
アドルフ・ヒトラーの遺体から立ち昇る煙が途絶えた後、この人は陰謀家ではなく、人々に将来の政策を隠してきたわけですらなく、やらかす予定の政策はとっくの昔の著作にかなり明確に述べられていたことを人々は思い出した。今金融市場を震撼させている第二次トランプ政権の関税ヘッドラインも同様であり、事前に共有されていた関税観というものがあるならば、それを知らないまま無尽蔵なヘッドラインに都度都度振り回されるのは避けたい。 ヘッドラインを乱発するトランプ政権の関税観はかなり明確で、 ・関税は財源確保(財政赤字対策)の手段であり、インフレを引き起こさずに利用できる ・関税によるコスト増は米ドル高によって相殺されるので米国経済への悪影響は限定的 ・関税を安全保障関連、財政、通貨政策と一体化させ戦略的に運用することが可能 である。特に「関税はインフレーショナリーではない」という確信は強固であり、そのロジックは、関

長かったこの2日間を、深夜の大学図書館で思い返している。 世界が注目するこの激しい選挙戦を、アメリカの大学のキャンパスで、それも公共政策大学院で迎えることができたのは、今後自分の留学生活を振り返っても大きなハイライトになるだろう。 だからこそ、眠い目をこすってでも自分が聞いたこと・思ったことを書き残しておきたいと思う。 熱気に包まれるキャンパス11月5日、大統領選当日のキャンパスは言わばお祭り状態だった。 選挙の論点を整理するイベントに続いて、学生・教授たちが一堂に会して開票速報を見守るライブビューイングが夜中まで続いた。どちらの候補がどの州を取った、という「当選確実」がディスプレイに大きく表示されるたびに、学生たちは大きく盛り上がった。 「マサチューセッツ」「ハーバード」と聞けば想像がつくかもしれないが、ここで学ぶ生徒たちの大半は民主党・カマラハリスを支持している。ハーバード大学があるマ


伊高 浩昭 / いだか・ひろあき。ジャーナリスト、立教大学ラテンアメリカ研究所学外所員、元共同通信ラテンアメリカ専門記者 関連ニュース▶︎▶︎ 【The Burning Issues】「ボルトン回顧録」から見えるベネズエラ政変の内幕(伊高浩昭)/【山田厚史の闇と死角+映像ドキュメント】ベネズエラの迫る危機/【この視点から】ベネズエラ報道は、どこまで真実を伝えているか~イシカワ駐日大使に聞く 『それが起きた部屋』に記述されたベネズエラ情勢トランプ米政権で2018年4月から2019年9月まで17ヶ月、安全保障担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏(71)が2020年6月23日に米国で刊行した暴露本『それが起きた部屋──ホワイトハウスの回顧録』(原題"The Room WhereIt Happened: A White House Memoir"、以下『回顧録』)には、ベネズエラ情勢につ


というタイトルの記事が眼に止まったので、訳したみた。なかなか面白い。 Why Trump's staff is lying?Bloomberg View 23 Jan 2017 by Taylor Cowen 発足したばかりのトランプ政権のもっとも際立った特徴の一つは嘘の政治的利用である。先週話題になったのは、ドナルド・トランプの報道担当官ショーン・スパイサーが「トランプは就任演説でアメリカ史上最多の聴衆を集めた」という明らかな虚偽を申し立てたことであった。この事件をてがかりに、リーダーが自分の部下に嘘を言わせるとき、彼は何をしようとしているのかについて考えてみたい。 誰の目にも明らかなことは、この指導者が大衆をミスリードしようとしており、彼の部下たちにも同じことをさせようとしているということである。多くの市民は事後にファクト・チェックなどしないので、大衆をミスリードすることは別に難しい

米英で起きた「負け犬の逆転劇」世界中が驚いた(僕も驚いた)、今回のアメリカ大統領選の結果の真なる意義について、きわめて早い段階で正確な論評を加えていた人物がいる。意外かもしれないが(いや、当然か)、それはイギリスの急進的右派政党「イギリス独立党(UKIP)」を率いる、ナイジェル・ファラージ党首だった。 ドナルド・トランプの勝利が決した直後、イギリス時間の11月9日に、彼はBBCにこんなコメントを寄せている。 「負け犬たち(underdogs)が支配者層(the establishment)を打ち負かしたのだ」(注1) さらにファラージは、こう続けた。トランプの勝利とイギリスの「ブレグジット」は、どちらも同じ「負け犬の逆転劇」だった、この2つの重要な選挙戦の勝利によって、2016年は「政治革命の年」となったのだ、と。 僕はここで、その「負け犬」の話を書きたい。ブレグジットの主役となった「負け


トランプ候補はなぜ大統領選に勝ったのか。後から理由を考えるというのもむなしいともいえるし、そもそも予想が外れた反省というものはそういうものだともいえる。いずれにせよ、自分なりに気になることをこの機に書いておきたい。たぶん、この基調傾向は日本にも影響してくる。すでに先日の都知事選挙でもその影響があったようにも思える。 まず、メディアに左右されず米国社会を素直に見ていたらトランプ勝利がわかったはずという意見が当然のごとく出る。だが、これは単純に誤りだろう。特定の個人が生活空間から知りうることは限定されているし、米国の場合、州や階層でかなり分断されているので、どこに自分が置かれているかしかわからないものだ。 次に前提なのだが、メディアからは今回の米国大統領選挙の本当の動向はわからなかった。メディアの予測は恥ずかしいほどに外れた。むしろそのことがここでのテーマであって、トランプ大統領がどうというこ


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