2010年、イギリスのプロ自転車ロードレースチーム「チームスカイ」のゼネラルマネージャー兼監督に就任したデイブ・ブレイルスフォード氏は、「イギリス人初のツール・ド・フランス優勝」という難しい任務を与えられました。同氏は、「わずかな改善の積み重ね」と説明する自らの考えを信じ、シンプルなアプローチでこの難題に挑みました。 それは「すべての行動において1%の改善に取り組む」という考え方です。自転車レースに関連するあらゆる分野でわずか1%ずつ改善できれば、小さな改善が積み重なって、大きな進歩につながるというのです。 ブレイルスフォード氏の下、チームスカイは予想を上回る成果を挙げるのですが、その背景に何があったのか。詳しく見ていきましょうか。自転車チーム、まずは"手洗い"から チームはまず、選手の栄養管理、週ごとのトレーニングプログラム、サドルの人間工学、タイヤの重さなど、わかりやすい所から最適化

古典の翻訳を読んでさっぱり理解できなかったという思い出のある人は少なくないと思う。理解できなかったのは勉強が不足しているからだと反省したり、頭が悪いせいではないかと親を恨んだり、いずれにせよ苦い思い出が残っているのではないだろうか。 自慢ではないが(自慢するようなことではないが)、そういう思い出ならたぶん、たいていの人に負けないほどあるので、なぜ理解できなかったのかを考えてみたいと思う。それには、具体例をみてみるのが一番だろう。古典の翻訳も時とともに進歩しているはずなので、比較的最近、21世紀になってから出版された古典翻訳を例に取り上げる。出版社は岩波書店だし、岩波文庫に入っているので、権威ある翻訳のはずである。アダム・スミス著、水田洋監訳・杉山忠平訳『国富論1 』の第1編第1章第1段落をみてみよう(なお、この訳は2000年5月に第1刷が発行された後、2002年の第2刷でかなり改訂されてい

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