将棋倶楽部24は、あるサラリーマンの「あったらいいな」から生まれた。彼の名は久米宏。富士ゼロックス(現在の富士フイルムビジネスイノベーション)の技術者で、プライベートでは筋金入りの愛棋家だった。 浜松市出身の久米は高校時代に将棋を覚え、プロ入りに憧れるほどの腕前になった。しかし身近に対戦相手がおらず、好敵手を求めて各地を転戦した。そんな自身の苦労からオンライン対局サービスを思いつき、社内ベンチャー事業募集の好機を生かして実現させた。 当初数十人しかいなかったユーザーは、着実に増えていった。それに伴いレベルもぐんぐん向上。気付けばプロ棋士も匿名で利用するガリバーサイトに成長していた。退職してサイト運営に専念した久米は、当時日本将棋連盟の会長だった米長邦雄に請われ、連盟に移った。将棋倶楽部24も連盟唯一の公式サイトに。その歩みは、ある種のシンデレラストーリーのようだ。 かつてプロを目指す者は将