福岡伸一氏が提唱する「動的平衡」は、多くの人にとって「身体の組織や細胞が常に作り変えられ、更新され続けている」という現象を表す比喩的な表現にすぎないと理解されているかもしれない。しかし、「動的平衡」に基づく生命観は、現代生物学の知見や理論とは整合しない。さらに福岡氏は、その生命観をもとに、生命に関するさまざまな誤った説明を広めている。本稿では、この「動的平衡生命観」の内容を解説するとともに、その問題点を指摘する。なお、問題点を詳しく論じているため、やや長い論考となっている。概要を知りたい方は、各項目の要約や最後の「動的平衡がもたらす問題」から読み始めていただきたい。 はじめに 福岡伸一氏の提唱する「動的平衡」による生命観は、多くの一般読者や一部の人文系学者に受け入れられている。特に、2025年、大阪・関西万博において、《いのち動的平衡館》が建設され、注目を集めている。 「体を構成している

ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか?~進化の仕組みを基礎から学ぶ~ (光文社新書) 作者:河田 雅圭光文社Amazon本書は進化生物学者河田雅圭による進化の一般向けの解説書になる.河田は新進気鋭の学者であった1990年に「はじめての進化論」を書いている.当時は行動生態学が日本に導入された直後であり,新しい学問を世に知らしめようという意欲にあふれ,かつコンパクトにまとまった良い入門書だった.そして東北大学を定年退官して執筆時間がとれるようになり,その後の30年以上の学問の進展を踏まえ,改めて一般向けの進化の解説書を書いたということになる.ダーウィンの議論の今日的当否を問うような印象の題名だが,それは本書の極く一部の内容で,基本的にはいくつかの誤解が生じやすいトピックを扱いつつ進化とは何かを解説する書物になっている. 第1章 進化とは何か 1.1 そもそも進化とはなんだろうか? 第1章第


私のタイムラインでは、定期的に「人類はASD(自閉スペクトラム症)的な方向に進化していく」「未来の人類はもっとASD的だ」といった内容の文字列が流れていく。そうした文字列を書いている人の属性はさまざまで、そう思っている人が結構いるんだろうなと思っている。 しかし、人類(ここからはヒトと書く)はASD的な方向に進化できるのだろうか? 特にもし、日本の現在の環境下が続くと考えた時に、ASD的な特性が日本人の多数派になっていくとは考えづらい。そのことを文章にしておきたくなった。 でも、肝心なのは性選択で勝ち残れるかどうかじゃないの?2023年の12月に「ヒトはASD的な方向に進化していく」的なお話が目に付きやすくなった引き金は、たぶん、東北大学の研究グループの発表だろう。yahooニュースでは以下のように報じられている。 news.yahoo.co.jp 年を取った男性の精子は、より若い男性の


血縁者同士で子供をなす「近親交配」は、ほとんどの社会でタブー視されています。 しかし一部の人々、特に王族たちはかつて、自らの高貴な血筋を守るために近親婚を積極的に行っていました。 その代償は大きく、一族の遺伝的多様性が乏しくなって、体が脆弱であったり、病気にかかりやすくなったのです。 このように近親交配は人・動物を問わず、”種の存続”にとって不利に働くものと考えられています。 ところがノルウェー科学技術大学(NTNU)の研究により、近親交配を高度に進めることで逆に種を繁栄させたトナカイがノルウェーの孤島に存在することが判明しました。 遺伝的多様性は乏しくなるはずなのに、彼らはどうして繁栄できたのでしょう? 研究の詳細は、2023年9月1日付で科学雑誌『iScience』に掲載されています。 These reindeer survived, isolated, for 7,000 years


AIMの構造 IMはシステイン(アミノ酸の一種)を多く有するSRCRというドメインを3 つ持つ、約40kDaの血中タンパク質である。通常血中では、巨大なIgM(免疫グロブリンM)五量体に結合して存在しており、尿中には移行しない。 1986年に東京大学医学部を卒業した宮﨑先生は、東京都小平市の病院で働いていた研修医時代、ふと手にした専門誌で、当時日本で初めて遺伝子組み替えマウスを作った熊本大学の山村研一先生のことを知り、「とにかくこの先生のところに勉強しに行くしかない」と思い立ちます。その後免疫学の研究をさらに深めるためフランスとスイスに留学しました。スイスでは、名門バーゼル免疫学研究所で新しい遺伝子を発見。白血球の一種であるマクロファージを死ににくくする働きがあることを試験管で確認し、apoptosis inhibitor ofmacrophageの頭文字を取って自らAIMと名付けました


世界初の「歯生え薬」の実用化に向けた研究が、日本のチームによって進められている。先天的に永久歯の数が少ない人に対し、薬を投与して歯を生やすことを目指した治験を2024年7月から始め、30年の実用化を目標とする。動物実験の段階だが、この薬を使って乳歯、永久歯に次ぐ「第3の歯」を生やすことにも成功した。歯生え薬は、歯の再生という新たな歯科治療を切り開くのか。 「歯を生やすのは歯医者の夢。大学院生の頃から、ずっとそのテーマに取り組んできた。絶対にできると確信がありました」。研究を主導する北野病院(大阪市北区)の高橋克・歯科口腔(こうくう)外科主任部長は、研究を始めた1990年代をそう振り返る。その決意から30年あまり。まもなく歯生え薬の治験開始という段階にこぎ着けた。 歯の数が生まれつき少ない「先天性無歯症」の人は、人口の約1%いる。特に6本以上の歯の欠損は遺伝が大きく関係している遺伝性とされ、


データ提供 腱細胞でのメカノセンサーPIEZO1が個体の運動能力を向上させることを発見 [学校法人 順天堂] ― 健康寿命増進のための発展応用へ期待 ― 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科システム発生・再生医学分野の淺原 弘嗣教授、中道 亮非常勤講師は、スクリプス研究所(Scripps Research、Department of Molecular Medicine)、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の福 典之先任准教授、北海道大学、広島大学、ブライトン大学(University of Brighton)、National Commission on Science andTechnology(ジャマイカ)、岡山大学との共同研究で、機械刺激応答性カルシウムチャネルであるPIEZO1※1を腱細胞のみで恒常活性させることで、個体のジャンプ力・走行速度といった運動能力が向上すること


ロシア人への「正義ある暴力」は悪くないと考える日本人 「ロシア」への怒りを爆発させる「正義の日本人」が増えている。 例えば、読売テレビが4月15日に報じたところによれば、日本が好きになってロシアから7年前に来日して、大阪府内に住んでいる女性ユーチューバーの元には、こんなコメントが多く寄せられているという。 「ロシア人は詫びて死んでブタの餌になればいい」 「ロシア人全員が悪い!在日ロシア人は外出気をつけろ!」 こういう話を聞くと必ず「こんなアホは日本人の中でもほんのひと握り」と言い訳をする人がいるが、この女性のSNSには毎日のように誹謗中傷が投稿され、これまで300人以上をブロックしてきたという。 事実、「ひと握りのアホ」では説明できないほど多くのヘイトクライムが報告されているのだ。あるロシア食品店では看板が破壊された。またあるロシア料理店では「死ね」「ボケ」などの脅迫電話もかけられている。


もうなんか間違ったことしか書いてなくて増田が何でこんなもの書こうと思ったのかちょっと意味が分からないんだけど 一応気になったところだけ訂正・説明を入れておく。(ほぼ全文にわたっているが…) 途中で「なんでこんな中間テストの採点みたいなことやってんの…」みたいな気分になったけど 万が一これを読んで本気にしている人がいるといけないので義務感で最後まで書きました。 あまりの衝撃に最初からテンション高いですけどね。もう疲れたからこのまま上げます。 なんなんやいったい... 遺伝病の断種は、遺伝病の根絶について特に有効ではないと考えられています。まず、潜性遺伝病の場合はどうでしょうか。これは、両方の染色体に、多くは遺伝子機能欠失型の遺伝子変異があると起こります。親は、片方しか持っていなければ健康なのですね。すると、両方の遺伝子変異を持つ遺伝病患者を断種させたところで、片方だけを持つ親が世の中にたくさ

多型(たけい、また多形、あるいは多形性:英語 polymorphism)とは、生物において、本来同一であるはずのものが不連続的に異なった形態を示すことを指す。たとえば同一種の個体間で形態が異なる場合や、個体の中に複数の同一の器官があって、それらの間に差異がある場合などがある。 特に、2通りに分かれる場合が多く、その場合二形(性)という。 多型は表現型多型と遺伝的多型に分けられる。表現型多型とは二つ以上の異なる表現型が同じ種の集団の中に存在する状態を指す。遺伝的多型とは同じ生物種の集団のうちに遺伝子型の異なる個体が存在すること、またはその異なる遺伝子・DNA配列のことをいう。 真社会性の動物であるアリのカースト制は表現型多型の典型例である。このような多型は非常に一般的に見られる。それは生物多様性、遺伝的変異、適応に関連して維持されている。多型の他の代表例は、昆虫、ほ乳類や鳥類に見られる性的二

高橋孝雄(たかはし・たかお) 慶應義塾大学医学部 小児科主任教授 医学博士 専門は小児科一般と小児神経 1982年慶応義塾大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院小児神経科で治療にあたり、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で現在まで医師、教授として活躍する。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。 慶應義塾大学医学部の小児科教授である高橋孝雄医師による「高橋たかお先生のなんでも相談室」。テーマはママのお腹の中にいる胎児の頃から幼児までの「環境要因」について。 胎教、早期教育という言葉もあるほど、スポーツでも勉強でも早いうちからトレーニングを始めたほうがその子のためになると親が考えるのは不思議なことではありません。ただ、脳の発達に精通している小児科医の立場


のりを分解する酵素を発見 フランスの研究グループは2010年、のり(海苔)の成分であるポルフィランを分解する新しい酵素を海に住む細菌から発見しました。この酵素は寒天を分解する酵素と似ていましたが、寒天は分解できず、のりのポルフィランだけを分解するためだけに発達した特別な酵素であることが分かりました。 彼らがその酵素を作り出す遺伝子をもつ生物が他にもいないか探してみたところ、海に住む細菌だけでなく、人のお腹から採取した腸内細菌の遺伝情報の中に、その遺伝子が存在していることが分かったのです。 しかも、その特別な腸内細菌は日本人にのみ見つかったとのこと。彼らは比較のために北米人の腸内細菌を調べてみましたが、発見できなかったそうです。 腸内細菌の働き 人間は栄養分を吸収するために、食べた物を酵素により分解・消化する必要があります。「腸内細菌」とは、私たち人間の腸の中に住んでいる細菌のことです。「細


人間のDNAの一部は我々の祖先に由来しないことが判明した。”外来”遺伝子が組み込まれているというのだ。科学者によれば、我々は太古の時代から共生してきた微生物の”外来”遺伝子を獲得してきたそうだ。この発見は、動物の進化が先祖から受け継がれる遺伝子のみに依存するという従来の見方を一変させる可能性があり、進化のプロセスは依然として継続中であることを示唆している。 『ゲノム・バイオロジー』誌に掲載された本研究は、同じ環境中で生息する生物間で起きる遺伝子の水平伝播に焦点を当てたものだ。 「これは動物同士で起きる遺伝子の水平伝播が広範囲に及ぶことを示した初の研究です。この中には人間も含まれており、数十か数百もの活性”外来”遺伝子が生じています。驚くべきことに、稀という表現とは程遠く、おそらくほぼ全ての動物の進化に現在進行形で影響を与えているでしょう。つまり、進化の見方を再検討する必要があるということで


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