なぜ1%と信じられたのか?なぜ1%と信じられたのか? /Credit:Canvaヒトとチンパンジーは遺伝的にほとんど同じ──。 この考え方の象徴が「わずか1%の違い」という数字でした。 1970年代から2000年代にかけて行われた分子生物学的比較では、ヒトとチンパンジーのDNA配列の98~99%が一致することが報告され、長年にわたり広く引用されてきました。 実際、2005年にチンパンジーのゲノム概要配列が初めて発表された際にも、一塩基レベルで見たヒトとの差異は約1.2%に過ぎないと強調されました。 しかし、この「1%」という数字には重要な前提と限界がありました。 それは「比べられる部分(揃って配列が読めた部分)のみを比較した値」であるという点です。 つまり、当時の技術では解読が難しく比較から除外されていたゲノム領域が多数存在し、それらを考慮に入れていなかったのです。 ヒトや大型類人猿のゲ

https://bbarchive240815a.peatix.com/ 当日語り切れなかった部分を含めて資料を公開する。 宇宙・動物・資本主義 作者:稲葉振一郎 晶文社Amazon *自己紹介 稲葉振一郎 明治学院大学社会学部教授 専攻はとりあえず社会哲学英語の学術論文は宇宙倫理学に集中している。 日本語ではAI倫理学関連の論文もある。 社会学史、経済学史、政治哲学、およそ思いついたことは何でも書いてみる人生。 0.コメントへの回答と反問 *本書は総じて深層学習以前のAI像にとどまっており、それゆえの限界があるので、歴史的コンテキストを振り返ると、 ・機械学習以前のAI・ロボット像=人工生命・人造人間 理想的極限においては自律的エージェントとなる。 哲学の主題としてのAI・ロボット:「どのような機械であればそれを自立した知性と呼びうるか?」という思考実験の課題(その系論としてのAI・

世界の総人口が80億人になった。本来の地球生態系で養える2倍の増加だ。それを可能にしたのは第一次世界大戦前夜のドイツで生まれた「ハーバー・ボッシュ法」という空中窒素の活用技術の発明だ。 2個の窒素原子が結びついた窒素分子は大気の8割を占めている。窒素はDNAやタンパク質の構成素材で、動植物にとって重要な元素だが、無生物界(大気)から生物界への補給ルートが極めて細かった。 マメ科植物と暮らす根粒細菌などだけが窒素分子を2つの原子にほぐし、植物が使えるアンモニアの素材にすることで、生物界に供給していたのだ。 マメ科植物が枯れると窒素肥料となり、他の植物が育ち、草食動物が食べ、肉食動物がそれを食べるという窒素循環を利用して人類も生存してきたわけだ。 迫る飢餓の足音産業革命後、世界人口は急増し、1900年頃には約20億人になっていた。 だが欧米諸国は喜ばず、逆に飢餓の予感におびえていた。社会の進歩

ロビン・ダンバーは、彼が提唱した「ダンバー数」とともに、その名が広く知られている研究者である。ダンバー数とは、ヒトが安定的に社会的関係を築ける人数のことであり、具体的には約150と見積もられている。ダンバーは、霊長類各種の脳の大きさ(とくに新皮質の大きさ)と集団サイズの間に相関関係があることを見てとり、ヒトの平均的な集団サイズとしてその数をはじき出したのであった。 さて、そんなダンバーが本書で新たな課題として取り組むのが、「宗教の起源」である。人類史において、宗教はどのようにして生まれ、どのように拡大を遂げていったのか。宗教に関する広範な知識に加えて、専門の人類学や心理学の知見も駆使しながら、ダンバーはその大きな謎に迫っていく。 ダンバーも言及しているように、現生人類の歴史のなかで、宗教は個人や社会に対していくつかの利益をもたらしてきたと考えられる。その代表的なものを5つ挙げるとすれば、(

1 初期人類と言語的人類はまったく別もの 人類がアフリカで生まれたことは、いまや常識である。 だけどアフリカのどこで、いつ、どのように生まれたのかということになると、まだ確かなことはわかっていない。どうしてわかっていないのだろう。 そもそも、人類という言葉(概念)が、広すぎるところに問題がある。ラーメンの歴史を知りたいのに、おのおのが自分の好きな麺を論じているのだ。 科学雑誌ですら、「人類の起源」というタイトルで、直立二足歩行する猿人を論ずることもあれば、言葉を獲得した現生人類を論ずることもある。そのために議論が錯綜し、混乱するのだ。人類学者や言語学者も、この問題を放置したまま議論を続けている。 「人類」というひとつの言葉で、「300万年前に直立二足歩行しはじめた初期人類」と、「7万年前に肺の気道の出口である喉頭が食道の途中にまで降下して、母音の発声が可能になった言語的人類」とを区別せずに


ニワトリ無くして、人類無し! もし世界からニワトリが消えたなら? きっと各地でパニックが起きるに違いない。鶏肉は牛肉・豚肉などと比べて国際的な生産・消費量が急増しており、とりわけ新興国・途上国での需要がぐんと伸びている。安価で栄養価の高い肉や卵は、多くの庶民の健康を陰で支えてきた。 その膨大な加工食品も含めて、人類にとってますます不可欠な食材となり、成長する巨大都市のエネルギー源にもなっている。 もし私たちが他の惑星へ移住する時がきたならば、最も重要なタンパク源としてニワトリをまず同行させるだろう。実際、NASAはニワトリが惑星間旅行に耐えられるかどうかの実験をしており、可能と結論づけている。食材だけではない。インフルエンザの世界的流行を食い止めるのにも、ニワトリは重要な役割を担っている。インフルエンザワクチンを作る入れ物として、卵が使われているのだ。 「宇宙船よりも複雑な構造」を持つ卵


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