『ガーディアン』(薬丸 岳/講談社) 学校が集団生活である以上、生徒間のトラブルはつきものだ。いじめや暴力を完璧に防ぐ方法はありえないだろう。もちろん、多くの教師が対策を練っているのは間違いないが、全ての生徒の悩みを知ることなどできない。そして、被害者となった生徒たちの絶望を煽ってしまう。 『ガーディアン』(薬丸 岳/講談社)は教師たちに見切りをつけた生徒たちが「ガーディアン」なる自警団を結成し、学校に平和をもたらそうとする物語だ。荒唐無稽なアイディアのようだが、読み進めるうちに、学校教育では及ばない問題の解決策として、ガーディアンは理にかなっているように思えてくる。たとえ、それが大人の読者に複雑な余韻を残すことになろうとも。英語教師・秋葉吾郎が新しく赴任してきた中学校は、一見、穏やかな空気が流れていた。校則は緩く、生徒たちの自主性に委ねられた学校運営がなされている。何より、いじめや不良

『どうなってるんだろう? 子どもの法律~一人で悩まないで!~』(山下敏雅、渡辺雅之:著、葛西映子:イラスト/高文研)児童虐待や少年非行など、子どもの事件に向き合ってきた弁護士の山下敏雅さんと、いじめ問題に取り組んできた大東文化大学教職課程センター准教授の渡辺雅之さんが、悩める子どもたちに向けまとめた『どうなってるんだろう? 子どもの法律~一人で悩まないで!~』(山下敏雅、渡辺雅之:著、葛西映子:イラスト/高文研)の著者インタビュー後編をお送りします。 生きることのすべてが、人権と繋がっている 前書きで山下さんは、 「私はみなさんに単に、「法律がどうなっているか」だけを伝えたいのではありません。弁護士は「人権」を守るのが仕事です。人権は「人が生まれながらにして持っている権利」です。学校ではそう教えています。 人は、どんな人でも、一人ひとりが大切な人間として扱われる、尊重されるんですよ、とい

金髪、ヒゲ、サングラスのフリーライターがPTA会長を務めた実話を書籍化した、『ある日うっかりPTA』が2017年4月28日(金)に発売された。 同書は、雑誌『季刊レポ』にて連載され大きな反響を呼んだ作品を書籍化したもの。金髪、ヒゲ、サングラスという格好でフリーライターとして活躍していた著者の杉江松恋が、タイトル通り「うっかり」PTA会長を3年間にわたって実際に務めた実話をまとめたドタバタ奮闘ルポになっている。 国内外のミステリーからノンフィクションまで、幅の広い書評活動で人気のライター・杉江が、ひょんなことから息子が通う公立小学校のPTA会長に就任。自分には無関係な存在として大した関わりも持ってこなかったPTAの世界に突然飛び込み、3年の任期を経て今感じることとは――。PTA会長になるのは、実は簡単なこと。なぜなら公立小学校の場合、自分からPTA会長をやりますなどと言い出す人間はほぼ皆無

新しい学年が始まって、そろそろ一週間。新しい担任の先生の発表に、クラス分けの発表……悲喜こもごもの始業式や入学式だったかもしれませんね。そんなワクワク、ドキドキ、ガッカリ(?)も、次第に落ち着いてきます。日々の生活が、安定してくるまで、あと少しでしょう。 さて、ちょっと落ち着いてきて、冷静になって思うこと…… 「クラス分けってどんな基準でしているの?」 お母さん方の立場に立てば、疑問に思って当然だと思います。もちろん、子どもの立場でも、そうですね。私自身、とても小さい小学校(勤務している学校なんですが……)に通っていたので、クラス替えを初めて経験したのが中学校二年生の時でした。今でも、あの緊張感、不安感をよく覚えています。まぁ、私のような例は少数派としても、クラス替えが一大イベントであることは、私なりに理解できるつもりです。 さて、教師の立場で、クラス替えの基準を考えます。 まず、新入学の

『みんなの道徳解体新書』(パオロ・マッツァリーノ/筑摩書房) 学習指導要領一部改訂に伴い義務教育課程においての教科とされることが決定した「道徳」が、来年度から順次「特別の教科 道徳」に格上げされることになりました。 道徳の授業は他の授業とはちょっと違う存在です。他の教科とは異なり、担任である、先生であるというだけで生徒に教えています。他の教科には正解があるのに道徳にはありません。といいながら、こう答えてほしいという想いがあったりもします。 そんな不思議な教科「道徳」についてのさまざまな「なぜ?」を明快に解明してくれる本があります。イタリア生まれの日本文化史研究家による『みんなの道徳解体新書』(パオロ・マッツァリーノ/筑摩書房)です。イタリア人らしいユーモアのある文章とともに語られているため、途中でふと「これって真面目な本だったっけ?」と疑問に思う瞬間も出てくるのですが、読み進める中ですべて

『大学では教えてくれない 信頼される保護者対応マニュアル』(多賀一郎/明治図書出版) まもなく新年度を迎える。この時期になると、子どもたちの進学や進級にあたり学校との関係に胃を痛める親たちもいるのではないだろうか。教育現場からはモンスターペアレントへの悩みが聞かれる一方、親たちからは学校への不平不満が聞かれるなど、なかなか双方の折り合いが付かない印象もある。 ではなぜ、そのような現状があるのか。それはひとえに、何らかの齟齬が生まれているからだと思われるが、どのような実態があるのかを明らかにするべくここはひとつ教師向けの「保護者対応マニュアル」を参考にしてみたい。 今回紹介したいのは『大学では教えてくれない 信頼される保護者対応マニュアル』(多賀一郎/明治図書出版)だ。新任教師向けのこの一冊をまとめたのは長年、小学校の教師を経験し、現在は小学校で講師として活躍する一方、親や教師向けのセミナー

『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(大塚玲子/太郎次郎社エディタス) 「PTAはみんな入らなくてはいけない!」そう思っていませんか? 結論からいうと、PTAは任意団体であり、入会したくなければ入会しなくても大丈夫です。PTA参加を義務付ける法的根拠はありません。しかし、PTAが任意加入であることが周知されていないことで、任意参加ではなく強制参加だと思っている人が多いのが現状です。だから、学校や幼稚園に入ればPTAへ自動的に加入、加入しなければ嫌がらせを受けるなど、場合によって脅迫や恐喝にあたる違法行為をしている「違法PTA問題」が起こっています。 時代が変わり、共働きの家庭も増え、PTAのあり方が改めて注目されている昨今。PTAに強制加入させる違法PTAにも切りこみ、負担の大きい、マイナスイメージが強いそんなPTAのやり方を改革し、楽しくやる方法を提案している一冊の本があります。「こ

『ブラック化する学校(青春新書インテリジェンス)』(前屋 毅/青春出版社) 会社に始まり、アルバイト、保育所、そして学校。世の中がブラック化しつつある。少子化なのに、なぜ学校がブラック化するのか。教育や指導以外の多くのことが、学校に求められているからだ。教師は各所からさまざまな要求を受け、多忙を極めている。 『ブラック化する学校(青春新書インテリジェンス)』(前屋 毅/青春出版社)は、教師が自殺予防やいじめ対策に当たることは当然ながら、それが「最優先」と位置づけられていることに違和感をあらわにしている。自殺予防やいじめ対策が教師の最優先課題なら、授業の準備や学校行事などは「二の次にしていい」ということになるが、そんなことが許されるはずはない。つまり、教員は、授業の準備も学校行事も、自殺予防やいじめ対策も「最も」優先される事項なのだ。責任を押し付けられる教師の苦労が絶えない。本書によると、

『策略 ブラック授業づくり つまらない普通の授業にはブラックペッパーをかけて』(中村健一/明治図書出版) 「ふざけるな!」と私が教卓の前で怒鳴る。し~んと生徒が静まり返る、かと思いきや、私を指差し嘲笑。「何怒ってんの?」「つまんねぇ授業やってんじゃねえよ」そんなヤジが飛ぶ。どこで間違ってしまったのか、何がいけなかったのか、わからない。そんな考えで頭がいっぱいで真っ白に――という夢を見た。 私は大学生から社会人まで10年ほど、集団授業での塾講師の経験がある。そんな時に見ていた、いや、今でも時々見てしまうのが冒頭の夢。この夢を見るたびに変な汗が止まらなくなる。自分の声が生徒に届かない、いわゆる「学級崩壊」の状況は考えるだけでも恐ろしい。幸いなことに夢以外では経験したことがないが、小学校・中学校・高校ではそんな「学級崩壊」も日常茶飯事だという。 絶対に避けなければならない学級崩壊。これを食い止め

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