ジャガイモの起源が明らかになりました。 国際的な研究チームによって行われた研究によって、約800万〜900万年前に南米で野生のトマト属植物とジャガイモに似ていてもイモ(塊茎)を作らない植物(Etuberosum〈エツベロスム〉属)が自然交配し、現在のジャガイモの祖先が生まれたことが示されました。 異なる植物同士の交雑(種間交雑)によって、両親からそれぞれ異なる遺伝子が染色体レベルでモザイク状に混ざり合い、地下に栄養を蓄える塊茎という新たな「倉庫」を備えたジャガイモが誕生したわけです。 研究チームは、今回の解析によってジャガイモ属がトマト属とEtuberosum属の古代交雑から生まれたことが明確になったとまとめています。 研究内容の詳細は2025年7月31日に『Cell』にて発表されました。

科学誌のNatureが「日本の研究はもはやワールドクラスではない」と言及し、なぜ日本の研究の質が低下しているのかを、データを交えて解説しています。Japanese research is no longer world class — here’s why https://www.nature.com/articles/d41586-023-03290-12023年10月25日に日本の文部科学省が公開した報告書によると、日本は世界最大級の研究コミュニティを有しているにもかかわらず、ワールドクラスの研究に対する日本の貢献度は低下し続けているそうです。 文部科学省に置かれている研究機関のひとつである科学技術・学術政策研究所の科学技術予測・政策基盤調査研究センター長である伊神正貫氏は、「現在の日本の研究環境は理想とはほど遠く、持続不可能です。研究環境を整えなければいけません」と述べ、日本が世

www.u-tokyo.ac.jp ワタシは柳瀬博一さんの Facebook 投稿で知ったのだが、あまり話題になってないのでここでも取り上げておきたい。 いや、だって、東京大学学位記授与式の総長告辞でドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」の歌詞が引用されてるんだもの。 「I.G.Y.」とはなんぞや? これは総長告辞を引用させてもらおう。 科学技術の発展に対する疑問をよく表した曲として、私の大好きなアーティストであるドナルド・フェイゲンが1982年に発表したI.G.Y.という曲があります。I.G.Y.とは、先ほどの国際地球観測年の英語名International Geophysical Yearの頭文字を取ったものです。この曲は、科学技術が高度に発展した一見便利に思われる未来社会を、皮肉たっぷりに歌っています。人々は、海底トンネルでニューヨークからパリまで90分で移動し、簡単に宇宙を旅行し、

久しぶりのブログ更新です。今回は、「炭水化物を摂取すると死亡率があがる」「脂肪はたくさん摂っても死亡率に影響がない」ことを示したとして2017年世界中で話題になった以下の論文について、論文自体の問題点やメディアで取り上げられている内容の誤りについてまとめます。 Dehghan, Mahshid, et al. "Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study." The Lancet 390.10107 (2017): 2050-2062. http://www.thelancet.com/journals/lancet/a

東北大学大学院医学系研究科の赤池孝章(あかいけ たかあき)教授らのグループは、ヒトを含む哺乳類が硫黄代謝物を利用した新規なエネルギー産生系(硫黄呼吸と命名)を持つことを、世界で初めて明らかにしました。本研究は、哺乳類が酸素の代わりに硫黄代謝物を使用してエネルギー産生していることを明らかにした科学史に残る画期的な発見です。今回の新しい「硫黄呼吸」メカニズムの発見は、老化防止・長寿対策、肺気腫や心不全などの慢性難治性呼吸器・心疾患、がんの診断・予防・治療薬の開発に繋がることが期待されます。本研究成果は、2017年10月27日10時(英国時間、日本時間10月27日18時)に、英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。 ポイント ヒトを含む哺乳類は酸素呼吸によってエネルギーのほとんどを産生しており、生命活動を維持するためには酸素が必須であると考えられていた。 この
最初の花の3Dモデル。3枚一組の花被片、雄しべ、雌しべで花が構成されているのが分かる。仏パリ第11大学提供(2017年7月31日提供)。(c)AFP/UNIVERSITE PARIS-SUD / HERVE SAUQUET & JURG SCHONENBERGER 【8月2日 AFP】植物の進化の道筋の中で最初に登場した花は、恐竜時代に咲いていた、同心円状に並ぶ花弁に似た器官を持つ両性花だったとの研究結果が発表された。 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された研究論文によると、この花は中央に雄の生殖器官と雌の生殖器官の両方があり、その周囲に「花被片」と呼ばれる花弁に似た器官が複数の層を成して「輪生」していた。1つの層には花被片が3枚一組でついていたという。 現存する植物792種から集められた史上最大規模の花の形質データベースに基づく

オオカミの亜種メキシコオオカミ。メキシコ・メキシコ市の動物園で(2017年7月6日撮影、資料写真)。(c)AFP/PEDRO PARDO 【7月19日 AFP】小型犬のチワワから大型犬のセントバーナードまで、今日の飼い犬はその起源を単一のオオカミの群れにまでさかのぼることができるとの研究結果が18日、発表された。人とこのオオカミの群れとの遭遇は、最大4万年前にさかのぼるとしている。 今回の結果をめぐっては、「人間の最良の友」であるイヌがその祖先のオオカミからいつ、どこで最初に枝分かれしたかをめぐる科学的論争を再燃させるとみられている。 オオカミからイヌの分岐が起きた時期と場所については、学派ごとにそれぞれ異なっており、約1万5000年前に欧州でと主張するものや、約1万2500年前に中央アジアまたは中国でと主張するものまで様々だ。 他方で、2016年に米科学誌サイエンス(Science)に掲

地上からの観測としては初めて、土星の衛星「エンケラドス」の周囲でメタノールが検出され、エンケラドスから噴出して宇宙空間へ飛び出した物質が複雑な化学変化を起こしている可能性が示された。 【2017年7月7日 RAS】 土星の衛星「エンケラドス」の南極には大きなひび割れが存在し、そこから蒸気や氷の結晶が噴出している。蒸気や氷の供給源は地下に存在する海だと考えられている。また、噴出した氷の粒や塵によって、土星の環のうち外から2番目にあるE環が形成されている。 土星のE環とエンケラドス(提供:NASA / JPL-Caltech / Space Science Institute) 土星探査機「カッシーニ」はエンケラドスの噴出の中を飛行し、メタノールをはじめとする有機分子を検出してきた。そして、最近の研究から、地球の海とエンケラドスの噴出には同程度の量のメタノールが存在することが明らかになった。

四肢が生えたオタマジャクシ。コロンビア・カリにある動物園で(2015年4月21日撮影、資料写真)。(c)AFP/LUIS ROBAYO 【7月5日 AFP】ハチの個体数減少との関連が指摘され、またガンの原因とも疑われている除草剤が、オタマジャクシにとっては捕食者への有害性を高めているとする研究論文が5日、発表された。 英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された研究論文によると、「ラウンドアップ(Roundup)」の商品名で知られる除草剤に含まれるグリホサートにさらされた一般的なヒキガエルのオタマジャクシは、動植物の一部に存在する物質「ブファジエノライド」の含有量が高まっていることが分かった。ブファジエノライドには薬理作用もある。 ブファジエノライドの味は悪く、そのため、ヒキガエルの捕食者を遠ざけることにつながる。しか

世に多くある「境界」の中でも、人にとって最も冒しがたく明確な境界というのは、「生」と「死」の境界であろう。「生きている」ことと「死んでいる」こと、あるいは「生物」と「無生物」。その間には相互の往来が不能な絶対的な境界があると、思われがちである。しかし、結論から言えば「生物」と「無生物」の境界は、一般に思われているよりはるかに曖昧なものだ。その曖昧さを生み出している存在の一つが、本稿の主役、ウイルスである。 昨年『ウイルスは生きている』(講談社現代新書)というタイトルの本を上梓させて頂いたが、このタイトルに対する反応には、正反対の二つのものがあった。一つは「ウイルスが生きてるって、当たり前じゃないの?」というものであり、もう一つは「こりゃまた、ずいぶんと挑戦的なタイトルですね」というものである。典型的には、前者は一般の読者から、後者は生物学に知識がある人からの反応である。 「ウイルスが生きて

繁殖期を迎えたカエル。独ライプツィヒの池で(2014年4月1日撮影、資料写真)。(c)AFP/DPA / SEBASTIAN WILLNOW 【7月4日 AFP】数千万年前に恐竜を絶滅させた巨大小惑星の衝突が、地球上にカエルが集団繁殖地(コロニー)を形成するための余地を作り出したとする研究論文が3日、発表された。カエルがどのようにして世界で最も多様な脊椎動物の一つとなったかを明らかにする研究結果だという。 米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によると、10種のカエルが約6600万年前の大量絶滅を生き延びたと考えられるという。この大量絶滅では地球上の生命の約4分の3が消滅したとされている。 大量絶滅を生き延びた10種のうち、3つの主要種のカエルだけが多様化を進め、地球上で生息地を拡大し続けた。存在が知られているカエルは現在、約6700種に上る。現生種のカエルの88%では、これらの

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、土星の北極にある巨大な六角形の最新カラー映像を公開した。土星探査機カッシーニが今年4月25日に撮影したもので、2013年6月撮影の映像と比べると、六角形の色が青から黄色へと大きく変化していることがわかる。 カッシーニは先月、土星の環をくぐりぬけ、土星本体への接近探査を行うミッションを成功させたが、今回の映像はこのミッションに入る直前に撮影されたもの。撮影時の土星中心までの距離は72万5000kmから23万kmで、高度を変えながらの連続撮影を行った。撮影にはカッシーニの広角カメラを使用。赤、緑、青の波長フィルターによって天然色の映像が作り出されている。 土星の六角形は、一辺の長さが約1万3800kmで、直径が地球の2倍以上という巨大なもの。2013年の映像では六角形の領域全体が青く見えていたが、今回の映像では、ほとんどの部分が黄色っぽいスモッグに覆われており

ドイツ・ベルリンで開かれたフルーツ見本市で展示されたフルーツ(2017年2月8日撮影、資料写真)。(c)AFP/Tobias SCHWARZ 【3月28日 AFP】現在最も手軽に食べられるおやつ、果物のおかげで、人間は大きくて強力な脳を発達させることができた可能性が高いとの研究論文が27日、発表された。 果物を食べることが、植物の葉などの最も基本的な食料からの重要な進歩となり、より大型の脳を成長させるのに必要なエネルギーを提供したと、研究チームは主張している。 論文の責任著者で、米ニューヨーク大学(New York University)の研究者のアレックス・デカーシエン(Alex Decasien)氏は、「このようにして人間は、これほど非常に巨大な脳を手に入れ」、「食物の質を大幅に拡大して今の食事につながっている」と語った。 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(N

1300年間も信じられてきた「天動説」は、コペルニクスの「地動説」によって克服されて、人類の科学技術が大きく進歩したように、「世界を変えた」と評価できる歴史的書物は人類の英知そのものです。そんな歴史的な科学技術書をほとんど初版で一挙に100冊以上も展示・公開する「世界を変えた書物」展が大阪で初開催されたので、歴史の一ページの数々を目に焼き付けてきました。 [世界を変えた書物]展 人類の知性を辿る旅|金沢工業大学 http://www.kanazawa-it.ac.jp/shomotu/ グランフロント大阪の北館に到着。 地下1階のナレッジキャピタルイベントラボで「世界を変えた書物」展が開催されています。世界を変えた書物展は、金沢工業大学が所蔵する科学技術書の中でも世界を変える科学上の重大発見、新技術挑戦の歴史を刻んだ書物100冊以上が無料で一般公開されています。 入り口はこんな感じ。「本の

米ネバダ(Nevada)州ラスベガス(Las Vegas)で行われた演奏会「スター・ウォーズ:イン・コンサート(Star Wars: In Concert)」で、スクリーンに映し出されたハリソン・フォード(Harrison Ford)演じるハン・ソロ(Han Solo)の映像(2010年5月29日撮影、資料写真)。(c)AFP/Getty Images/Ethan Miller 【1月15日 AFP】映画『スター・ウォーズ(Star Wars)』シリーズで、宇宙船ミレニアム・ファルコン(Millennium Falcon)号が超空間に突入するとき、星が何本もの筋に変化する、目がくらむようなあのシーンを覚えているだろうか。 悲しいことに、英国の学生チームが行った計算によれば、SF映画に登場する他の多くの物事と同様、この光景も実際には起こらないそうだ。 英レスター大学(University o

名古屋大学(名大)は9月15日、富山県八尾地域の約2000万年前の地層から採取されたツノガイの化石を解析した結果、ツノガイは死後、数週間から数カ月以内に、周囲に球状に炭酸カルシウムが濃集・沈殿し、良好な保存状態を維持したまま、化石として保持される形成メカニズムを解明することに成功したと発表した。 同成果は、名古屋大学博物館の吉田英一 教授、同大大学院環境学研究科の山本鋼志 教授、氏原温 准教授、城野信一 准教授、丸山一平 准教授、淺原良浩 助教、岐阜大学教育学部の勝田長貴 准教授、名古屋市科学館の西本昌司 主任学芸員らによるもの。詳細は国際学術誌「ScientificReports」(電子版)に掲載された。 太古の生物が化石になるには、長い年月が必要と考えられてきた。化石の中でも、「ノジュール」と呼ばれる球状炭酸カルシウム(CaCO3)の球状塊(コンクリ―ション)からは、保存良好な化石が

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