日経新聞にシムズのインタビューが載って、いろいろ反響を呼んでいるようだ。2月1日に来日すると日本のマスコミも物価水準の財政理論(FTPL)に興味をもつと思われるので、これまで書いた記事をまとめておこう。 まずFTPLが「財政膨張策」だというのは誤解である。シムズはこう語っている。 物価引き上げに必要なのは、日本政府が政府債務の一部を、増税ではなくインフレで帳消しにすると宣言することだ。政府が2%の物価上昇率目標を掲げ、達成するまでは消費税増税を延期する。 これを彼の論文では実質債務のデフォルトと呼んでいる。名目債務はデフォルトできないが、実質債務はインフレで踏み倒せるという意味だ。彼は「インフレ税」で政府債務を縮小せよと提言しているのだ。そのしくみは、理論的には単純だ。FTPLは、コクランの書いた次の均衡条件に要約できる。 実質政府債務=名目政府債務/物価水準=財政黒字の現在価値 (1)


アベノミクスや「異次元緩和」は壮大な空振りに終わったが、これは著者を含めてほとんどの経済学者が予告してきたことだ。したがって本書の前半はこれまでの標準的な経済学の解説だが、後半はちょっとトーンが変わっている。それは世界的に財政政策の時代に入ったという認識だ。 大学で教わる「ケインズ経済学」は1980年代に死んで、20世紀末にケインズ政策を採用する先進国は日本以外になくなっていた。財政政策で「雇用を拡大」するというのは幻想であり、長期的にはインフレをもたらすだけだから、経済の微調整は金融政策でやることが常識になった。 しかし2000年代に日本がゼロ金利に突入して金融政策がきかなくなり、量的緩和も効果がなかった。2008年にアメリカが金融危機に陥って非伝統的な金融政策を採用し、大規模な財政出動が始まったが、ケインズの時代に戻ったわけではない。財政政策で持続的に成長率を上げることはできないが、財


話題になっている『文藝春秋』の浜田宏一氏の記事を読んだ。彼は「自分の考える枠組に変化があった」といってリフレ論を撤回し、日銀の量的緩和がきないのは「財政とセットで行なっていないからだ」という。つまり財政赤字を増やせば景気がよくなり、インフレで借金が減るので一石二鳥という話だが、本当だろうか? 結論からいうと、理論的には本当である。くわしいことは私のブログで紹介したCochraneの論文を読んでいただきたいが、超簡単にいうとFTPL(物価水準の財政理論)は、次の式に要約できる。 物価水準=名目政府債務/財政黒字の現在価値(*) 名目政府債務を所与とすると、物価水準は財政黒字(右辺の分母)が小さくなると上がる。したがって毎年の財政赤字が増えると、将来の黒字の現在価値(正確にはプライマリー黒字の割引現在価値)が減ってインフレになる。これは思考実験をやれば明らかだ。 たとえば、あす安倍首相が記者会


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