第56回星雲賞の日本長編部門(小説)に香月美夜のライトノベル『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~』(TOブックス)が選ばれた。これがニュースかどうかを迷う人がいるのは、星雲賞が何の賞か知られていなかったり、知っていても『本好きの下剋上』が当てはまるのかが分からなかったりするからだ。『本好きの下剋上』が星雲賞を受賞したことにどれだけの意味があり、どれだけの価値があるのか? 小松左京に井上ひさし、田中芳樹らが受賞している「星雲賞」 第1回は筒井康隆『霊長類南へ』だった。第5回は小松左京『日本沈没』が受賞した。いずれも日本のSF史に残る傑作だ。第13回は井上ひさし『吉里吉里人』。SFかと問われれば第2回日本SF大賞を受賞した立派なSF。第19回の田中芳樹『銀河英雄伝説』もスペースオペラというSFのジャンルを、日本において再燃させ定着させた作品としてSF史に名を残す。 ほ

遠藤周作氏 2020年に発見された遠藤周作の未発表原稿のほか、短編6作を収録した文庫『影に対して―母をめぐる物語―』が刊行した。没後25年を経て見つかった表題作はどのような作品なのか? 文庫刊行に際して、息子・龍之介氏が遠藤周作との思い出と、未発表原稿への想いを綴った書評を紹介する。 遠藤龍之介・評「封印された原稿」 父の未発表原稿が発見された――遠藤周作文学館から連絡を受けた時には驚きました。死後二十五年も経って……。 主人公は小説家になる夢をあきらめた男。「なんでもいいから、自分しかできないと思うことを見つけて頂戴」。母の言葉を胸に小説家を志したのに、ついぞ母の望む生き方はできずにいる。この主人公は明らかに父であり、「母」は父の母親である遠藤郁です。 父はこれまで何度も小説に母親を登場させてきましたが、「影に対して」には母親への思いがより濃厚に描かれていました。家族描写など極めて私小説

小説家・勝谷誠彦の死 *以下の文章は、2018年12月に、その前月に亡くなった勝谷誠彦の追悼文として有料メール「勝谷誠彦の✕✕な日々」に書いたものです。 6年経ったし……と、有料メールを運営するヨロンさんこと高橋茂さんに許可をとり、こちらに転載しますが、彼のプライベートに関する話をカットしたり、少しばかり編集はしました。 今回の兵庫県知事選挙で、彼のことを思い出す人もいたけれど、やっぱり人間は死んだら忘れられてしまうからと、改めてこの追悼文を出そうと思いました。 私自身が忘れないためにも。 「小説家・勝谷誠彦の死」 「ママ」と語りかける声が流れてくると、あなたを思い出さずにいられませんでした。クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーを描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観ているときのことです。コンプレックス、富を手に入れ名が売れたゆえの傲慢さと、そこから生じる周囲の人との確執、家族への

メイン画像:©Two Wolves Films Limited, ExtremeEmotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation2023. All Rights Reserved.小説『関心領域』を通例の文脈で「あの映画の原作」と紹介するのにはいささか抵抗がある。というのも、特に日本では、公開当初から凄まじい訴求力を見せた映画版(ジョナサン・グレイザー監督)の存在感が大きく、隠喩に満ちたその内容の「解題」を求める意図で本書を手にする人が多いと予測され、その場合、キャラ構築や舞台設定など多岐にわたる差異により、読者が面食らうこと必至だからだ。 ありていにいえば『関心領域』とは、ナチス第三帝国に関する、ある「共通命題」を突く文芸作品と映像作品のユニット的名称である。双方、観念的な因果関

ここはすべての夜明けまえ 作者:間宮 改衣早川書房Amazonこの『ここはすべての夜明けまえ』は、第11回ハヤカワSFコンテストの特別賞を受賞したSF中篇(もしくは短めの長篇といえるかぐらい)だ。特別賞は長さが短めだったり一点突破の魅力があったりで受賞する作品が多いが(たとえば過去事例で代表的なのといえば草野原々の「最後にして最初のアイドル」など)、本作も「刺さる人にはこれ以上なく深く刺さる」、2100年代を舞台にした、問題まみれの家族の物語だ。 とある理由からひらがなだらけの文章で物語が始まるので面食らうのだが、設定開示の順番は心地よく、すぐに作中世界へと入り込んでいくことができる。単行本になる前からゲラが配られたりSFマガジンに全文掲載されたりしていたのでエモいエモいと評判だけは聞いていたのだけど、実際に読んでみたらたしかにこれはエモーショナルな物語だ。しかし、ただ感動させよう、感動さ

ル=グウィン公式ページで発表になった、ご本人がジブリアニメ版をどう思っているのかに関するレポートです。原文はこちら。英語で読める人は原文で読んでください。英語わかんないと自動翻訳に頼る人も多いけど、自動翻訳ってすごいことになるからねぇ。(^^;;) それならこっちの方がいいかと思って、参考までに鷲の訳を置いときます。 モニタで読むとき見やすいように、原文より段落分けは多くしてあります。 誤訳あったら教えてね。 スタジオジブリ制作、宮崎吾朗監督による、アースシーの映画「ゲド戦記」を観て。映画のことで問い合わせてくれた日本にいるファンの方々のために、そして映画に関心をお持ちの世界中のファンの方々のために。 前置きとして 自分の作品が映画化される場合、ほとんどの作家は、何も口を挟むことは出来ません。一旦契約にサインしたら、原作者というものは存在しないと同じなのです。「監修」などという肩書きは
承前。goldhead.hatenablog.com 読みたい小説がある。とても古い小説で、日本語訳が手に入らない。元はノルウェー語だが、とりあえずプロジェクト・グーテンベルクの英語版は見つけた。おれは英語が読めない。翻訳エンジンを使うしかない。比べてみたらAIに翻訳させると質がいい。しかし、いちいちコピペできる分量ではない。なにか方法があるかとChatGPTに聞いてみた。Pythonを使えばできるという。なので、やってみた。とりあえず、できそうな感じがした……というのが上の記事まで。 そして、今日だ。あ、この一連の記事はリアルタイムでお伝えしています。昨日の記事は昼休みに書いた。で、今日は朝から体調を崩して、午後遅くに出社。仕事を終えたあとPythonをいじりはじめる。昨日は「短い英文テキストファイルを読み込ませて、ChatGPTに翻訳させて、日本語テキストファイルを出力させる」という

36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(4…

今のGPT4は実践投入レベルの使い方もあれば、そうでない使い方もあると思っている。今回のポストでは、私がやった執筆支援の実験を8つほど紹介し、物書き目線から3段階評価した。○は作品制作にすでに実戦投入している利用方法。△は自分が実作に活用はしていないものの、ユーザビリティが良くなれば使いたいと思えるもの。×は現状だと使い所がない、ありがたみがないなと思ったものである。 1)AI読者モニター:書いた小説を読んでもらって感想や質問をGPTに自動生成させる → △使って意味ある場面はありそうPython-docxを利用して該当の位置にGPTの感想や質問を自動挿入 できた〜!ボタン1つ押せばChatGPTにWordで小説を読ませて「ここまで読んだときにこういう感想を持ったよ」とか「こういう疑問を持ったよ」みたいなことをコメントさせられるようになった。仮想モニタ読者の反応をヒントに執筆支援ができんじ

月刊誌「クラークスワールド・マガジン」のホームページ。ヒューゴー賞など有名なSF文学賞の受賞者を多数、輩出している 米国のSF・ファンタジー月刊誌が投稿の受け付けを一時、停止した。原因は人工知能(AI)が書いた小説の激増だ。編集長は、こう警告する。「誰も勝つことができないモグラたたきのゲームが始まってしまった」【國枝すみれ】 「世界中の出版社に注意喚起したい」 月刊誌「クラークスワールド・マガジン」は2006年創刊。一般投稿から選ばれた優れたSF短編作品などを掲載する。この中からヒューゴー賞など有名なSF文学賞受賞者を何人も輩出してきた。 編集長で発行人のニール・クラーク氏(56)が「世界中の出版社に注意喚起したい」と、米国からオンライン取材に応じてくれた。開口一番、こう切り出した。 「言わば迷惑(スパム)投稿です。迷惑メールに対応するように、スパムフィルターを作るしかないと考えています」

なんか論文くさい書き出しになってしまいましたが。 きっかけは先日のツイートです。 興味深いツイートだなぁ。 同じようなことをずっと感じてる。日本人作家の中国小説って良くも悪くも大陸本場のテイストが脱臭されてる。和製麻婆豆腐を食べてる感じ。長くなるから今度ブログで書きたい。 https://t.co/k7OyyyycQh — 春秋梅菊 (@chunqiumeiju)2023年2月14日 ※追記 記事のきっかけになったツイートなのですが、私が引用元様のツイートの意図とは違う方向まで話を拡大してしまい、そのことでご指摘を受けたので取下げさせていただきました(引用元様には直接謝罪のうえ、ツイートの取消しでご了承いただいてます)。私のツイート趣旨は、この下の文章の通りなので、そのまま読み進めていただければ問題無いかと思われます。 長く中国大陸のコンテンツ(ドラマ・映画・小説)に触れていると、日本人

今日はクリスマスイブだけど、あんた達はクリスマスを誰と過ごすつもり? ……って聞くまでもなく、ほとんどはクリぼっちじゃないかしら。 オフ会してるラノベ読みも中にはいるみたいだけど。 暗黒ラノベ読み+光のラノベ読みリュウさんとオフ会してます!ボドゲしてケーキ食ってます🍰 pic.twitter.com/VLa3hhvIXu — 夏鎖@C101土曜東ペ11a (@natusa_meu)2022年12月24日 「一度でいいからクリスマスにエッチしたい!」と思ってるあんた達に朗報! エッチの相手を紹介することはできないけど、シコるのにおすすめなラノベを五作品紹介してあげるわ! 五年ぶりの性夜ネタよ! ranobeprincess.hatenablog.com 前回は「美少女とエッチしたい!」って観点の記事だったけど、今回は「美少女になってエッチしたい!」って観点から五作選んだわ! ラノベヒロイ

1964年、広島県生まれ。青山学院大学卒。少女小説家"津原やすみ"としての活動を経て、97年に現名義『妖都』を発表。幻想小説家として本格的に活動を始める。2006年に刊行された『ブラバン』はベストセラーに。また09年『バレエ・メカニック』、11年『11 eleven』(第2回Twitter文学賞国内部門1位)は、各種ランキングを席巻した。14年に短篇「五色の舟」(『11eleven』収録)が「SFマガジン」の"オールタイム・ベストSF" 国内短篇部門1位に選出。同作は近藤ようこ氏により漫画化され、同年、第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞する。〈ルピナス探偵団〉〈幽明志怪〉シリーズほか、『少年トレチア』『綺譚集』『ブラバン』『ヒッキーヒッキーシェイク』『歌うエスカルゴ』など著作多数。
ある中国の小説家がクラウドで使っていたワープロソフトに原稿をロックされたと訴えている。原稿は未公開の状態だったとされ、中国のインターネットユーザーは国家の検閲がどこまで及ぶのか、疑心暗鬼になっている。 by Zeyi Yang2022.07.20 444 4 あなたが自宅のパソコンで小説を執筆しているとしよう。すでにおよそ100万語を書き上げ、完成は間近だ。ところが突然、クラウドで使っていたワープロソフトから、「この原稿には違法な情報が含まれているため開くことはできません」と通知された。これまで書き上げてきた言葉が、一瞬のうちに失われてしまった。 この話は今年6月、ミツ(Mitu)というペンネームで執筆している中国の小説家が実際に経験したことだ。ミツは「WPSオフィス」を使って小説を書いていた。WPSは中国のソフト会社キングソフト(金山弁公軟件)が提供しているクラウドベースのワープロソフト

趣味の延長くらいで文章を書いている。小説とも呼べないくらいの物語。 ちょっとした賞に入ったことはあるが出版とか仕事にするとかいったレベルじゃないのは自分でわかってる。 それでも最近、物語のヒントになればといろんな作品を読むようになった。 いま全話無料になってるよと勧められて読んだのが「ゴールデンカムイ」。 読んでみて絶望している。 まずどうやってもこんな作品の設定が普通の人間から出てくるとは思えない。 複雑なストーリーライン、心理描写、(※以下、この作品のここが凄いとかいろいろ書いてみたがその文章自体が陳腐過ぎるように思えてきて消した) これだけのヒット作と、自分のような在野の素人の能力を比べることがそもそも間違ってるのは理解しているが、どうしても書き手目線で物語を追っている。 正確にはまだ読み終わっては居ない(主人公たちが樺太から北海道に戻ったあたり)のだが、読みながらずっと涙が出てくる

大相撲令嬢シリーズ 大相撲令嬢 ~聖女に平手打ちを食らった瞬間相撲部だった前世を思い出した悪役令嬢の私は捨て猫王子にちゃんこを振る舞いたい はぁどすこいどすこい~【書籍発売中】 「この僕、アリアカ王国第一王子ジョナスとフローチェ・ホッベマー侯爵令嬢との婚約は、現時点をもって破棄させていだたく!」 悪役令嬢の汚名を着せられたフローチェは、光の聖女ヤロミーラ・シュチャストナーに平手打ちを食らってしまう。 だが、その瞬間、彼女の脳裏に、大学女子相撲部であった前世の記憶と、相撲魂が蘇った。 ついでに、この世界が息抜きにやっていた乙女ゲーム「光と闇の輪舞曲」である事も思い出した。 王宮でおこなわれた魔法学園卒業パーティーの会場で、光の聖女ヤロミーラが率いるイケメン軍団と、相撲を自在に操るフローチェとの戦いが始まる。 んで、捨て猫王子は地下牢で拾う。 王宮は大変な事になる。 皆様の応援で書籍化する。

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