日、ことしの受賞者が発表され、日本からは、農研機構で研究員を務める兒嶋朋貴さんらの研究グループが「生物学賞」を受賞しました。 研究グループは、シマウマが体のしま模様によって血を吸うハエからの攻撃を防いでいるとする研究結果に注目し、家畜の黒毛の牛に白黒の模様を描いて「サシバエ」や「アブ」を防ぐ効果があるかを調べました。 その結果、模様を描いた牛は何も描かなかった牛に比べて足や胴体に付いたハエの数が半分以

米首都ワシントンで行われた上院保健委員会の公聴会で証言する、米疾病対策センター(CDC)のスーザン・モナレズ前所長(2025年9月17日撮影)。(c)Brendan SMIALOWSKI/AFP 【9月18日 AFP】米疾病対策センター(CDC)のスーザン・モナレズ前所長は17日、上院保健委員会に出席し、科学的根拠のない小児ワクチン接種スケジュールの変更を承認しなかったために解任されたと述べた。 先月突然解任となったモナレズ前所長はまた、ロバート・F・ケネディ・ジュニア米厚生長官から、理由なくCDCの専門家学者を解雇するよう要求したとも明かした。 共和党の上院保健委員長で医師でもあるビル・キャシディ氏の質問に対してモナレズ氏は「科学的根拠があれば、接種スケジュールの変更に前向きである」と伝えたものの、ケネディ氏は「根拠となるデータや科学的証拠を何も提示しなかった」という。 キャシディ氏が「


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