もっと早くこんな本に出会えていれば、というのが第一印象である。 近代美学入門 (ちくま新書) 作者:井奥陽子筑摩書房Amazon 芸術、芸術家、美、崇高といった近代美学の主要テーマが平易な言葉で簡潔にまとめられている。 諸概念の変遷から現代的意味まで、まんべんなく、過不足なく、初学者向けに述べられており、おそらく高校生以上であれば十分に内容を理解できそうである。 とりわけ印象的な箇所は、古典的な美の理論の解説部分である。 著者のまとめ方は「美=プロポーション=シンメトリー=ハーモニー=オーダー」という実に明快なものである。非常にわかりやすく、それでいて古代ギリシャから19世紀に至る美の伝統的概念を明瞭に言い当てているように思う。本書は新書でありながらも、巻末の読書案内に「新書」というジャンルを設けており、これこそまさに、本書こそが入門書であることを裏付けているようにも思えた。美やアートに

DIG 現代新書クラシックス(7)群像×現代新書のコラボ企画「DIG 現代新書クラシックス」の第7弾(『群像』7月号掲載)は、甲南大学教授の田野大輔氏による、石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(2015年刊)の紹介です。 「ナチスは良いこともした」と主張したがる人たちの心理とは? 不正確で一面的な情報に惑わされないために、入門書が果たす役割を示します。 ナチスは良いこともした?ナチスが「絶対悪」であり、未曾有の災禍の元凶であることは、今日では常識となっている。だがインターネット上ではむしろ、「ナチスは良いこともした」と声高に主張したがる人が増えている。アメリカのトランプ現象やヨーロッパの排外主義運動といった近年の国際情勢を反映してか、わが国でもナチズムへの社会的関心は高まっているが、一般に出回っている情報には著しく不正確なもの、とうに否定された俗説も少なくない。 実は先日、筆者にそのこと

7月1 飯田一史『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』(平凡社新書) 8点 カテゴリ:社会8点 「本屋が減ってきている」、「書籍の流通が危機に瀕している」といったことをさんざん聞くようになった今日このごろですが、なぜそうなったのかを、出版流通の構造と歴史から読み解いた本になります。 マンガ喫茶、ブックオフ、Amazon、公共図書館の複本購入、スマホなど、書店経営の悪化の犯人探しはずっと行われてきましたが、本書を読むとそもそも書店の経営が苦しいのは昔からで、書店経営が構造的な問題を抱え、その構造の改革に失敗し続けてきたことがわかります。 再販制のもとでの書店のマージンの低さ、取次が勝手に本を送ってくる見計らい配本、客注に対する反応の遅さなど、書店経営の問題点についてはいろいろと言われてきましたが、本書の強みはそれが総合的に分析されている点です。 また、コンビニやAmazonだけでなく、鉄道
なぜ僕は「炎上」を恐れないのか 年500万円稼ぐプロブロガーの仕事術 (光文社新書) 作者: イケダハヤト出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/02/18メディア: 新書この商品を含むブログ (6件) を見る 内容(「BOOK」データベースより) 人に嫌われようと、「正しいものは正しい」と伝える。いいたいことは我慢しない。衝突、炎上、なんでも来い!年間500万円を売り上げるプロブロガーが、仕事と人生を熱く語った。小学生時代、テレビゲームの分野で負けなくなった。中学校時代、個人ニュースサイトで月間50万PVを集めた。高校時代、吹奏楽部で自信を取り戻した。大学受験時、偏差値が55から早稲田大学政治経済学部に現役合格。―さまざまな「炎上」をきっかけに、前向きな人生を歩み続ける著者の、ストレスフリーな生き方指南。 うーん、これはある意味、すごい新書です。 「現代の奇書」と読んでもいいかもし

ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡 (光文社新書) 作者: 宮下規久朗出版社/メーカー: 光文社発売日: 2010/04/16メディア: 新書 クリック: 23回この商品を含むブログ (12件) を見るKindle版もあります。僕はKindle版で読みました。 ウォーホルの芸術?20世紀を映した鏡? (光文社新書) 作者: 宮下規久朗出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/01/17メディア:Kindle版この商品を含むブログ (2件) を見る 内容(「BOOK」データベースより) 20世紀を代表する美術家であるアンディ・ウォーホル(1928‐1987)は、生前における多方面にわたる活躍やメディアへの頻繁な露出から、これまで様々な流言飛語に曇らされ、毀誉褒貶に包まれていた。しかし、1989年にニューヨーク近代美術館で大規模な個展が開催され、94年にはアメリカにある個人美術館とし

私たちが普段当たり前のように使っている言葉。「美しさ」や「正しさ」を日常で気にすることはあるかも知れないが、もっと根本的な言葉がどのように理解されるかまで考えることは少ない。言葉を科学的に研究する言語学を専門にし、5月に『日本語は「空気」が決める 社会言語学入門』(光文社新書)を上梓した一橋大学国際教育センター・言語社会研究科准教授の石黒圭氏に、「美しさ」や「正しさ」に代わる、日本語の新たな捉え方について聞いた。 ――日本語の「正しさ」について書かれた本が書店には並んでいます。そうした本への懸念として本書を書かれたのでしょうか? 石黒圭氏(以下石黒氏):おっしゃるとおりです。日本語を「正しさ」の次元からではなく、「ふさわしさ」の次元から考えてほしいという思いを込めて、本書を書きました。 「美しい」「正しい」という二つの形容詞が、昨今、売れる日本語本のキーワードになっています。しかし、言葉を

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