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このようなささいな出来事が、ロシアに侵攻されたウクライナや、イスラエル軍に攻撃されているガザのパ...このようなささいな出来事が、ロシアに侵攻されたウクライナや、イスラエル軍に攻撃されているガザのパレスチナ人の窮状よりも大きな注目を集めるのはなぜだろうか。それはこの社会が不正に満ちているからではなく、わたしたちが道徳が過剰になった世界に生きているからだと述べるのが、ハンノ・ザウアーの『MORAL 善悪と道徳の人類史』(長谷川圭訳/講談社)だ。ザウアーは1983年生まれのオランダの哲学教授で、最新の進化論や人類学の知見を上手にまとめて、道徳の起源とその歴史を論じている。 協力こそが「わたしたちが人間である理由」 道徳についての最大の謎は、「ヒトはなぜ協力するのか」だ。なぜならほとんどの場合、相手の要求を拒否し、ときには相手をだまして自分の利益を追求することが、生存と生殖の可能性を最大化するという意味での進化の最適戦略になるからだ。ヒトにもっとも近い種であるチンパンジーは、共同で狩りをすること

















