安倍晋三首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の論点整理が公表され、天皇陛下の退位に向けた動きが前進した。だが、今の陛下に限り退位を認めるとの方向性が強まっていることに、元側近や学友から「陛下の真意が取り残されているようにみえる」との声が上がっている。【高島博之、山田奈緒】 陛下を身近で支える侍従や侍従次長などを1995~2012年に務めた佐藤正宏さん(75)は、退位を認める流れについて「象徴としての活動を全身全霊でなさることができる状態で、途切れることなく次の世代につなげられる」と安堵(あんど)する。一方で、論点整理が一代限りの退位を実現する方向に傾いている点は「必ずしも議論が万全ではないように思う」と指摘する。「陛下は積極的に人々と言葉を交わし、心を通わせることを大切にされ、象徴天皇の在り方をそこに求めてこられた。いまの議論は、象徴天皇の在り方といった本質的な
◇歴史の専門家ら6人を招く 天皇陛下の生前退位に関する安倍晋三首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長・今井敬経団連名誉会長)は14日、首相官邸で第4回会合を開いた。歴史の専門家ら6人を招き2回目のヒアリングを実施。ジャーナリストの桜井よしこ氏ら保守派論客は退位に明確に反対した。 保守派の渡部昇一上智大名誉教授は、皇室の最も大事な役割を祭祀(さいし)とし、国事行為などは皇室典範に規定がある「摂政」による代行が望ましいとの考えを示し、退位に反対した。月刊誌の寄稿などで退位に柔軟な姿勢を見せていた桜井氏もこの日は明確に反対し「陛下への配慮は重要だが、国家の在り方と分ける必要がある」と主張した。 笠原英彦慶応大教授は「二重権威」が生じる恐れなどから反対を表明。今谷明帝京大特任教授は「与野党の意見が一致するまで見送りが相当」などとし、現状では慎重な姿勢を示した。

民進党は4日、天皇陛下の生前退位を実現するための法整備について議論する皇位検討委員会の設置を決めた。野田佳彦幹事長は朝日新聞のインタビューで、政府が検討する特例法ではなく、皇室典範の改正案を党独自にまとめ、来年の通常国会への提出を検討する考えを明らかにした。 政府は皇室典範を改正しなくても、特例法を制定すれば生前退位を認めることができるとの見解を示した。インタビューで野田氏は「急ぐという意味ではわかるが、生前退位に絡んで論点はいろいろと複雑に絡まってくる。皇族が減少していくことも、実はご心労の一つだと思う」と指摘。「典範改正も視野に入れた議論もあってしかるべきだ」と述べ、特例法ではなく、首相時代に検討した「女性宮家」創設などの論点を含めた皇室典範改正案をまとめる考えを示した。 党の検討委は野田氏の直轄で、委員長には野田内閣の官房副長官として天皇陛下の公務負担や皇族減少の対応についての論点整

皇室典範には退位の規定がないため、生前退位が実現するためには、皇室典範改正や特別立法などが必要となる。政府はすでに天皇陛下の意向を尊重し、必要な法整備についての検討を首相官邸で始めている。政治問題化しないよう静かな環境で議論を進め、早ければ来年の通常国会で必要な改正を進めたい考えだ。 首相官邸では、警察庁出身で事務方トップの杉田和博官房副長官の下に極秘チームを設け、典範改正に関する検討を進めている。官邸内でも何を検討しているかについては極秘とされており、政府高官でも極めて限られた人数しか内容を知らなかった。政府は、参院選後のいずれかのタイミングで宮内庁側が退位に関して何らかの表明をした後、検討を具体化する方針だった。 また、長期的な皇室のあり方に関する議論が必要となるため、政府内には「政府だけで決める話ではない」との意見がある。有識者会議を設置して、幅広い議論をすることも検討している。 こ

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