「ヒプノシス」というデザイン集団をご存じだろうか。仮にその名は知らなくても、ピンク・フロイドの「牛」とか「プリズム」のジャケットと言えば、知らない人はほとんどいないはずだ。 ヒプノシスとは、ストーム・トーガソンとオーブリー・パウエルが立ち上げ、1970年代を中心にイギリスを拠点に活躍した、主にロックミュージャンのレコードのジャケットをデザインする集団で、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、ポール・マッカートニーなど、数多くのビッグネームの作品を手がけた。実は、松任谷由実の『昨晩お会いしましょう』や『VOYAGER』などのジャケットもヒプノシスによるものだ。 ヒプノシスのオリジナルメンバー、ストーム・トーガソン(右)とオーブリー・パウエル(左)。 ヒプノシスのデザインは、表ジャケにアーティスト名やタイトルを入れないなど、それまでのレコードのカバーアートの概念を覆すもので、そのアイデア、斬


◾️米ローリング・ストーン誌が史上最高のアルバムジャケット100を発表しました。 ここでは20位から1位を紹介します。あくまでもアルバムではなく、ジャケットのランキングです。 聴いたことがあるアルバム、聴いたことはないけど見たことがあるアルバム、初めて見たアルバムジャケットなど色々です。全体は出典をご覧ください。 2024年7月18日 By Rolling Stone ビギーからビヨンセからバッド・バニーまで、ニルヴァーナからナスからニール・ヤングまで、SZAからサバスからセックス・ピストルズまで。 ラップ、カントリー、ジャズ、プログレ、メタル、レゲエ、フラメンコ、ファンク、ゴス、ヒッピー・サイケデリア、ハードコア・パンク。 しかし、これらのアルバムはすべて、そのサウンドに合ったユニークなルックスを持っている。 ピンク・フロイドのファンの何人が、『狂気』のジャケットに描かれたプリズムを見つ


日本美術の近現代史の歪みが生んだ、村上隆の「嫌われる理由」村上:今日はありがとうございます。山田さんのYouTube番組は、ずっと拝見していました。 山田:「村上隆 もののけ 京都」は、お世辞抜きで期待以上に良かったですよ。《お花の親子》(2020)が東山を借景にした日本庭園の池にじつによくフィットしていましたし、《風神図》《雷神図》(ともに2023〜24)にしても、《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》(2023〜24)にしても、力作ですよ。 京都で開催する必然性のある展覧会になっているところがすばらしいと思いました。 村上:今日は山田さんに、クリティカルに忌憚(きたん)のない解説をいただけるという期待をしています。じつは、2020年オリンピックの東京開催が決定した2013年9月7日(日本時間8日)の、その5分後に、「村上隆だけにはキャラクターを作らせたくない」という言葉がTwitter(現

ザ・ビートルズ(The Beatles)が残した音楽的遺産は、いまだにポピュラー音楽の歴史にそびえ立っているが、視覚的遺産についてはどうだろう? 『Pepper’s Lonely Hearts ClubBand』のカウンターカルチャー的コラージュから「Yellow Submarine」のシュールな冒険旅行まで、ザ・ビートルズの作品は映画、アニメーション、グラフィック・デザインなどあらゆるものに影響を与えてきた。 故に『Revolver』の収録曲「I’m Only Sleeping」のための新たなビジュアルの制作を依頼された時、それは大きな重責を担うことを意味する。 <関連記事> ・ビートルズの赤盤、青盤は全米でも売上好調。全英1位獲得の「Now and Then」は様々な記録を更新 ・ザ・ビートルズ『Revolver』解説:ポップ・ミュージックの存在価値を変えた名作 1,600枚を超える


《星月夜》は、ゴッホが南仏サン・レミ近郊の精神病院に入院している1889年に制作された。彼の絵に描かれた糸杉は、「見たままを描かず、モチーフをコラージュすることによる抽象性の探求や、自然の神秘性への喚起」と解釈されている。 一方、エッフェル塔は、1889年の第4回万国博覧会の目玉として建設された。1886年に開催された塔のコンペで、ギュスターヴ・エッフェルによる革新的な鉄格子の案が採択され、以降、エッフェル塔の計画や準備の様子は新聞や雑誌で頻繁に報道された。 イギリス・サウサンプトン大学の教授、ジェームズ・ホールによると、エッフェル塔の除幕式では夜間に花火や電飾などで壮大なショーが行われ、夜空が様々な光で照らされる様子は、まさに《星月夜》に描かれた光景そのものだったという。 ホールはこう説明を続ける。 「エッフェルは、エジプトから贈られたコンコルド広場にあるオベリスクを凌駕しようと、金属製




美的性質や美的知覚について、最近出版されたマドレーヌ・ランサム[Madeleine Ransom]の論文がとてもよかったのでまとめておく。 1 前提:美的知覚美的性質[aesthetic properties]とは、「美しい」「優美だ」「けばけばしい」「退屈だ」「バランスが取れている」など、われわれが芸術作品や自然の風景について語るときによく言及する性質のことだ。こういう性質を見てとったり聞いてとることを美的知覚[aesthetic perception]と呼び、「このモネの絵はバランスが取れていて美しい」みたいなことを言ったり書いたりすることを美的判断[aesthetic judgement]と呼ぶ。 フランク・シブリー[Frank Sibley]の影響下において、分析美学では美的性質に関してふつうふたつのことを前提する。 第一に、対象が美的性質を持つのは、一連の非美的性質を持つおかげで


NFTは著作権、翻案権をめぐる致命的な脆弱性をいくつも持っている。その大半は何の権利も所有者に与えない詐欺まがいの代物だ。そして複製可能でもある。NFTを扱うということは詐欺師と法律家を儲けさせるということだ。 俳優でテレビ・プロデューサーのセス・グリーンが、自身が所有する膨大なNFTコレクションに関連するキャラクターを用いて新アニメシリーズを企画していたが、5月、フィッシング詐欺に遭って4枚のNFTを奪われ、新アニメの制作がストップした。 グリーンは2021年7月に有名アート「BAYC」のNFTを購入し、この数ヶ月間、そのNFTにまつわる「権利」を基に自らが企画する番組の主役にするための知的財産(IP)を開発・活用してきた。 この「盗難」は、様々なNFTの法的な問題を露見させる絶好のケース・スタディとなっている。著作権や所有権、その珍しいライセンス体系をめぐる議論を呼び起こしたのだ。 ス


▶︎ 都築響一+「下町レトロに首っ丈の会」キュレーションによる「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」が、東京都渋谷公園通りギャラリーにて1月22日~4月10日に開催されている。「おかんがつくるアート」のことと本展が定義する「おかんアート」とはなんなのか、その歴史的文脈をふまえて解説。視覚文化論、美術制度史、ジェンダー論を専門とし、手芸とアートの関係をジェンダーの視点から研究してきた山崎明子(奈良女子大学教授)が論じる。【Tokyo Art Beat】 「おかんアート」の前で思考する「おかんアート」というものが以前から気になっていた。一目見て自分の身近にあったもので、懐かしいと感じる作品が多い。私自身、子供時代にこれらを母と作った記憶がある。小学生でも作れるもので、こうしたモノを作りながら縫う・編む・結ぶなど手芸の基本的技術を知らずに学んだのだと思う。東京都渋谷


NFTの現況については目に余るものがあるので、しぶしぶながら書きます。 私は仮想通貨、ブロックチェーン周りは2013年からやっており、日本でも有数の専門家と自負しております。同時にアートコレクターとしても、12年以上にわたり500点以上の作品を集めており素人ではありません。 ブロックチェーンとアート、この2つをちゃんと理解している人は日本には数少ないと思います[注2]。その立場からのしぶしぶながらの発信ということをご理解ください。 3つの点をお話しようとおもいます。 まず、現状のNFTはアートとして成立していない点。次に、NFTが単なるパチンコ台である点、最後にアート関係者が詐欺に巻き込まれようとしている点について話します。 注)文中、詐欺・詐欺師という言葉を使っていますがが、かならずしも刑法上の詐欺行為のことではなく、モラルに欠け、悪意をもって金儲けを企む反社会的な行為という意味で使って


華やかなステージでアイドルが弾けるような笑顔で歌って踊る。だが舞台を降りれば一人の人間だ。気になる人がいれば恋愛をしたいし、大人びたネイルもしたい。生理が訪れたら不機嫌になるときもある。しかしアイドルの世界で“理想の偶像”からはみ出ることは暗黙の規範のもと強く制限される。 2019年8月1日、和田彩花が自身の25歳の誕生日にブログで発表した「宣言」はひときわ注目を集めた。 「私の未来は私が決める 私は女であり、アイドルだ」 和田彩花、アイドルグループ・アンジュルムとHello! Projectの元リーダー。彼女はグループ卒業後もなお、“アイドル”であることを宣言した。さらに現代美術展や仏像のレビューやトーク、文芸誌への寄稿を行うなどアートの魅力を世に伝える発信を行いながら、生理ケアの知識や選択肢を発信するプロジェクト「#No Bag For Me」のメンバーとしても積極的に発言。そして表現



宇都宮の空に、どこにでもいるようなおじさんの顔を浮かべてみたり。 何の変哲もないコインランドリーが、とんでもなく不思議な世界へと繋がっていたり。 資生堂ギャラリーのホワイトキューブの展示室を、ホテルそっくりな空間に変えてしまったり。 《たよりない現実、この世界の在りか》 制作:2014年 制作場所:東京/資生堂ギャラリー 撮影:加藤健 僕らが当たり前と思っている 「日常」 に、 ハッとした気づきを与え、目を見開かせてくれる現代芸術活動チーム。 それが、目【mé】。 現代アーティストの荒神明香 (こうじんはるか) さん、ディレクターの南川憲二さん、 インストーラーの増井宏文さんの3人からなる旧ドリカム体制のアートユニットです。 国内外の芸術祭や展覧会に引っ張りだこの目【mé】。 その待望となる初の大々的な個展が、いよいよ千葉市美術館で開幕いたしました! 展覧会タイトルは、“目【mé】 非常に


【追加:2022/06/18】 有志の方が分かりやすいまとめサイトを制作されました。PDF配布もあります。是非、ご覧になって下さい。 https://sites.google.com/view/koekakephoto-matome/home【追加:2022/06/14】 ※ 前のエントリーで開催場所に行き着くまでの顛末を書きました。 主催者は、「見もせず批判をする人たちが多い」と、何度も何度も言っていました。 私も、その通りだと思います。 なので、入場料を払って見てきました。 主催者の方からたくさん話を伺うことができましたが、私は一切批判はしていませんし、ましてや妨害行為まがいのこともしていません。 一般客としてお金を払い、写真を観て、気になったところを伺ってきた。 それだけです。 ここではじめて、写真展を観た感想と、考えたことを書きます。 まずは、感想から。 主催者は、「銀塩プリントに


京都造形芸術大の東京キャンパスで公開講座を受けたところ、ゲスト講師から環境型セクハラにあって、精神的苦痛を受けたとして、受講していた女性が、大学を運営する学校法人「瓜生山学園」を相手取り、慰謝料など計約333万円の支払いをもとめる訴訟を東京地裁に起こした。提訴は2月22日付。 原告の大原直美さん(39)と代理人が2月27日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。大原さんは「講義内容が本当にひどいものだった」「セクハラを訴えたあとも、大学側の対応が、教育者としてあるまじき姿だった」「生徒を守ってくれないのは本当に残念だ」と心境を語った。 ●会田誠さんの講義でショックを受けた。 代理人などによると、大原さんは2018年4月から6月にかけて、京都造形大・東京藝術学舎で開かれた社会人向け公開講座(全5回)を受講した。ヌードを通して、芸術作品の見方を身につけるという内容だった。大原さんは、第3



ストリートアートの生ける伝説、世界最高の覆面グラフィティ・アーティスト、あのバンクシー(Banksy)の正体がついに判明したという驚きの一報が届けられた。なんと、グラフィティを描き終わった直後のバンクシーの姿がバッチリ写真に収められてしまったというのだ! 現在、(日本を除く)世界各国のメディアで驚きを持って報じられている問題の写真をご覧いただこうではないか。 石造りの建物の入口に立つ一人の男。深めにハットを被り、右手にはスプレー、左手にはステンシル(型紙)らしきプレート、周囲をしきりに気にする様子は、まさにライター(グラフィティを描く人間)そのものといった風情だ。そして、男の背後にある扉に描かれたグラフィティに注目してほしい。「Peace on Earth Terms and conditions apply(地球に平和を 規約と条件付)」――これは現在、バンクシーがオフィシャルサイトのト

本展は、豊田市美術館のコレクションに、他館や個人所蔵家の作品もお借りして、19世紀末から第二次大戦後までの時期を中心に、美術だけでなく、建築、音楽、文学、ダンスにまで及んで相互に連関しあう「抽象の力」を、新たに汲み取ろうとするものである。キュレーションは、作家である岡﨑乾二郎氏。勤務館の展示は、どうしても客観性に欠けたり、自画自賛になったりする恐れがあるので、活動報告としてはよくても、レビューとしては取り上げにくい。けれど本展は、岡﨑氏による企画(担当は千葉真智子学芸員)なので、ここでレビューとして扱わせてもらうことにする。なにより、美術の規範を形づくり、歴史の保存庫となるはずの美術館というものを、いま改めて考え直すためにも、この展覧会はとても重要なのである。 図1 会場風景[撮影:青木謙治] 1995年に開館した当館のコレクションは、良い意味でも悪い意味でも、通史的にはなりえていない。収

浅田 彰(あさだ・あきら) 1957年、神戸市生まれ。 京都造形芸術大学大学院学術研究センター所長。 同大で芸術哲学を講ずる一方、政治、経済、社会、また文学、映画、演劇、舞踊、音楽、美術、建築など、芸術諸分野においても多角的・多面的な批評活動を展開する。 著書に『構造と力』(勁草書房)、『逃走論』『ヘルメスの音楽』(以上、筑摩書房)、『映画の世紀末』(新潮社)、対談集に『「歴史の終わり」を超えて』(中公文庫)、『20世紀文化の臨界』(青土社)などがある。 最新のエントリー 19.05.01 昭和の終わり、平成の終わり 19.03.29 原美術館のドリス・ファン・ノーテン 19.03.07 マックイーンとマルジェラ――ファッション・ビジネスの大波の中で 18.12.07映画のラスト・エンペラー――ベルナルド・ベルトルッチ追悼 18.11.03トランプから/トランプへ(5)マクロンとトラン


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