今日10月6日は旧暦8月15日、いわゆる中秋である。中秋といえば、禅僧にとって月を愛でながら偈頌を詠む、そんな日である。そこで、拙僧もかつての祖師方が詠まれた偈頌を拝し、味わってみたいと思う。 仏の威神に依りて宮殿明らかなり。千光赫赫一時に生ず。 人間縦い中秋の月を愛すとも、天上に涯り莫し半段の晴。 『永平広録』巻7-521上堂(中秋上堂) これは、道元禅師が建長4年(1252)に行ったと思われる中秋の上堂の末尾に付されている偈頌である。この上堂の主題は、『大智度論』から引きつつ、月食が悪魔によって引き起こされていたが、その悪魔を釈尊が教化し、月は危機を脱したという話である。そこで、道元禅師は釈尊が護持された月の様子を讃歎して、以上のように詠まれたのである。 意味としては、仏の威神力によって、月宮殿は明々と聳えており、千の光が赫々と一時に生じた。人間界から中秋の月を愛しているとしても、天上