人格障害と呼ぶ前に⑨ -- ACの認知の修正 AC(アダルトチルドレン)として治療に引っ張り込んだ後は、行動化には取り合わず、認知に重点置いたケアに徹する。 行動化に振り回されないというところが大事だ。自傷しようがOD(大量服薬)しようが方針は一切変更せず、家計図とアルバムの振り返りを行い、徹頭徹尾「事実関係を客観的に振り返る」ことを続ける。 行動化したときには、淡々と事実関係を聞き、この薬は死ぬ可能性がある等の客観的な説明をしておく。 この過程で、事実関係(親との関係やトラウマとなった体験など)への直面化を進めるうちに、「直視しても大丈夫」と不安が消えていき、問題が明確に自覚され、ついには言語化されるようになると回復は近い。 このプロセスに立ち会うスタッフに、実はADHDが向いている。私もそうだし、例えば心理士でも、施設の職員でも、相談員でも、適切な距離ににADHDがいて、冷静かつ粘り強

我が家には8歳の娘と6歳の息子がいて、それぞれアスペルガー症候群とADHDの診断が出ています。 「学校をやめる」と宣言し、毎日家で過ごしている娘。後を追うように息子も「幼稚園をやめる」と決断し、のんびりと家で過ごしています。 娘と息子の思考の違いに気付いたのは、娘とアイロンビーズに取り組んでいたときでした。 以前、人によって物事を認知する能力が違う、というコラムを書かせていただきました。 娘の場合、目で見る言語・耳で聞く言語にとても強く、頭の中も言語で埋め尽くされている状態です。 アスペルガーの娘曰く、頭の中にはたくさんの引き出しがあって、きちんとインデックスがついており、全ての情報がしかるべき場所にきちんと言語化して収納されているそうです。ADHDの息子は視覚優位で、映像から物事を理解するタイプ。例えば「今日の午前中は何をした?」と聞いても「えっと何だっけ?」「思いだせない」と思いだす

宿題の話で述べたが、ADHDの脳は自分では非常にコントロールしにくい。レース用のエンジンを積んだ普通車のようなもので、アクセルを安易に踏むとスピードが出すぎたり、ハンドル操作が追いつかず危険である。 他方で、ADHDの脳は環境の影響を受けやすい。周囲の刺激や興味のあるものに単純に反応する。 だから、「周囲の環境を通じて自分の脳をコントロールする」という独特の方法が可能となる。例えば「場所を変える、場所で決めておく」、「新しい服を買って身につける」、「片付けのアイテムを買ってくる」など、身の回りの環境を動かして結果として自分の脳の方向を変えるという方法が可能となる。 (逆に言えばそうでもしない限り操縦が出来ない厄介な脳なのだ) パニックを起こして暴れまわっている最中でも、突然興味のある別の話を向けると落ち着いたり、また場所を変えるだけで落ち着いたり、(これをタイムアウトと言う)単純であるため

自己コーチングガイド各論② ADHDの自己理解そのG (対人関係の特徴) (ADHDのACは除外、別に論ずる予定) G.ADHD特有の対人関係の特徴を理解する。 多数派は対人関係を、全体として複数の人で構成される「場」として認識し、その一要素、一構成員として自分自身や他者を認識する。「場」においては、自分自身から見て重要な人と重要でない人の序列(立場)があるほか、「場」全体の中での(雰囲気として察知される)「仕切る人」と「従う人」の序列(立場)もあり、そういう複雑な関係の絡み合った「場」全体が人間関係となる。 多数派はその中で、自分自身の序列(立場)や、相手の序列(立場)とを瞬時に直感的に察知して、基本的に「表立って対立が生じない」ことを重要として対人行動を決める。 従って、多数派は特定の二者関係も、その他多くの関係の中で「比較的近い相手との二者関係」であり、言わば重要性は「程度の差」であ

さて自己コーチング②で「己を知る」というプロセスをある程度経た後で、再び「どこを目指すか」という実践的な選択の場面となった。 特にASの場合、積極奇異型の人はどんなに辛くても病気になってでも人間たちの中心を志向する。受動型の人は一人になれない。孤立型の人は逆にその繊細さゆえに生きる場所が限られてくる。ADHDも、表面上は外交的に見えながら実は偏屈な人種であるので、「普通をどこまで目標とするか」の目安を定めなくてはならない。 ここで再び「発達障害の真実」を確認する。 「発達障害は本来自分に正直に生きるしかない」 「多数派に合わせようとすればするほど病気になる」 「多数派に合わせようとして報われなかったときのダメージは非常に大きい」 「一番周囲への害が少ないのは偏屈の線である」 後は各自、自分の人生について考えよう。 「自閉的にひっそりと自分に極力正直に生きる」自閉的な生き方も良し。 「可能

ASの人ついても可能性を書いておこう。 <ASの可能性> ASはASの特性を活かして、多数派に出来ないことを成し遂げる可能性を持っている。 1.過集中による一人の作業の長期間の継続、細やかさ、能率、質の高さ (研究者、コンピュータ関係技術者、職人、プロのスポーツマンなど) 2.音楽的(絶対音感等)、美術的、詩的文学的感性を活かした芸術的な可能性 (アーチスト、作家など) 3.仲間への面倒見の良さ、義理人情に厚い人柄を活かした社会参加 (老人福祉や障害者福祉関係など) 4.同じ作業をきちんと誤差なく繰り返し遂行する能力を活かして細かな手作業を正確に遂行する可能性 (縫製、電気製品の組み立てなど) 5.利害を超えた正義感を活かして、強い力を持った組織などの不正をを監視する社会的立場 6.「絶対的な利他的奉仕が出来る」特性を活かして、自己愛やボーダー等の人格障害の人の回復のパートナーとしての可能

これまでローレンツの個体認識の考察からADHDの根本的な対人個体認識の障害について述べてきた。 同じ図式を用いて、ASの対人認識の障害について考えてみよう。 私がこれまで接してきたASの人の対人認識の特徴は、ADHDとはまるで逆で、「個体認識しかない」という表現になるだろう。「自分」と「相手」という形で抽象的にイメージ化することができない。あるいはうまく調節できないということになる。 私は80年代に私は京都大学で学び、哲学にも親しんでいたが、当時は「現象学」の全盛であった。 ハイデガーやブーバーの「Ich-Duの関係」と「Ich-Esの関係」という表現が個体認識のことを理解するのに役に立つかもしれない。 Ich-Duとは、一対一の「私とあなた」で、名前がある相手との一回限りの関係である。ローレンツの個体認識に相当すると私は考える。 対してIch-Esとは、「三人称」的に自分と相手を観察する

AS(アスペルガー症候群)の人の聴覚過敏は深刻だ。誰かと話していても遠くの人の呟きが聞こえたり、うるさくする幼い弟妹に暴力を振るったり、音が気になって引越しを繰り返す人も居る。 聞こえるだけではない。気になる言葉や音は、「耳に残って」、不快な思いや恐怖感とともに何十年も消えない。記憶力が良すぎるのは不幸なことだと思う。 対策としては、射撃用の耳栓など、高度な耳栓を工夫する人も居る。虫の声や滝の音などの自然の音は問題ないことが多いのでそういう音で打ち消したり、切実な問題だ。 ASの人は統合失調症とは別の形で、「外から入ってくる刺激を拒否できない」ところがある。統合失調症の人は幻聴や被害関係念慮という形で拒否できないが、ASの人は刺激や情報がダイレクトに脳に入ってくるというような感じだ。 多数派は本人に聞こえないと思うと陰口を平気できく。それが聞こえてしまう、そして意味が分からないのがASの不

まず、集団に溶け込んでいて良くも悪くも目立たないため、見た目では定型発達者と見分けがつかない。親しくならないと少し変わっていることにも気付けないが、受動型本人だけは自分以外の全ての人が自分とは違うことを知っている。我慢強く、どんな状況にも耐えられる。アスペルガーらしくこだわりはあるが、基本的に自己満足の世界に生きているので、人の評価も共感も必要としていないため、人に自分の意見は結構言うが、押し付けるようなことはほとんどない。一方で、親しくなった人には自分から積極的にかかわり、困っている人を放っておけないので、人の愚痴を聞くと、ついつい余計なアドバイスをしてしまい、「愚痴を聞いてもらいたかっただけなのに」と、ひんしゅくを買うこともあり、共感や同調を求められる場面では空気が読めないことも多い。 常識では考えられないほどのストレス耐性があり、定型発達者が耐えられないような過酷な環境でも平気でいら

B「本来の受動型ASDの行動パターンと違う異質な発想で動いている」状況では、受動型ASDの人は外モードがうまく働かず、難治性のうつ状態や身体症状に悩まされる。 多いパターンは、積極奇異型ASDの親の影響で「自分で努力して計画通りに成功を収めないといけない」と思い込んでいるケースと、ジャイアン型ADHDの親の影響で「人より上」にならないといけないと思い込んでいるケースだ。 受動型ASDの人の最大の強みは、(このブログの参加者のコメントが参考になるが)「平気で下に行ける」ところにあり、本来計画的でも無く努力して道を切り開くスタイルでもない。まったく逆と言っても良い。 もっと言えば、計画的でない、自分で動かない結果として「受動的に巡ってきたチャンスを最大限に生かせる」という別の強みを自ら消してしまう結果になる。 世間体大事のジャイアンや強迫的に努力し自分に厳しい積極奇異型ASDが取り仕切る環境で

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