前回、FTPLによる期待への働きかけや「管理された無責任」の議論について検討した。そもそも、中央銀行の無責任さをアピールすることで期待インフレ率を上げる、という問題提起を最初に行ったのは、1998年のポール・クルーグマンによる「金融政策による期待への働きかけ」という政策提言であった。なぜ、それがうまくいかなかったのか。この点を日本経済に対するクルーグマンの認識変化を軸にわかりやすく解説したい。背景には、日本の長期停滞要因が横たわっている。 <詳しくは新刊『金利と経済』でご覧いただけますが、同書で取り上げたトピックに一部手を加えてご紹介していきます> まず、時計の針を1998年に戻してみよう。 当時、クルーグマンは、日本がバブル崩壊後の逆風で完全雇用に対応する利子率(自然利子率)がマイナスに低下しており、ゼロ金利政策や、のちに導入される量的緩和自体ではこれに対処できず、それゆえ日本はデフレか


Paul Krugman, “Redefining The Middle Class,” Krugman & Co., February 7, 2014. [“The Realities of Class Begin To Sink In,” January 27, 2014] 中流階級を再定義する by ポール・クルーグマン Victor J.Blue/The New York Times Syndicateアメリカにはおかしなことがあれこれある.その1つは,長らく見られる傾向として,自分のことを中流階級だと考えてる人たちがとてつもなく広範囲にまたがっている点だ――そして,彼らは自分を欺いている.国際的な基準にてらせば貧困者ってことになるはずの低賃金労働者たちは,中央値の半分を下回る所得でありながらも,自分たちは中の下にあたる階層だと考えている.その一方で,中央値の4倍や5倍の所得を


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