世界の終わりの最後の殺人 (文春e-book) 作者:スチュアート・タートン文藝春秋Amazonこの『世界の終わりの最後の殺人』は、タイムループ物の特殊設定ミステリー『イヴリン嬢は七回殺される』や17世紀の帆船で起こった怪事件を追う『名探偵と海の悪魔』など、ミステリーという共通事項以外はバラバラのギミック・舞台・テーマで長篇を紡いできたイギリスの作家、スチュアート・タートンの最新邦訳作だ。 テーマとなっているのはタイトルにも入っているように「世界の終わり」。物語の舞台は謎の現象”霧”によって人類の大半が死滅し、最後に残された人々がバリアに守られて暮らすギリシャの島。90年以上に渡り殺人は発生していなかったが、ある時、長老と呼ばれる人々のうちの一人が殺されてしまう──。そしてとある事情からこの人物の死の謎を解かなければ、霧からこの最後の人類の生き残りを格納する島を保護するバリアが失われたまま

精霊を統べる者 (創元海外SF叢書) 作者:P・ジェリ・クラーク東京創元社Amazonこの『精霊を統べる者』は、ネビュラ賞、ローカス賞、イグナイト賞、コンプトン・クルック賞と4冠に輝いた、アメリカの作家P・ジェリ・クラークの第一長篇&サイエンス・ファンタジーだ。物語の時代はまだ人種差別も女性差別も色濃く残る20世紀初頭。魔法と科学が融合した都市カイロを舞台に、伝説の大魔術師を名乗る何者かによって引き起こされた、魔術世界を揺るがす大事件を描き出していく。 僕はもともとこうした「科学と魔法が融合」したような世界観が大好物だから読む前からそうとうに期待していたのだけど、これが高まったハードルをやすやすと超えていくような作品だ。良い点はいくつもあるが、なんといっても舞台をジンが存在することによってヨーロッパ列強と肩を並べるに至ったという架空のエジプトに設定しているのが良い。著者は現在コネチカット大

マシンフッド宣言 上 マシンフッドセンゲン (ハヤカワ文庫SF) 作者:S B ディヴィヤ早川書房Amazonこの『マシンフッド宣言』は、インド生まれのアメリカ人作家S・B・ディヴィヤの第一長篇となる。21世紀の近未来を舞台に、人工知能とロボットに人間の労働の大半が代替されてしまった、人類が陥ることになる過酷な姿を描き出していくテクノロジーSFだ。本作のように、労働が代替されたら人類はハッピーに毎日遊びながら暮らしているんじゃないの? と思うかも知れないが、そんなことはまるでない。本作の世界では人間は人工知能とロボットから仕事を取り戻すために、自分の認知・身体能力を向上させる薬物を摂取しながら労働を行っている。中にはいわゆるサイボーグのように自分の体を機械に置き換え肉体を改造するものもいるが、本作では『そもそも、だれもサイボーグになりたがっていない』として多くの人が積極的に取る手段として

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