収容所に連行された人々の遺品の靴(佐藤慧撮影:アウシュビッツ=ビルケナウ博物館/2017年) 7月に行われた参院選では、「日本人ファースト」や「終末期延命治療の全額自己負担化」など、命の選別をするような言説が目立ちました。 かつてナチスドイツは、障害のある人への強制不妊政策として通称「断種法」を制定し、「T4作戦」と呼ばれる殺害計画が実施されました。 日本では、1948年から1996年まで続いた優生保護法を違憲とし、国に賠償を命じる最高裁判決が昨年(2024年)下されました。 こうした背景にある「優生思想」に抗うために、必要なこととは何かー。NPO法人日本障害者協議会代表の藤井克徳さんと考えていきます。 藤井克徳さん(本人提供) 優生思想とは何か? ――「優生思想」とは、そもそも何を意味するのでしょうか? 古くはギリシャ時代に遡りますが、近代の優生思想の源は、1883年にチャールズ・ダーウ

(「情況」2024年8月に発表) 小谷野敦トランスジェンダリズムというのがまずいことになっていると気づいたのは、栗原裕一郎のおかげである。それは二〇二二年の春ごろのことで、少し前(二〇二一年十二月)に日本文藝家協会の月報に笙野頼子が反TRAの文章を載せた時は、私自身がかつて笙野にひどい目に遭わされたこともあって、またおかしなことを言っているのかと思った程度だった。だが栗原が、その笙野の『群像』からのパージと、トランスジェンダー擁護派の、相手との議論を拒否する「ノーディベート」の姿勢に強い警戒をツイッター(現在のX)で発しているのを読んでいて、やっと事態に気づいたというわけである。 考えてみれば、私は十八年ほど前に、米国在住のフェミニスト・小山エミと論争をしていて、それは例のコラピントによる『ブレンダと呼ばれた少年』およびジョン・マネーの実験と関係するのだが、私はその時、性

「人権」とか言われそうだけど、人権ファーストなら私財投げ売って募金するよな 結局時分のお気持ちファーストなんじゃねーの皆さ


2007年東京都知事選挙に出馬した際、「日本国政府の転覆」を主張する過激な政見放送で一躍、時の人となった“革命家”外山恒一氏。 2016年東京都知事選挙時の政見放送で行われた立花孝志氏の「NHKをぶっ壊す!」や後藤輝樹氏の「伝説の放送禁止用語連発」のパフォーマンスなどの先駆け的な存在として知られる外山氏が、このたび、東京・高円寺にバーを開いたのだという。 その名も「BAR人民の敵」(5月14日オープン)。「つばさの党」の選挙妨害や日本政治の現状について、“革命家”はこう捉えているという。 「そもそも選挙に期待していない」 「衆院東京15区補選での『つばさの党』の乱暴狼藉、愚行蛮行が問題になりましたが、不本意ながら支持せざるをえません。そもそもロクでもないNHK党の分派だし、私と違って芸風にユーモアがなく、ただ殺伐としていて正視に耐えませんけどね。 しかし無所属の須藤元気氏だけは攻撃しなかっ

「リベラルだが...」「表現の自由戦士だが...」とわざわざ書くやつ大体そうじゃない説

president.jp リンク先の文章は、拙著『人間はどこまで家畜か』を一部引用しつつ、ひとまとまりの読み物として再編成しプレジデントオンラインさんに載せていただいたものだ。私たちは資本主義にいいように飼い馴らされ、その資本主義をますます充実させるための資本の乗り物、それか家畜として使役されちゃっていませんか? といった話が中心になっている。 だが、現代人のマインドに根を下ろし、現代人をいいように飼い馴らし、現代人を動機づけている思想は資本主義だけでもあるまい。 ぜんぶ挙げようとするときりがないが、『人間はどこまで家畜か』では、現代人を飼い馴らす思想として、資本主義に加えて個人主義と社会契約、それから功利主義を挙げている。思想などという実体のないものに何ほどの力があるのか? と疑う人もいらっしゃるだろうし、そうした思想をつくりだしたホッブズやルソーやベンサムといった思想家の重要性は実感し

ダーウィンの呪い (講談社現代新書) 作者:千葉聡講談社Amazon本書は千葉聡による「ダーウィンの自然淘汰理論」(特にそれが社会にどのような含意を持つかについての誤解や誤用)が人間社会に与えた負の側面(本書では「呪い」と呼ばれている)を描く一冊.当然ながら優生学が中心の話題になるが,それにとどまらず様々な問題を扱い,歴史的な掘り下げがある重厚な一冊になっている. 冒頭ではマスメディアがしばしばまき散らす「企業や大学はダーウィンが言うように競争原理の中でもまれるべきであり,変化に対応できないものは淘汰されるべきだ」という言説を,まさに「呪い」であると憂いている.そしてそれが「呪い」であるのは,「進歩せよ,闘いに勝て,そしてそれは自然から導かれた当然の規範である」というメッセージがあるからだと喝破している(それぞれ,「進化の呪い」「闘争の呪い」「ダーウィンの呪い」と名付けられている). 第


リベラルと言われる言論人は無抵抗だった ――東さんは6月19日に『観光客の哲学 増補版』(ゲンロン)を出しました。2017年に毎日出版文化賞を受賞した既刊に新章2章2万字を追加されています。さらに今夏には姉妹編となる20万字の新著『訂正可能性の哲学』を刊行予定です。なにが執筆の動機になったのでしょうか。 【東】ここ数年、特に新型コロナとウクライナ戦争を通じて強く思ったことがあります。それは、人々はSNSなどでさまざまに理屈を並べても、何かあればすぐ一方向に流れされてしまうということです。そして知識人、言論人と呼ばれる人たちは、その大きな流れにほとんど抗うことができない。 例えば、リベラルを自認する言論人の多くはもともと生権力を批判していた。だからコロナが蔓延したときは政府による国境封鎖やロックダウンにみんな反対すると思っていました。しかし実際にはすぐ賛成した人が多かった。これはどういうこと

(6/14追記:トークイベントをやりましたのでよかったら視聴(※チケット購入)してください) #左からのキャンセル・カルチャー論 無事終了!!🙌 あいちトリエンナーレの件から 小山田圭吾事件、あらゆる差別問題… 様々な角度から “キャンセル・カルチャー”に ついて議論しました🤔 (たっぷり150分!!)アーカイブ6/27まで残ります ぜひご視聴ください👀https://t.co/0kDi3cqSHb pic.twitter.com/H8Mtb9ZCOA — 阿佐ヶ谷ロフトA (@AsagayaLoftA)2023年6月13日 twitcasting.tv www.loft-prj.co.jp本日開催の「左からのキャンセル・カルチャー論」に備えた、要約・メモ的な記事。もっと早く書きたかったんだけど、開催数時間前とかなりギリギリの公開になってしまった。 1・(法律的な)手続きを無視

ラジブ・カーン「なぜインテリは皆で“ウォーク(感情的文化左派化)”するのか、あるいは“保守”にならない理由」(2020年9月30日) (ウォークしていない)進歩派の友人に、「インテリには、左派/進歩派が多くて、保守派が圧倒的に少ないのはなぜなんだい?」と聞かれた。私は大まかに2つの理由があると思っている。この2つは相互作用している。 まず1つ目の理由。IQが高い人は、抽象的思考、体系構築、合理的思考に馴染んていることである。左派、リベラリズム(自由主義)、リバタリアニズムといった思考形態は、合理性の体系化を端緒にしているので、IQの高い人は、そこからすぐになんらかの示唆を得ることができる。史的唯物論、ロールズ的政治哲学、新古典派経済学、自然権思想等を挙げられるだろう。保守主義は、統一的で普遍的な合理的思想体系を提示しないので、〔インテリからすれば〕選択肢は、不明瞭、ハッキリ確立されたものと

野瀬大樹 @hirokinose 公認会計士・税理士。 出没地は東京・デリー・ムンバイ・バンガロール・シンガポール・ハコフグ倉庫・ハイラル平原・キノコ王国・アッテムト鉱山・クリスタルタワー・フレイムグレース・カストラート海・フィルモア・港町ワーレン・サウスタウン・カムラの里・金田城・ヒノエ島・惑星ZDR・二ウェンの森・秀尽学園。amazon.co.jp/dp/4828421033/ リンクWikipedia アドラー心理学 アドラー心理学(アドラーしんりがく)、個人心理学(こじんしんりがく、英: individual psychology)とは、アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)が創始し、後継者たちが発展させてきた心理学の体系である。個人心理学が正式な呼び方であるが、日本ではあまり使われていない。 岸見一郎によれば、もともとはジークムント・フロイトとともに研究していたが

【ホッテントリしてたので宣伝】私がこのテーマに関して思い出す作品の内、もっともおすすめな作品は「聖☆高校生」です。 聖☆高校生 11 (ヤングキングコミックス) 作者:小池田 マヤ少年画報社Amazon①性被害者ポジであった自分が加害者ポジになったときの衝撃をどう受け止めるか ②自分の性被害をどう克服するか ③自分の罪とどう向き合うか。④あこがれの人が犯罪行為をおかしていたときにどのように向き合うべきか。だいたいこのテーマについて考えるべき要素が一通り体験できます。そういうの抜きにしてもおすすめしたい超ド級名作。あと、個人的な趣味としては「花やしきの住人たち」も好きなのですが、こちらは暗すぎるので人を選びます。本当はfont-daさんに解説していただきたいところですが…… https://anond.hatelabo.jp/20230413000017anond.hatelabo.jp

フェミニズムの旗手にして、おひとりさまの生き方についてベストセラーを著してきた上野。2年前、彼女は、ある男性を介護の末、看取る。「結婚という制度がイヤ」と公言してきた上野は、彼と密かに入籍していた。 東京都心から西に約170キロ。八ヶ岳高原ラインを抜けると、あたりの風景は一変する。大滝湧水が溢れ、眼前には南アルプスの山々が迫る。高原野菜農園やニジマスの養殖場が八ヶ岳南麓の日常風景だ。 集落の一角にエメラルドグリーンの山荘が建てられたのは、今から25年前の夏のこと。針葉樹林に囲まれた山道「唐沢木漏れ日通り」には、間もなく好一対の男女の姿が頻繁に目撃されるようになった。20余り歳上の男性に寄り添っていた女性は、フェミニズムの旗手で社会学者の上野千鶴子氏(74)だ。 上野千鶴子氏 「当時から彼女は月に2〜3回、勤務していた東大のある文京区本郷から八ヶ岳に通っていました。愛車のBMWで深夜に出発し

鈴木邦男の正体は「右」か「左」か~「反米」「反共」「愛国」のあわいを生きた言論人 ほとばしる情念の魅力と危険を熟知しつつ、テロを防ぐ「対話の効用」をあえて選んだ 石川智也 朝日新聞記者 右派を代表する論客として知られた鈴木邦男(本稿では敬称を略させていただく)の訃報が流れたのは1月27日だった。 以来1週間、その死を惜しむ声は左派護憲リベラルからばかり挙がり、右翼から届く声は、控えめに言っても冷ややかなものが多かった。 「脱右翼」したリベラル言論人? 右派にありがちな「言論より行動」を否定し、テロを支持しない姿勢を鮮明にしていた。表現の自由を訴え、「愛国心の強制はいけない」と教育基本法改正に反対し、「自由のない自主憲法より自由のある占領憲法を」と言い続け、呼ばれるのはいつも護憲派の集会……。 朝日新聞や週刊金曜日にも、好々爺然とした表情の写真とともに自由主義擁護のご意見番として度々登場した

映画『ヒトラーのための虐殺会議』の公開で哲学者ハンナ・アレントがあらためて注目されている。 ユダヤ人大量虐殺政策を淡々と議決する戦慄のさまこそ、アレントが「全体主義」と名づけ、生涯をかけて対決した人間破壊の現象だからだ。 「全体主義」とは何なのか。アレントはいかに対決したのか。 アレントの思想のエッセンスがまとめられた入門書、現代新書100(ハンドレッド)『今を生きる思想 ハンナ・アレント 全体主義という悪夢』から見てみよう。 (本記事は『今を生きる思想 ハンナ・アレント 全体主義という悪夢』から抜粋したものです) 人間がしてはならないこと「これは決して起きてはならないことだった」 これがナチスによるユダヤ人の大量虐殺のニュースをはじめて聞いたときのハンナ・アレントの感想だった。 大量の人間が身にまとうもの一切を剥ぎ取られて殺される。まるで死体製造工場のように、生きるに値するかどうかで人間

問いかけに潜んだ問題点 「チコちゃんに叱られる!」は、2018年4月に放送が開始された、NHK総合テレビのクイズ形式の教養バラエティ番組である。5歳の少女チコちゃんが、日常のありふれた事象を取り上げ、大人たちに対しクイズを出題する。 当たり前すぎて改めて考えたこともない日常のことがらについて、大人たちがその背景などを理解しておらず、答えに窮したり曖昧なことを答えたりした時、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と罵倒するのが定番となっている。その後、一見分かりにくい短答を示し、その内容を研究者などの専門家がVTRで解説するという構成である。 番組のウェブサイトから、いくつかの問いを引用してみよう。 「いってらっしゃーいってお別れのとき、手を振るのはなぜ?」 「かんぱーいのときにグラスをカチン、なぜするの?」 「温かいみそ汁はなぜモヤモヤしているのか?」 「オセロはなぜ白と黒で争うゲームになったの

● 渡辺京二が、亡くなりました。敬称や敬語の類を使うのはこういう場合、自分としては理路の調律にさわるところがあるので、敢えてそれらは割愛します。 渡辺京二とは、「最後の人」でした。これは、自分が勤めていた大学で、彼が晩年、全国区の固有名詞として知られるようになるきっかけとなったあの『逝きし世の面影』を学生若い衆らと読んでゆく講義を足かけ10年ばかりずっとやってゆく中で、ゆっくりと確信するようになってきたことでもあります。 何の最後か。「思想史的知性」の最終走者のひとりだった、という意味での。このへん、手前味噌になりますが、自分が書いたものから引いておきます。 「この国の母語を環境とした、時期的には先の戦争が終わって後、高度経済成長の豊かさに後押しされて出現した、良くも悪くもそれまでとは様相の異なる新たな大衆社会状況と、そこに宿ったその他おおぜいのリテラシーに支えられた読書市場を介して可視化

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