インド洋の真ん中に浮かぶディエゴガルシア島は、最近、国際的な注目を浴びている。2025年4月、米国とイランの緊張が高まる中、米軍がこの島にB-2ステルス爆撃機を配備したことで、紛争の最前線として名前が挙がるようになったためだ。だが、この島の重要性はイランとの関係に留まらない。中国やインドとの地政学的競争でも、ディエゴガルシアは戦略の要衝として存在感を増している。この小さな環礁が、なぜ大国間のパワーバランスの鍵を握るのか。 ディエゴガルシア島とイラン 米国とイランの関係は、トランプ政権以降も緊迫の度を増している。2025年4月15、ニューズウィークの報道によれば(参照)、トランプ政権下でイランへの軍事圧力が強まり、ディエゴガルシア島にB-2爆撃機が最大6機配備された。この動きは、イランが支援するイエメンのフーシ派への警告や、ペルシャ湾でのイランのミサイル増強への対抗措置と見られる。イラン側メ
昨日扱ったニューヨーク・タイムズのアダム・エントゥース氏による詳細なウクライナ戦争内実の記事は、この戦争における米国の深い軍事的な関与を改めて印象付けた。が、その記事から浮かび上がってきたのは、単に軍事的な「支援国アメリカ」という単純な構図ではなく、米国内部の深刻な亀裂、ワシントンとキーウの間に横たわる認識のズレ、そして見過ごされがちな歴史の文脈とロシア側の忍耐強い対応ではなかった。まるで複雑なモザイク画のように、この戦争の雑然とした実像が透けて見えてくる。エントゥース氏の記事をきっかけに噴出した様々な疑問や考察は、私たちがこの戦争を理解する上で、また、いかに多くの「見えない部分」が存在するかを物語っている。 「一枚岩」ではなかった米国ウクライナ支援における米国の姿は、外からは一枚岩に見えたかもしれない。しかし、エントゥース氏の記事が示唆するのは、その内部、特に国防総省(ペンタゴン)と、
ウクライナ戦争における米国の関与について、米国時間3月29日のニューヨーク・タイムズにジャーナリストのアダム・エントゥスが『パートナーシップ:ウクライナ戦争の秘密の歴史 (The Partnership: The Secret History of the War in Ukraine)』(参照)と題する、ほぼ一冊の本に匹敵するほどの詳細な記事を公開し、この問題に関心を寄せる人々で大きな話題となった。記事は、ウクライナ、アメリカ、イギリス、ドイツ、ポーランド、ベルギー、ラトビア、リトアニア、エストニア、トルコの政府、軍事、情報機関の関係者と1年以上にわたり、エントゥス氏が300回以上のインタビューを実施してそれをもとに書かれたものである。いずれ日本語で正式な全文が書籍などで出版されることになるだろうが、すでに国際水準でウクライナ戦争を考察する人々にとっては常識になっているので、ここでも今後
アメリカ政府高官が、ロシアの侵攻を受けるウクライナが大統領選挙の実施で合意し、NATO(北大西洋条約機構)への加盟も事実上断念したとの見方を示しました。トランプ政権のウィトコフ中東担当特使は3月21日に公開されたインタビューで、「ゼレンスキー大統領にとって取引をまとめるのに絶好の機会だ」と述べた上で、ウクライナが大統領選挙の実施に合意したことを明らかにしました。 しかし、具体的な実施時期などは明言しませんでした。ウクライナの大統領選挙はロシアの侵攻により延期されていて、ゼレンスキー氏の大統領としての正当性を巡っては、ロシアのプーチン大統領が疑問視する主張を繰り返しているほか、トランプ大統領も選挙の実施を求めています。 また、ウィトコフ特使は、ゼレンスキー大統領が「NATOに加盟できないことをほぼ認めている」と主張し、ウクライナがNATO加盟を事実上断念したとの持論を展開しました。 この

サウジアラビアで11日に行われた米国との会合で「ロシアとの30日間の停戦」という米提案にウクライナが同意したことは、同国が事実上、露軍の占領下にある領土の武力奪還を断念する用意があるとの立場を示したことを意味する。侵略された側のウクライナにとって苦渋の決断となるが、戦場で劣勢にある上に国力も疲弊している同国は、譲歩に応じてでも米国の支持を取り付け、将来的な対露交渉で可能な限り「引き分け」に近い条件での停戦を実現したい思惑だとみられる。ウクライナのゼレンスキー大統領は従来、「領土は放棄しない」という原則的立場を維持してきた。「占領地域は占領者の所有物になる」という戦争の歴史的慣例を考慮していたためだ。 しかし、ウクライナ軍は過去1年半以上、兵力や火力で勝る露軍に劣勢を強いられ、武力による領土奪還は現実的に困難となっている。露軍の攻撃で国内の重要インフラが次々と損傷したほか、国民の国外避難な

ザルジニー(左)はゼレンスキー(右)より人気が高い FROM LEFT: KANIUKA RUSLAN-UKRINFORM-SIPAUSA-REUTERS, NICOLAS MAETERLINCK-POOL-REUTERS <トランプ陣営はウクライナ側に停戦合意を締結させるよう圧力をかけるが...>トランプ米大統領の側近4人がウクライナのゼレンスキー大統領の政敵、ティモシェンコ元首相やポロシェンコ前大統領と秘密裏に会談したと、米ウェブメディアのポリティコが3月5日報じた。ウクライナで戦時の大統領選が可能かを話し合ったという。 ティモシェンコとポロシェンコは米政権側との接触は認めたが、戦時下の選挙には反対とフェイスブックで表明した。ウクライナ戦争が始まってから、同国では戒厳令が敷かれ選挙も禁じられている。ウクライナのストラナ紙によれば、トランプの側近はザルジニー前軍総司令官など大統領選
ロシア西部クルスク州で、ウクライナ軍に向けて発射されるロシア軍のロケット弾=2月(ロシア国防省提供、AP=共同) 【キーウ共同】英紙デーリー・テレグラフは7日、ウクライナ軍兵士約1万人が越境攻撃するロシア西部クルスク州でロシア軍による包囲の危機にあると報じた。トランプ米政権がウクライナへの機密情報の提供を一時停止して以降、同州でロシア軍が攻勢を強めており、ウクライナ軍は窮地に立たされている。 テレグラフによると、機密情報の提供が停止された以降の数日間で、ロシア軍はクルスク州スジャ近郊の防衛線を突破し、ウクライナ軍の重要補給路の遮断を狙い攻撃している。ロシア国防省は8日、スジャ近郊で3集落を奪還したと発表。ウクライナ軍が近く、同州からの撤退を余儀なくされるとの観測も出ている。ウクライナ軍は昨年8月にクルスク州への越境攻撃を開始。約2週間で約1300平方キロを制圧したが、ロシア側の奪還が続き

◼️Secretary of State Marco Rubio With Sean Hannity of Fox News INTERVIEW MARCO RUBIO, SECRETARY OF STATE MARCH 5, 2025 質問: 先週の金曜日に同席されていましたね。 少し現実離れした感じがしました。金曜日に私は彼が戻ってくると言いましたが、その通りだったと思います。昨日のXへの手紙と投稿には、この事態を軌道に戻すために必要なことはすべて書かれていました。 あなたの考えは? ルビオ国務長官: 先週の金曜日について理解すべき重要なことは、先週の金曜日のことではないと思います。 それに至るまでのすべてです。 トランプ大統領がこれを長期にわたる膠着状にある紛争と見なしていることは、最初から非常に明らかでした。率直に言って、これは核保有国ーーウクライナを支援する米国とロシ

2025年2月28日、ホワイトハウスでドナルド・トランプはウクライナの大統領ウォロディミル・ゼレンスキーと激しく言い争い、会談は決裂した。その場で飛び出したトランプの言葉、「プーチン氏は私と一緒に多くの苦難を経験した」「詐欺師のハンター・バイデン」「民主党のぺてん」は、一見すると脈絡のない怒りの爆発に聞こえる。NHKが全文報道しているので、そこから該当部分を再録する。トランプ大統領 「どうするも何も、今あなたの頭に爆弾が落ちたらどうするのか。彼ら(ロシア)が破ったらどうなるのかなど、知ったことではない。バイデンと(の合意)なら破るだろう。バイデンへの敬意はなかった。オバマにも敬意はなかった。 私のことは尊敬している。プーチン氏は私と一緒に多くの苦難を経験した。うそっぱちの魔女狩りに遭って、彼とロシアは利用された。ロシア、ロシアと。聞いたことがあるか。詐欺師のハンター・バイデン、ジョー・バ
【パリ=三井美奈】フランスのマクロン大統領は、欧州独自の核抑止力について「議論する用意がある」と述べた。1日、自身のSNSに発言の動画を掲載した。米欧同盟が転機を迎える中、フランスが保有する核兵器を欧州防衛に役立てることに意欲を見せた。 この動画は2月28日、マクロン氏が訪問先のポルトガルで行った現地テレビとのインタビューの録画。マクロン氏は、欧州は米国に依存しない安全保障の構築が必要だと訴えたうえで、「もし(欧州の)仲間がより独自性を強め、抑止力を持とうとするならば、われわれは論議をオープンにせねばならない」と述べた。フランスの核ドクトリンでは、常に欧州が考慮されてきたとも主張した。 マクロン氏は欧州の独自安保構築が持論で、かねてからフランスの核抑止力の活用を提案してきた。2日にロンドンで行われる欧州主要国の首脳会合を前に、問題提起を狙ったとみられる。動画は、米ホワイトハウスでトランプ米

(左から)ウクライナのゼレンスキー大統領と、トランプ米大統領、バンス米副大統領=2月28日、米ホワイトハウス/Jim Lo Scalzo/EPA-EFE/Shutterstock viaCNN Newsource (CNN) 米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が決裂したことを受け、西側諸国の首脳らが一斉にウクライナへの支持を表明している。 2月28日の会談決裂に先立ち、英国のスターマー首相は27日にホワイトハウスでトランプ氏と会談。「侵略者」を利する和平合意であってはならないと訴えていた。スターマー氏は決裂後にもトランプ、ゼレンスキー両氏と会談した。 首相府の報道官は、スターマー氏が「ウクライナへの揺るぎない支持を継続し、同国の主権と安全保障に基づく恒久平和への道を見いだすために尽力している」と述べた。 スターマー氏は1日、22.6億ポンド(約4270億円)の対ウ
もうどう頑張ってもウクライナはロシアに勝てないのに抵抗する意味あるんか? しかもそのために欧米を巻き込んで世界大戦する価値があるんか? 一旦停戦して領土を明け渡すしかないでしょ 「日本や台湾が同じような立場になったら」 とか言うけど、同じような立場になったら領土を明け渡すしか無いでしょ 日本軍が米軍にバチクソ攻め込まれて空爆されてる状況下でソ連に泣きついて 「ソ連さん、アメリカと戦ってください」 とかお願いしてもアホかって思うだけでしょ そもそも戦争にならないように外交上の努力と自己防衛すべきであって 欧米に頼ってたらダメっていうだけだと思うんだがトランプは首尾一貫してアメリカのことしか考えて無くて 「世界の警察にはならないから自己防衛しろ」 っていうスタンスなだけ 地球の裏側まで駆けつけて欧米の価値観を押し付けるようなやり方の方がどうかと思うんだけど違うんか

トランプ米大統領は米国時間の2月28日、ウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで会談し、ウクライナの鉱物資源の権益に関する合意文書に署名する予定だったが、渦中で厳しい口論となり、会談は決裂した。合意文書には署名されず、共同記者会見も中止となり、ゼレンスキー大統領はホワイトハウスから追い出された。 まず、口論の流れをまとめておこう。 発端:バンス副大統領とゼレンスキー氏の対立 状況: 記者からの質問でトランプ氏がロシアとの関係性について問われた後、バンス副大統領がバイデン政権の対ロ政策を批判し、「平和への道は外交かもしれない」と発言。 ゼレンスキー氏の発言: 「感謝はしています。しかし、あなたが話す『外交』とは何ですか? プーチンはミンスク合意を破り、2014年に我々の東部とクリミアを占領しました。オバマ、トランプ、バイデン、そして今またトランプ大統領と、アメリカの大統領は変わりまし
米ホワイトハウスで、米ウクライナ首脳会談後の記者会見のために用意されていたマルコ・ルビオ国務長官の座席を示す名札(2025年2月28日撮影)。(c)Tierney L Cross/AFP 【3月1日 AFP】米国のマルコ・ルビオ国務長官は2月28日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、ドナルド・トランプ大統領と衝突したことについて謝罪するよう要求した。トランプ氏とゼレンスキー氏がホワイトハウスの大統領執務室で激しい口論を展開した後、ルビオ氏は米CNNに対し、ゼレンスキー氏について、「会談をこのような形で終わらせ、われわれの時間を無駄にしたことを謝罪すべきだ」と主張。 さらに、ゼレンスキー氏が紛争終結を望んでいるかどうかも疑問視した。(c)AFP

前回:ウクライナ紛争の背景にあるエネルギー事情(その1)ウクライナの天然ガス事情であるが、先ず70年代からウクライナは欧州でも有数の天然ガス産出国であり、まだソ連邦の一部であった75年のピークには、年産651億m³を産出する純輸出地域だったとの記録がある。その後次第に生産量が減少し、2012年ごろには黒海でのガス田を中心に年産120億m³の水準にまで落ち込んでいて注1) 、現在ウクライナは天然ガスの純輸入国になっている。天然ガスが不足してきたこのウクライナとロシアの間には、ソ連邦の一部であったウクライナに旧ソ連が格安でガスを提供していたものの、その後ソ連邦の解体とウクライナの独立に続く西側傾斜を受けて、ロシアが天然ガス価格を大きく引き上げるという確執が始まった。その後パイプラインでウクライナを通って欧州に輸出されるロシアの天然ガスを、ウクライナが中間抜き取りしているのではないかという疑惑

2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻が、世界に激震を走らせている。戦闘が長引く中、ロシアが停戦条件として挙げているのは、①ウクライナの非軍事化、②ウクライナの中立化(NATO非加入の保証)、③東部ドネツク州、ルガンスク州の独立承認とクリミア半島に関するロシアの主権承認、といった事項である。これを受けて、プーチン大統領の侵略目的は、欧米寄りのスタンスをとるウクライナを「ウクライナとロシアはもともと一体不可分」であるとして、ロシア側に取り込むことで「大ロシアの復活」を狙っているといった、地政学的な視点からの論評が目立つ。確かに歴史的経緯や安全保障上の観点からこうした説明はつくのだが、本稿では実はその裏にはもう一つの隠れた事情=ウクライナとロシアの間のエネルギーを巡る確執があるのではないかという仮説を提起してみたい(あくまで外形的な情報に基づく仮説であり、確たる根拠があるわけではないこ

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