2月は思ったよりバタバタして更新が遅くなってしまいました。とはいえちょこちょこ準備はしていたので、今日中にふたつ記事を上げようと思います。エッセイ、論考、習作、企画記事等いろいろやっていくのでぜひ講読よろしくお願いします。 今回は先日「赤いきつね」のアニメCMがSNSで炎上しているのを見て考えたことについて書きます。 僕はふだん性的なことにかんする話はほとんどしていなくて、原稿で書いたのも『ひとごと』に収録された『全裸監督』論くらいだと思う。とくにSNSはそういう話を気軽にできる場所ではないし、僕自身は何にでも口を出してタイムラインがニュースフィードみたいになっているひとを見るとキツいなと思うのでホットな話題について逐一何か言うということはしない。 今回のCMも、燃やされた側にとっても怒っているひとにとってももらい事故のようなもので、両者ともがもらい事故だと思っているからこそがぜん燃えるの

社会学者・岸政彦が明かす、“人の話を聞くこと”の怖さと価値「聞き取り調査には暴力性もある。それでも耳を傾けるべきだ」 岸政彦『生活史の方法——人生を聞いて書く』 (ちくま新書) 「生活史」とは、ひとりの人間の生い立ちや人生の語りを聞き取る、社会学の質的調査のひとつであり、沖縄で30年にわたり聞き取り調査を続けてきた社会学者・岸政彦は、その第一人者といえる存在だ。岸は150人の聞き手希望者に自身の調査方法を伝え、彼らがそれぞれ150人の語り手に取材を行った。その成果として生まれたのが、『東京の生活史』『大阪の生活史』(いずれも筑摩書房)である。 いまも聞き取り調査を続ける岸が、今回「他者の話を聞く」ことについてまとめた新著『生活史の方法』(ちくま新書)を上梓した。曰く、聞き取り調査に「標準的な方法」は存在せず、しかもその営みには、常に語り手への暴力性が潜んでいる――。では、他者の人生に耳を傾

はじめにITベンダーの皆様、申し訳ありません。 この数ヶ月、何社もの「進捗どうですか?」というメールに対して、「社内で検討中」と返信して進めておりませんでした。 御社の素晴らしいSaaSの導入を止めていた犯人は、私です。 言い訳をすると、今日は、いろいろな仕事に追われていた。 朝からDXのプロジェクトの進捗を見て、関係者に催促して、今度の対応事項をパワポに書いて。 それから、WindowsXPのような見た目の社内システムで、交通費の精算。エクセルをプリントして印鑑を押して、領収書をのりで貼り付けて、経理まで提出。一発で承認が降りる人は、部署内でも少ない その後、懇親会のメールの作成。ccの順番は部署順か役職順か。日程調整は、エクセルでは失礼ではないか。 そんな生産性とは無縁のことに頭を悩ませながら、時間が過ぎる。 この状態で、御社からのメールを開く。 「先日ご提案した件、ご検討状況はいかが

鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑) この記事の写真をすべて見る 正社員として務めていた会社がコロナ禍で倒産し、現在はパートとして働いているはやてさん(45)。同世代の友人と比較して「普通」の幸せに遠くおよばない自分自身を「必要のない人間」だと語ります。そんなはやてさんに鴻上尚史が伝えたいこととは──。 * * * 【相談273】 500 社から不採用。社会的に「必要のない人間」である私。(45歳 男性 はやて) 私は現在45歳、パートで働いています。30歳の時にリーマン・ショックで会社が倒産、第二次就職氷河期に突入し、正社員枠が全くなく、37歳の時になんとか入った会社は40歳になった年にコロナで倒産。40歳ということもあり、都道府県・職種を選ばず500 社受け、どこにも受からず、今パートで細々と働いています。 周りの友人は管理職になっていたり、結婚して子どももいたりと「普通」の

お笑い芸人、ヒコロヒーの連載エッセイ第48回。「今月のヒコロヒー」も要チェック! 前回の「その人らしさは、本物でなければならない。」も読む。 あなたになら話したい。仕事の合間に少し空き時間ができたため、銀座にボールペンを買いに行った。涼しい秋晴れの真昼間で、こんな時間に外を自由に出歩くなんてすごく久しぶりのことで、街をのんびりと歩けることが嬉しくて少し泣きそうにさえなっていた。 自分のことはあまり人に話したくない。生活の忙しさを語ろうとしてもそれは私が「売れている」ことを語ることと同義になりかねず、仕事のことを語ろうともそれは私が「テレビや芸能界」を語ることと同義になりかねない。それってなんだか、アレな感じがしてしまう。 交友関係のことを語りたくともそれは私が「人脈」を語ることと同義になりかねず、好きなウイスキーの銘柄を語ることさえ私の「経済事情」を語ることと同義になりかねない気がしてし

「子どもは素敵なケーキで笑顔になり、私はこの支援で心が救われました。 家族そろってケーキを囲んで娘の誕生日を祝うことができました!世間一般の方からみると、パートで仕事かけもちしてるんだから、ケーキ代くらい出せるでしょ、たった数千円でしょと思われるかもしれません。 でも私にとっては集金が100円足りなくて通帳を漁った日もあります。そんな、子どもに見せられない姿で悩んでいる中での温かい支援は、本当に心が救われます。たくさんの方への感謝しかありません。ありがとうございます。」 「母子家庭で一人っ子なので、息子にとっては「家族以外にもお祝いしてくれる人がいる」ということに対して感謝の気持ちや喜びを持てる、とても素敵な企画だと思います。」 「食品の値上げもあり、ひさびさのホールケーキに大喜びでした! ろうそくをたてて、お祝いしましたが、終始ニコニコ笑顔! 半分をひとりで一気に食べちゃいました。 ケー
大学院に行く理由は就職したくないからなのか、というような話題が目に入った。この話題は表面的には簡単なようで、実はもっと大きな問題につながっている。結論としては、「就職」そのものがいやなのではなくて、仮にきつかったとしても「自らの知的生産から疎外されない」道を選びたいと言い表すほうが的確なように思う。 マルクスが述べたように、たとえば自動車工場で働く労働者は、昔ながらの家具職人と違って、成果物である自動車から疎外されている。生産の過程からも疎外されている。自動車を作り上げるのではなくて、ごく小さな部分の作業をするだけだからだ。できあがった自動車の所有者になれないからだ。そこから得られる利益は、資本家に独占されている。ここでは資本家対労働者の対立構造は直接は関係ないが、なんにせよ、あなたのものではなくなってしまう。 頭脳労働でも疎外が起きている。あなたの頭脳労働の成果は、会社員であれば会社のも
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新進気鋭の美学者・難波優輝さんが、「何者か」になるための物語で溢れた現代を批判する『物語化批判の哲学』(講談社現代新書)がついに刊行。人生も、世界も、物語ではない。そう断言する本書はまた、「では、世界とは何なのか?」を探究する冒険の書でもあります。 今回、対談のお相手としてお招きするのは、『人類の会話のための哲学』『バザールとクラブ』『〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす』といったご著作を通じて、他者と生きることの難しさ、そして芳醇な味わいに向き合ってこられた、哲学者の朱喜哲さん。 朱さんがご研究されているローティという哲学者は、主著『偶然性・アイロニー・連帯』のなかで、「アイロニー」、すなわち自分自身を(何度でも)語り直すこと、「再記述」にひらくことを重視しています。人生を、もっと自由に遊ぶために。誰かと共に語らいながら生きることと、自由であること。両者の関係性を探りあてようとする大胆な
9月の新刊『ヤバい保険の経済学』はタイトルの通り、保険や年金がテーマ。顧客としては保険に加入すべきかするまいか悩ましいし、保険会社としてはこの顧客に加入してもらってよいかどうかが悩ましい……。保険加入以外にも、人は生きていればリスクの評価と判断が必要な場面がどうしてもやってきます。今回のブックリストでは、選択や意思決定に役立ちそうな、みすず書房の本をご紹介します。 保険会社は生命保険をなるべく健康な人に売りたい。しかし、生命保険を強く求めるのは健康に不安がある人たちだ。さらに政府は、国民の健康を守ろうと必死に制度設計するが、そのデザインは常に情報市場に裏切られる……。このような、複雑至極な保険市場のヤバくてリスキーな実態をユーモアたっぷりに明らかにするのが本書。これまでありそうでなかった、保険市場の経済学入門。 売り手と買い手の情報格差によって、安くて粗悪な商品ばかりが出回り、高くて品質の

「学校」という制度が私たちに刻み込んできたものとは何か。大人になった今、私たちの社会とのかかわり方や、自分自身のあり方、そして子どもとの関係にまで、それが無意識のうちにどのような影響を及ぼしているのか。本稿は、その否定性の痕跡を一つひとつ浮かび上がらせ、剥がし取っていこうとする試みです。 これらはすべて、あなたに刻印された否定性の話。 大人になっても勉強に苦手意識がある。計算が苦手。常に正解を探そうとしてしまい、自由に考えることが苦手。答えが一つでないと不安を感じる。間違えるのが怖い。誰かに評価される状況になると緊張する。「自分は頭が悪い」という思い込みが抜けない。学びを努力義務としてしか捉えられない。人より遅いことはダメだと感じる。自分のペースで考えることに罪悪感がある。「わからない」と言うことが恥ずかしい。人から注意されると過度に反応してしまう——。 大人になっても偏差値が気になる。
近年、アイドルやアーティストが人権問題や社会課題に言及する場面が目立つようになった。日本のアイドルもまた、ジェンダー平等や人権に触れる発言をする機会が増えた。世界的に人気のあるKpopアーティストなどは、SNSなどに向けられる目線の数も桁違いだ。そんな有名人らがその影響力を用いて人権的な発信をする姿勢は責任感がある素晴らしいものであると思う。批判もあるであろう中で声を上げることはとても勇気ある行為だ。一般人より時間もない中で学び、発信する姿は尊敬に値するし、何も影響力のないわたしだが彼らのようにありたいと思う。 しかし一方で気をつけたいのは、私たちファン側が「アイドルに自らの倫理観を委ねすぎていないか」という点である。さらにいうと、例えばあるアイドルがジェンダーの固定観念について問題提起をしたとする。それを素晴らしいと思う。その際の思いを因数分解すると、「ジェンダーの固定観念は問題だ。それ
【動画3-1】3頭のシャチはこの動画のヨットに向かって来る前に、そばで航行していた別の船に体当たりを仕掛けていたことが目撃されている。シャチたちは船体に穴を開け、海水を流入させた。(VIDEO BY MERCEDES-BENZ OCEANIC LOUNGE) 9月13日の正午ごろ、ポルトガルのリスボン沖で、イルカウォッチングツアーを楽しんでいた一行が岸に戻ろうとしていたところ、大型のヨットが前後に不規則に揺れているのに気付いた。ツアーを率いていたメルセデス・ベンツ・オーシャニック・ラウンジのマネジャー、ベルナルド・ケイロス氏は、シャチたちの仕業ではないかと考えた。 実際、ヨットを撮影していたケイロス氏は、3頭のシャチがヨットの横を泳いでいるのに気づいた。ヨットは下から体当たりされ、船体に穴が開き、やがて沈没してしまった。 「ツアーをしていると、イルカは98%の確率で現れますが、シャチが現れ
父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー) 前の記事:子供とのチャンネル争いを解決する方法がありました こちらはとある生き物が作った造形物である。タイトルに答えが書いてあるので茶番だが、そうです。セミの出てきた穴を型取りしたものだ。下のほうなんて、セミの背中からおしりにかけた曲線っぽいでしょう 背中のあたりにセミの面影(こちらは幼虫が入っている様子をイメージしやすいよう作成した合成画像です) 発端はジェスモナイトという素材だった 駅のベンチとか遊園地の造形物なんかはFRP(樹脂素材とそれに塗り込められたガラス繊維)で出来ているわけだが、とても体に悪い。硬化させる時にヤバいガスが発生する(恐い噂がいっぱいある)。じゃあ、使わなきゃいいじゃん、という話になるのだが、軽くて加工しやすくて、強

デジタルそしてコンピューターを基盤とする情報技術(IT)は、得てして「魔法」に例えられます。それは、多くの人にとってITを活用したシステムや情報機器(デバイス)が「不思議に思えるほどすごいことをしてくれるモノ」と感じられるからではないでしょうか。 このように感じられるのは、ITシステム/デバイスがブラックボックス化され、中身が見えないためでしょう。中身が見えない、言い換えれば仕組みが分からないことから、「すごい」という前向きな感情に加えて、なんだか「怖い」という苦手意識も芽生えがちです。 デジタル社会では、公私ともにITに関与する機会は増える一方です。例えば、会社でDX推進やAI活用に取り組んだり、日常生活で各種支払いをスマホで手軽に済ませたり、といったIT化は今後も進むでしょう。そうしたときに苦手意識を持ったままだと、前向きに進めることが難しかったり、他人任せになってしまったりすることで

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